観光地が多数ある奈良県は、気候という面から見ると「内陸」というイメージから、夏は暑いというイメージを持つ人もいれば、山地が多いので涼しい避暑地もあるというイメージを持つ人もいます。
当ページでは、奈良の「暑さ」について、真夏の最高気温や平均気温のデータを見ていく事で地域ごとの傾向や特徴、暑さの程度などを考えていきたいと思います。
奈良地方気象台の最高気温ランキング
1位 | 39.3℃(1994年8月8日) |
2位 | 39.2℃(1994年8月7日) |
3位 | 39.2℃(1994年8月6日) |
4位 | 38.4℃(1994年8月5日) |
5位 | 38.1℃(2018年7月19日) |
6位 | 38.1℃(2001年8月1日) |
7位 | 38.0℃(2020年8月16日) |
8位 | 38.0℃(2020年8月10日) |
9位 | 38.0℃(2018年7月18日) |
10位 | 37.9℃(2020年8月21日) |
奈良地方気象台の最高気温上位を見て行くと、気象観測を始めて以来日本で最も暑い8月であった1994年の猛暑の際に観測されたものが上位を独占しています。
この際には8月5日~8日まで4日連続で最高気温が38度を越え、39度以上の気温を唯一観測するなど、極端な酷暑になりました。
一方で、それ以外のデータをみると近年のデータも多くなっています。これは最近暑さが厳しくなっていることもありますが、2017年以降気象台の移転によって観測地点がより市街地に近い場所に移ったことも一つの要因になっている可能性があります。
実際に夏の気温は、後ほど解説するように平均気温として見ても気象台移転後にやや不自然に上がっているようにも見えますが、かつての気象台の場所は自然豊かな高台にありましたので、現在の観測地点のほうがより「実態」に即した気温を反映していると言えるでしょう。
なお、全国各地の「史上最高気温」は以下の通りです。
奈良 | 39.3℃(1994年8月8日) | 東京 | 39.5℃(2004年7月20日) | 広島 | 38.7℃(1994年7月17日) |
大阪 | 39.1℃(1994年8月8日) | 名古屋 | 40.3℃(2018年8月3日) | 新潟 | 39.9℃(2018年8月23日) |
京都 | 39.8℃(2018年7月19日) | 福岡 | 38.3℃(2018年7月20日) | 金沢 | 38.5℃(2022年9月6日) |
神戸 | 38.8℃(1994年8月8日) | 札幌 | 36.2℃(1994年8月7日) | 那覇 | 35.6℃(2001年8月9日) |
和歌山 | 38.5℃(2013年8月1日) | 仙台 | 37.3℃(2018年8月1日) |
各地と比較した場合、奈良の最高気温は39.8度を観測したことがある京都・40度越えを観測したことがある名古屋ほどの気温ではありませんが、関西の各県庁所在地や都市部の主要地域と比べてもほぼ同等で、特に涼しい地域という訳ではありませんし、むしろ内陸部らしい暑さのある地域と言ってよいでしょう。
平均気温で見た場合は?
奈良地方気象台の夏の気温を「平均気温」で見た場合、1991~2020年の平年値では以下の通りになります。
月 | 平均気温 | 最高気温平均 | 最低気温平均 |
6月 | 22.9℃ | 28.1℃ | 18.4℃ |
7月 | 26.8℃ | 31.7℃ | 23.0℃ |
8月 | 27.8℃ | 33.4℃ | 24.1℃ |
9月 | 23.8℃ | 28.8℃ | 20.1℃ |
近年は気温が高くなりがちで、平年値はその前の時代と比べ、大幅に上昇しています。とりわけ、2017年の気象台移転後の気温観測値は更に大きく上昇している傾向があると言えます。
2011年以降の10年間の夏の平均気温を見ると、以下の通りになっています。
6月平均気温 | 7月平均気温 | 8月平均気温 | 9月平均気温 | |
2011年 | 23.0℃ | 26.3℃ | 27.5℃ | 23.4℃ |
2012年 | 21.4℃ | 26.3℃ | 27.5℃ | 24.1℃ |
2013年 | 23.1℃ | 27.1℃ | 27.8℃ | 23.2℃ |
2014年 | 22.6℃ | 26.4℃ | 26.4℃ | 21.9℃ |
2015年 | 21.5℃ | 25.8℃ | 27.0℃ | 21.6℃ |
2016年 | 22.0℃ | 26.6℃ | 27.8℃ | 24.1℃ |
2017年 | 21.8℃ | 28.1℃ | 28.0℃ | 22.9℃ |
2018年 | 22.8℃ | 28.8℃ | 28.7℃ | 23.1℃ |
2019年 | 22.8℃ | 25.7℃ | 28.3℃ | 25.6℃ |
2020年 | 24.2℃ | 25.3℃ | 29.7℃ | 24.5℃ |
2021年 | 23.1℃ | 27.3℃ | 27.0℃ | 23.7℃ |
2022年 | 23.8℃ | 27.5℃ | 28.3℃ | 25.1℃ |
いずれの数値も平年値より高くなっているケースが多いほか、2017年に気象台を移転してからは、今までに観測されなかったような高い平均気温が観測されるようになっています。
特に2018年以降、全国的に気温がかなり高くなっていることも確かですが、それに加えて気象台の移転で奈良の気温は上がっており、奈良市内の実際の「夏の気温」はかつての気象台で観測されていたようなデータよりも暑いことがはっきりしてきていると言えるかもしれません。
なお、一例として2020年8月の平均気温を全国と比較すると、以下のようになります。
奈良 | 29.7℃ | 東京 | 29.1℃ | 広島 | 29.9℃ |
大阪 | 30.7℃ | 名古屋 | 30.3℃ | 新潟 | 27.7℃ |
京都 | 30.5℃ | 福岡 | 30.2℃ | 金沢 | 28.9℃ |
神戸 | 30.0℃ | 札幌 | 23.3℃ | 那覇 | 29.4℃ |
和歌山 | 30.0℃ | 仙台 | 26.6℃ |
このように、周辺の主要都市よりも小数点単位でわずかに低い場合もありますが、特に大きな差はありません。いわゆる「ヒートアイランド現象」が深刻な都市部と大差なく、奈良の夏は「暑い」と言って差し支えないことがわかります。
わずかな気温差は、主に朝の最低気温が少しだけ下がりやすいことに由来するものですが、昼間の猛暑に大きな差はありません。
県内の暑さの地域差は?
これまで見てきた気温のデータは、「奈良地方気象台」のものですが、奈良県内の夏の暑さには一定の地域差があります。一例として2020年夏の平均気温を見ると、以下のようなデータとなります。
観測地点 | 6月平均気温 | 7月平均気温 | 8月平均気温 | 9月平均気温 | 標高 |
奈良地方気象台 | 24.2 ℃ | 25.3 ℃ | 29.7 ℃ | 24.5 ℃ | 102m |
針アメダス | 20.8 ℃ | 22.3 ℃ | 25.9 ℃ | 21.0 ℃ | 468m |
五條アメダス | 22.9 ℃ | 24.1 ℃ | 27.9 ℃ | 22.8 ℃ | 190m |
大宇陀アメダス | 21.7 ℃ | 23.0 ℃ | 26.8 ℃ | 21.5 ℃ | 349m |
風屋アメダス | 21.9 ℃ | 23.0 ℃ | 26.6 ℃ | 21.7 ℃ | 301m |
上北山アメダス | 21.4 ℃ | 22.5 ℃ | 26.3 ℃ | 21.3 ℃ | 334m |
このように、県内の他観測地点ではそれほどの高温は観測されていません。全国どこでも同じ話ですが、標高差があれば気温も変わりますので、奈良県内でも「盆地エリア」は特に暑い傾向があり、その逆に山地に行けば涼しくなっていきます。
一方で、よく言われる標高と気温の関係は「100メートルで0.6℃下がる」というものですので、それに当てはめて考えると奈良県内各地は気温はより下がりやすいとも言えます。場所によっては標高差が200メートル少々で3度程度の気温差も見られますが、これは特に朝晩の最低気温の違いが大きく、奈良市街地で熱帯夜の場合でも都市部でない地域ではそれより大幅に低い気温になるケースが多く見られることが影響しています。
すなわち、奈良の山間部・都市部でない地域が比較的涼しいというのは、決して間違いとも言えません。昼間こそ暑さを感じることは多いですが、特に朝晩の寝苦しさについては都市部以外では感じられない地域も多く、夏の暑さはしのぎやすいと言えるでしょう。