和歌山市の「雪」をデータから考える【県庁所在地】

自然・気候

近畿地方では「南部」に位置づけられる「和歌山県」の県庁所在地である「和歌山市」。

和歌山市は県内では最も北側に位置するとは言え、一般的にも「温暖」なイメージが広く持たれている地域で、実際に気温は高め・冬もしのぎやすい環境となっています。

当ページでは、そんな和歌山市の気候について、余り関係がなさそうに見える「雪」というテーマから、気象データに基づいてその「雪事情」を見て行きたいと思います。

雪が積もる頻度・量は?

和歌山市で「積雪」となる頻度はかなり少なくなっています。全国的に見ても雪が積もりにくい地域です。

正確に言えば、「全く積もらない年」もあれば、「年2~3回」雪化粧(数字に残らないような「ごくうっすら」も含む)する年もあるという状況で、各年の気候によって傾向は異なります。

雪は積もっても数字にならないうっすら~3cm程度、極めてまれな大雪で5cm前後と、積もる量はかなり少な目です。

なお、積雪というのは、「1cm」などという形で「数字」で表せる場合もありますが、雪が降る時間が短かった場合など、1cmにすら満たない「積雪0cm」の状態でも、うっすらと雪化粧している。という状態が発生する場合があります。

和歌山の場合、この「積雪0cm」で「雪が積もっている」状態になることが、「全積雪」のうち「約半分」程度を占めており、仮に雪化粧してもわずかな時間で解けるようなことが多くなっています。

数字に残らない雪化粧は、2020年までは気象台で「積雪0cm(但し積雪を観測)」という形で記録されていますが、2020年以降は観測が自動化したため、データとして把握することは出来なくなりました。

大雪になったことはある?

和歌山市で、交通に1日を通して大きな支障が発生するような「大雪」になることは、頻度としては少ない状況です。

平成以降にある程度の積雪となったものとして、以下のような事例があります。

観測日積雪量状況
2023年1月24〜25日4cm夜間から積もり、気温がかなり低かったこともあり、翌日の道路交通に大きな影響を及ぼしました。
2017年1月24日3cm朝に積もり、通勤時間帯の道路交通に大きな影響を及ぼしました。
2014年2月14日6cm午前中に一気に積もり、日中の道路交通に大きな影響を及ぼしました。
2014年2月7日4cm夜に積もり、翌日には雨になりすぐに解けました。
2011年2月14日5cm夕方に一気に積もり、帰宅時間帯の道路交通に大きな影響を及ぼしました。
1996年2月17日3cm日中に雪となり、翌日未明にも少し積もったため、2日間積雪が見られました。
1990年1月24日3cm強く降っている時間は1時間程度と短めでしたが、3cmの積雪となりました。

1989年からの約30年少々で、3cm以上の「ある程度」の積雪となったケースは、わずか計7回。特に1996年の3cmから、次の2011年の5cmまでは約15年もの期間が開いており、積雪頻度の少なさは全国的にも際立つ地域で、これより雪が少ない県庁所在地は静岡・宮崎・大阪・神戸・高知・松山など一部に限られます。

10cm以上の積雪は1984年に観測したものが最後で、2023年現在約39年に渡り10cm以上の積雪がない状態が続いています。

和歌山市街地の場合、
・「雪雲」が流れ込んでも比較的短時間で通り過ぎること
・雪が降る際の気温が基本的に「プラス(1℃~0℃程度)」である場合がほとんどであること
・「南岸低気圧」で比較的長時間降水がある場合は、途中でみぞれや雨に変わりやすいこと
この3つの要因があるため、まとまった量の雪は極めて積もりにくい環境です。

雪は長期的に減少傾向

和歌山市街地で積もる雪は、長期的な変化を見ると、昔と比べ減っているように見えます。

和歌山地方気象台の「年間降雪量」の変化(単位はcm)
データは「1962〜2023年」まで

上記のグラフは、和歌山地方気象台で観測された「年間降雪量」の合計です。

こちらはごくうっすら(積雪0cmでも白くなったケース)を除く、積雪が1cm以上観測されたケースの「累積値」であり、グラフからも分かるように、概ね平成時代に入る前は、「元々多くはない」ものの、平均2年に1回以下、時期によっては毎年のように「1cm」以上の積雪が観測されていたことが分かります。

全国的に見ても太平洋側で極端に雪が多かった年として知られる1984年には、和歌山でも累計降雪量が20cmを越えており、一冬に何度も雪が積もった極めて珍しい冬となっています。

一方で、平成に入って以降は突然雪が減り、特に21世紀に入ってからの最初の10年間は、なんと一度も積雪1cm以上の記録がありません。

2011年以降はやや「持ち直し」、1cm以上の積雪が観測される年が見られますが、全体的な平均としては過去のペースには及ばず、明らかに雪が減っていることが分かります。

冬場の平均気温の変化(単位は℃)
データは「1962〜2022年」まで

参考として、降雪記録と同じ期間について、12・1・2月の平均気温の変化を見てみると、積雪が減ったタイミングである平成以降に気温が上がっていることが分かります。

雪の減少は、基本的には一般的に言われる「温暖化」の傾向と概ね一致しており、特に気温が高めで、雪が積もる場合でも「積もるか積もらないか」のギリギリのラインである1℃~0℃程度で雪が降りやすい和歌山では、少しの気温上昇が大幅な「雪」頻度の減少につながりやすい環境です。

一般論としては、今後も温暖化傾向は加速するとされていますので、長期的には和歌山市街地で積もる雪の「頻度・量」は更に減るのではないか。と推定するのが基本的な解釈と言えるでしょう

まとめ

和歌山市街地では「積雪」はかなり「まれ」な現象です。

仮に積雪となった場合も、1cm以上といった数字に残らないような「うっすら」が半数程度、かなり多くても5cm前後が通常で、「積もる量」もかなり少ない地域です。

過去の10cm以上の大雪は1984年が最後で、2023年現在約39年間観測がないため、通常想定するような現象とは言えません。

元々雪が少ない和歌山の降雪量は、時代が進むごとに更に減少傾向にあり、温暖化の影響が色濃く現れています。

雪の少なさは、降る頻度のみならず「降っても時間が短い」・「降る際の気温がプラス」・「途中でみぞれや雨に変わりやすい」といった条件も大きな要因となっています。