関東地方の夏は、多くの地域では決して涼しいことはなく、むしろしっかり「暑い」場所が目立ちますが、地域によって傾向にある程度の差があることも確かです。
夏の暑さを関東の都庁・県庁所在地で見た場合、その「暑さ」の程度について解釈・把握が難しい都市としては「水戸市」が挙げられます。
水戸市は数字上は関東各地の中では気温が明らかに低い地域である一方、実際の生活上の視点からすると、特別に涼しい訳ではない。という意見も見られるなど、「暑い」のか「涼しい」のかよく分からない環境とも言えます。
こちらでは、水戸市は「暑い」のか?「涼しい」のか?というテーマについて、具体的な気象データなどを見ながら考えていきたいと思います。
水戸市の夏の気温データ
平均気温 | 最高気温平均 | 最低気温平均 | 真夏日日数 | 熱帯夜日数 | 猛暑日日数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
7月 | 24.2 | 28.5 | 21.0 | 12.4 | 1.2 | 1.0 |
8月 | 25.6 | 30.0 | 22.2 | 16.8 | 2.5 | 1.8 |
真夏日=最高気温30℃以上
熱帯夜=最低気温25℃以上
猛暑日=最高気温35℃以上
水戸市の夏について、水戸地方気象台で観測された気温の基本的なデータを見ると、上記のような形となります。
この数字を見て、どう判断するかは人によって違いがあるかもしれませんが、7~8月には最高気温30度以上の「真夏日」も比較的多く見られますので、極端に高い気温が特徴の地域ではないものの、ある程度の暑さにはなることがある。という状況はなんとなく把握できるデータとなっているように思われます。
「涼しい」は首都圏・関東内陸の視点から
水戸 | つくば | 東京 | 八王子 | 横浜 | 千葉 | さいたま | 熊谷 | 秩父 | 前橋 | 宇都宮 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年間真夏日日数 | 38.0 | 43.6 | 52.1 | 53.8 | 48.8 | 49.1 | 57.3 | 62.6 | 52.1 | 58.2 | 49.6 |
年間熱帯夜日数 | 3.9 | 4.1 | 17.8 | 4.3 | 24.6 | 26.5 | 10.8 | 12.1 | 0.4 | 9.3 | 4.7 |
年間猛暑日日数 | 3.1 | 2.8 | 4.8 | 10.3 | 2.0 | 2.2 | 11.8 | 18.1 | 10.2 | 13.5 | 5.9 |
水戸市の「暑さ」を、関東地方の主要都市と比べると、上記のような形となります。
水戸市は最高気温30度以上の「真夏日」日数は少なく、最も多いさいたま県内の地域と比べると3分の2程度に留まっています。
また、最低気温25度以上の「熱帯夜」日数も東京周辺と比べ大幅に少なく、最高気温35度以上の「猛暑日」日数も関東内陸と比べ大幅に少ない傾向が見られます。
全ての項目で「最も少ない」訳ではないものの、平均的に見た場合「水戸の暑さ」が抑えられている傾向は明らかで、「水戸=涼しい」というイメージが一部であることを裏付けるものとなっています。
但し、裏返して見れば、水戸であっても真夏日になる日は年間平均40日近くもある訳ですので、あくまでも首都圏・関東内陸という「より暑い地域」との比較の中で「涼しさ」が浮き彫りになりやすい。という側面もあります。
水戸の「涼しさ」は「とても暑い」のか、「ほどほどに暑い」のかの違いによるもので、水戸市自体がとてつもなく気温が低いことによるものではないのです。
県内には「もっと涼しい場所」がある
水戸 | 日立 | 北茨城 | 青森 | 札幌 | |
---|---|---|---|---|---|
7月平均気温 | 24.2 | 23.4 | 22.1 | 21.8 | 21.1 |
8月平均気温 | 25.6 | 25.0 | 23.8 | 23.5 | 22.3 |
年間真夏日日数 | 38.0 | 20.0 | 7.9 | 14.7 | 8.6 |
年間熱帯夜日数 | 3.9 | 3.6 | 0.0 | 0.6 | 0.1 |
年間猛暑日日数 | 3.1 | 0.6 | 0.1 | 0.4 | 0.1 |
関東地方の一般的基準からすれば「涼しく」見える水戸市ですが、茨城県内を見ると水戸市よりも更に気温が低い地域も存在します。
気温が低いのは基本的に「太平洋」の沿岸部、特に水戸市よりも北側の地域へ行くほど気温が低い傾向が見られ、日立市では最高気温30度以上の「真夏日」が一気に減るほか、北茨城市まで行くと「札幌・青森」と余り変わらないような夏の気温となり、ここまでくれば正真正銘の「涼しい地域」と呼ぶことが出来るようになります。
北茨城は年間の真夏日(最高気温30度以上)は平均7.9日と札幌よりも少なく、観測史上で「熱帯夜」となったことはわずかに3回(40年以上の観測の中で)と、関東地方では山間部以外の地域としては突出した「涼しさ」を持つ地域で、昼間の気温だけ見れば標高1,000m以上の軽井沢とも大差ない水準です。
こういった地域と比べれば、水戸市は特段涼しい地域とまでは言えず、むしろ「ほどほどに暑い(概ねしのぎやすい)」程度の地域といった方が適切となっています。
ポイント・まとめ
水戸市は「関東地方の主要都市」の中で見た場合、夏の気温が最も低い傾向を持つ地域です。
但し、「真夏日」の日数は平均年40日程度はあり、少なさが目立つのは「熱帯夜」・「猛暑日」の日数となっています。
水戸市の夏の気温はは避暑地的な涼しさではなく、「ほとほどに暑い(比較的しのぎやすい)」環境と捉えるのが無難です。
県内では「日立市」や「北茨城市」などより北側の沿岸部は一層気温が低く涼しい傾向を持つため、「水戸市」の気温の低さが目立つ訳ではありません。