沖縄県における過去の「大雨」を考える

自然科学

こちらでは、沖縄県における「大雨」について「過去の主な事例」を確認する形で、その状況を解説していきます。

大雨が発生する要因は?

沖縄県で大雨が発生する場合、その要因は、「台風」または「前線」の2つの要因(または台風+前線)である場合が大半です。

これは、本州などで大雨になる場合と特段の差はありませんが、沖縄の場合は「台風」に影響を受けた大雨のケースが本州よりも多いと言え、それも「台風に前線が刺激された結果の大雨」というよりは、「台風本体の雨雲が直接長時間掛かり続けることによる大雨」で被害が出るケースが比較的目立ちます。

また、本州一帯の場合は紀伊山地・四国山地・箱根周辺などに代表されるように、「山地(南側の斜面)」に海からの湿った空気がぶつかることで生じる大雨=「地形」に影響された大雨が非常に多い特徴を持ちますが、沖縄の場合は山地が少ないため「地形による影響」は限定的で、基本的に「温暖な海」と「非常に湿った空気」の影響で発生する雨雲により、直接的に大雨がもたらされます。

「迷走台風」による大雨

迷走台風のイメージ図(あくまでもイメージで、実際の台風の動きを表すものではありません)
出典:地理院地図(一部作図)

沖縄県で大雨となる事例を見ると、単なる「台風」ではなく、頻繁ではありませんが「迷走台風」と呼ばれるルートが不規則的な台風(同じような場所を行ったり来たりして停滞する)の影響を受けて大雨となる事例が見られます。

本州付近の場合、余程の状況にならない限り、台風が停滞してしまうようなケースは少ないほか、停滞してしまうと勢力を落としていく傾向にあります。一方で、沖縄の場合は高気圧などの位置関係によって、台風が数日間かけて「行ったり来たり」するケースがまれに見られる上、海水温が高く邪魔をする「陸地」もないため、台風は比較的強い勢力を保ったまま停滞するケースがあります。

台風はそれ自体が激しい雨などをもたらす「本体の雨雲」を持っているため、長時間同じような場所に停滞すれば、長時間同じような場所で大雨・豪雨となることになり、過去の記録的な大雨はこれによって引き起こされている事例が見られます。

本島の中でも大雨のタイミングは異なる

沖縄県は、東西800km以上の範囲に渡って離島が点在する地域であり、その広大なエリアでは「大雨」となるタイミングは当然ながら異なります。

一方で、「沖縄本島」だけを見ると、それほど大きな島ではないため名護でも那覇でも「同じ」ようなタイミングで雨が降ると思われる場合もあるかもしれません。

しかしながら、過去の記録的な大雨の事例を見ると、どちらかと言えば名護・那覇の記録的な大雨は、それぞれ「別のタイミング」で観測されている傾向にあり、50km程度の距離だからといって、同じ状況が見られる訳ではありません。

前線による雨雲の微妙な位置の違い、台風からのわずかな距離の違いなどに応じ、比較的狭い範囲であっても、雨量に大きな違いをもたらす場合があります。

沖縄県における過去の「主な大雨」

こちらでは、一部を除いては「主要な観測地点(気象台など)」で「24時間の降水量」が概ね「500mm前後~」の事例、または月の降水量が極端に多かった事例など「突出した記録」が残る大雨を取り上げています。「大雨」による被害が出たケースであっても、全てを解説している訳ではありませんので、その点はあらかじめご留意下さい。

1959年台風18号による大雨

月最大24時間降水量
那覇473.2(歴代2位)
単位はmm・気象庁のデータによる

1959年10月16日には、沖縄本島の南を通る台風18号及び秋雨前線の影響で、沖縄本島周辺を中心に記録的な大雨となり、那覇では観測史上2番目に多い473.2mmの24時間降水量を観測しました。

当時は現在ほどの土砂災害・水害対策が行われていなかったこともあり、本島一帯では浸水やがけ崩れが生じ、人的な被害も多数発生したため、これ以降砂防工事に対し重点が置かれることになりました。

1969年10月の熱帯低気圧による大雨

月最大24時間降水量日最大1時間降水量
名護466.5(歴代1位)108.5(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

1969年10月7日には、台風12号から変わった熱帯低気圧の影響で、沖縄本島北部を中心に記録的な大雨となりました。名護市では24時間降水量が観測史上1位の466.5mm、1時間の雨量も観測史上1位の108.5mmに達し、1000棟以上の浸水被害が生じました。また、本島北部の河川では氾濫した場所も複数見られました。

1998年10月の長雨

10月の月降水量
与那国島1223.0(歴代2位)
単位はmm・気象庁のデータによる

1998年10月は、停滞する前線や熱帯低気圧、台風の影響で特に与那国島周辺では雨の日が多く、1日の雨量としては極端な数字は見られなかったものの、月の雨量としては1,200mmを越え、雨が比較的多い沖縄地方としても珍しい「雨が多い月」となりました。

1999年台風18号による大雨

月最大24時間降水量
那覇477.0(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

1999年9月22日~23日にかけては、沖縄本島の西をゆっくり進む台風18号の影響で、台風本体の雨雲が直接掛かり続けた沖縄本島一帯で大雨となり、特に那覇では24時間の降水量が観測史上最大の477.0mmを観測する記録的な大雨となりました。

2001年台風16号などによる大雨

月最大24時間降水量9月の月降水量
久米島595.5(歴代1位)1330.5(歴代1位)
那覇歴代10位圏外1095.5(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

2001年9月は、9月6日に西表島の北海上で台風16号が発生した後、7~8日にかけて沖縄本島周辺を通過、更に11~13日にかけて再び久米島・慶良間諸島周辺で停滞するという典型的な「迷走台風」となりました。

台風が長時間留まったため、特にその強い雨雲が直接掛かり続けた久米島周辺で記録的な大雨となり、9月11~13日の3日間で800mmを超える雨量となりました。

また、この月は前線が長期間停滞したことで後半の雨量もかなり多く、久米島のみならず那覇でも過去最も多い月降水量(1095.5mm)となるなど、非常に雨が多い1か月でした。

2008年台風13号による大雨

2008年9月13日の天気図
出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)
月最大24時間降水量日最大1時間降水量9月の月降水量
与那国島769.5(歴代1位)110.0(歴代1位)1252.5(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

2008年の9月12~16日頃にかけては、ゆっくり進む台風13号の影響で、先島諸島周辺では大雨や暴風などが長時間続きました。

雨は与那国島では特に多く、台風本体の発達した雨雲が掛かり続けた9月13日頃には、24時間で769.5mmという全国的に見ても珍しいような極端な大雨となり、観測史上1位の数字を大幅に更新したほか、1時間降水量も110.0mmと観測史上1位、9月の月降水量も1252.5mmと観測史上1位の数字を更新しました。

2011年台風9号による大雨

2011年8月5日の天気図
出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)
月最大24時間降水量
名護457.0(歴代2位)
単位はmm・気象庁のデータによる

2011年8月4~6日にかけては、沖縄本島周辺に接近した台風9号の影響で大雨となり、特に名護では観測史上2位の24時間降水量を観測するなど雨量が非常に多くなりました。

この台風は速度が遅めで、台風の暴風域に沖縄本島地方は24時間以上も入る形となり、結果として台風本体の雨雲も長時間掛かり続け、雨量が多くなる結果をもたらしました。

2017年台風18号による大雨

2017年9月14日の天気図
出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)
月最大24時間降水量
宮古島477.5(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

2017年の台風18号は、観測史上はじめて九州・四国・本州・北海道の4島に上陸した台風として有名な存在ですが、沖縄では先島諸島方面に近づき、台風の中心に近い発達した雨雲が掛かり続けた宮古島地方では記録的な大雨となり、宮古島地方気象台では観測史上最も多い477.5mmの24時間降水量を観測しました。

2020年6月の梅雨前線による大雨

2020年6月8日の天気図
出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)
月最大24時間降水量日最大1時間降水量
石垣島416.0(歴代1位)122.5(歴代1位)
単位はmm・気象庁のデータによる

2020年6月8~9日にかけては、活発な梅雨前線の影響により石垣島地方では記録的な大雨となり、石垣島地方気象台では24時間降水量・1時間降水量ともに観測史上1位の値を更新しました。

なお、雨はかなり局地的で、石垣島でも北側の地域は「大雨」ではあっても特段記録的な数字は観測されず、少しの距離で雨量の差が大きくなりました。