近畿地方の最南端、黒潮の流れる太平洋を一望する風景が魅力の「潮岬」。
潮岬やその周辺地域(紀南地域の沿岸部)は、一般に「南国」のような気候というイメージが広く持たれており、実際に近畿地方の中では極めて温暖な環境にあります。
当ページでは、そのような潮岬周辺の気候について、あえて最も無関係に見える「雪」というテーマから見て行きたいと思います。
データから見る「潮岬の雪」
潮岬には気象庁の観測施設(潮岬特別地域気象観測所)があり、雪に関するデータとしては、現在では雪が降った日数(雪日数)・降った時間の長さのみ観測されています。
この観測施設は、2009年までは「有人」の「潮岬測候所」であった歴史を持ち、1962年~2009年までは「積雪(降雪量)」の観測も一貫して行われてきました。
多い年では10日程度~・少ない年はゼロまたは1日の場合もあり、一定の差がありますが、大阪でも年間平均約14日、神戸では年間平均約27日、京都に至っては年間平均約45日も観測されている状況と比較すると、「極めて少ない」ことが分かります。
また、この「雪日数」は、たとえ「5分間」だけ降る場合でも「1日」としてカウントされますし、完全な雪ではなく「みぞれ」であっても「雪」としてカウントされるという「決まり」があります。
潮岬で雪が降る時は、1日中降るようなことは100%なく比較的短時間しか降らない点、雪ではなくみぞれの場合もある点を考慮すると、「雪が降った」とはっきり「感じられる」日数はより少なく、体感的には「雪がほぼ降らない地域」と言える状況です。
積雪が観測されていた1962年~2009年の間で見た場合、積雪記録は以下の通りです。
積雪日 | 積雪量 |
---|---|
2003年1月5日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
2000年2月9日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1999年2月3日・4日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1995年12月25日・26日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1987年1月13日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1981年1月11日 | 1cm |
1977年3月4日 | 1cm |
1971年1月4日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1968年2月24日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測) |
1965年3月20日 | 0cm(数字に残らない「うっすら」を観測・おそらく雪ではなく「あられ・ひょう」の可能性が高い) |
常時観測のデータが残っていない時代に遡ると、1959年1月に2cm・1949年1月に0cm(っごくうっすら)・1948年1月に5cm・1927年2月に1cmの積雪記録があります。
なお、2009年を最後に観測が行われなくなったため、以降の記録はありませんが、2011年1月16日、2016年1月24日・25日、2021年1月8日にはごくうっすら(数字にはならない水準)・ごくわずかな時間雪化粧した可能性があります。
降る要因は「冬型の気圧配置」
潮岬周辺で雪が降ること少なく、積雪に至っては「ほぼない」くらい極めてまれな現象ですが、その数少ない「雪」をもたらす要因はどういったものなのでしょうか。
近畿地方で雪が降る場合、いわゆる「西高東低」の気圧配置に加え、特に中部~南部では太平洋を通る低気圧(南岸低気圧)の影響を受ける場合があり、和歌山県内では高野山周辺はこの影響を毎年のように受けますが、潮岬周辺ではこの「南岸低気圧」で雪が降る・積もることは実質的にほぼ「100%」ありません。
南岸低気圧は、「寒気」が溜まりやすい地形(山間部・内陸部)では雪になりやすい一方、海沿いでは雨となる場合が大半です。とりわけ大阪湾のような「内側の海」ではなく、潮岬のような太平洋からの気流を直接受ける場所では雪が降るような寒気が入ることはなく、通常「雨」で降り通します。
なお、厳密には「南岸低気圧」で「みぞれ(気象庁の定義としては「雪」に入る)」を観測したことはあり、これまでに2006年1月5日・2014年2月7日などに観測されています。
紀南で雪が降りやすい場所とは?
雪が降ることはかなりまれな潮岬周辺ですが、少し視点を広げて潮岬を含む紀南地域(和歌山県南部)で「雪事情」を見た場合、降りやすい場所はあるのでしょうか。
「紀南」の地域区分を田辺市以南として見た場合、「雪が降りやすい」場所は存在します。
雪が降りやすい地域は、「奈良県に近い」地域・「標高が高い」地域となっており、風景では同じような「山間部」であっても、海に比較的近い山地周辺では、雪はかなり少なくなります。