【晴れは少ない?】奈良の「日照時間」について考える【それとも多い?】

基礎知識・お役立ち情報

内陸部に位置する奈良県の気候は、イメージとしては「穏やか」な印象を持たれる方も多い地域です。一方で、実際は地域によって気候の差が非常に大きく、必ずしも「奈良=こういう気候」として決めつけにくい県でもあります。

こちらでは、奈良県の気候について、特に「日照時間(晴れの頻度)」という観点から見て行きたいと思います。

日照時間のデータは?数字では大きな差はない?

奈良県内で観測している気象台・アメダスでは、年間の平年・平均の日照時間は以下のようなデータとなっています。

奈良地方気象台1823.0時間
針アメダス1769.9時間
大宇陀アメダス1702.2時間
上北山アメダス1797.1時間
風屋アメダス1687.1時間
※五條アメダス観測データの関係上平年値がなし

日照時間のデータについては、観測機器の更新・移設などの影響で一定の変化があり、山・斜面の影になる地域などは晴れ間の有無に関わらず日照時間が少な目に出る傾向もあるため、必ずしも1つのデータや平均値だけで判断することは難しいですが、ざっくりとしたデータは上記のような形となります。

日照時間の多さでみると、奈良地方気象台が一番多くなっています。後述するように、南部のエリアは特に夏から秋にかけて紀伊山地で雨雲が発達する場合もあり、その影響もあり日照時間が少し少な目になります。但し、南部は山岳地帯であるため、「斜面の影」の効果も考慮しなければいけません。

なお、2021年の3月以降、日照時間の計測は観測されなくなり「推計値」となっており、アメダスでの観測データには違いが見られ始めています。
気象庁は特段のアナウンスを出しているようには見えませんが、これまで春先に1日10時間の日照時間が観測されることはほぼないかった山間部で、短期間に何度も1日10時間以上の日照時間の「推計値」が記録されています。
もしかすると斜面や山沿いで「影」になることが考慮されなくなったのかもしれませんので、今後の平年値のデータが大きく変化することも考えられます。

奈良地方気象台の日照時間を各地と比較

奈良地方気象台の日照時間の平年値を、各地域と比較すると以下の通りです。

奈良1823.0時間東京1876.7時間広島2042.3時間
大阪1996.4時間名古屋2091.6時間新潟1631.9時間
京都1775.1時間福岡1867.0時間金沢1680.8時間
神戸2072.6時間札幌1740.4時間那覇1774.0時間
和歌山2088.8時間仙台1796.1時間

このようにして見ると、関西では京都よりは多めですがそれ以外と比べると1割前後少なく、東京や福岡とはほぼ同じ、冬に晴れることは少ない日本海側と比べるとやや多め、といったように一定の差が見られます。

奈良は盆地であり、なんとなく「晴れが多い」印象を持つ人もいるかもしれませんが、このようにしてみると、海沿いの大都市の方が日照時間が多い場合もあり、奈良が「晴れが特に多い場所」とは言えないことがわかります。

奈良の「季節ごと」の日照時間・晴れやすさ

冬の晴れ間はさほど多くない奈良県

日照時間について、季節ごとの差を見て行くとどのようになっているのでしょうか。

これについては、平年値について「月ごと」のデータを見て行くとその傾向がはっきりわかります。

日照時間の平年値全天日射量
1月116.7時間7.5MJ/㎡
2月115.5時間9.5MJ/㎡
3月147.4時間12.3MJ/㎡
4月180.3時間16MJ/㎡
5月184.8時間17.3MJ/㎡
6月143.5時間15.9MJ/㎡
7月162.7時間16.4MJ/㎡
8月205.4時間17.6MJ/㎡
9月150.3時間13.5MJ/㎡
10月154.5時間11.2MJ/㎡
11月134.5時間8.6MJ/㎡
12月127.3時間7.2MJ/㎡

季節ごとの日照時間の差ははっきりしており、冬場に少なく、春と真夏に多いという傾向が見られます。

これらは「昼間の長さ」ともある程度は関係していますが、一番昼間が長い6月は梅雨のためさほど多くなく、一番昼が短い12月よりも1~2月がより少ないといったように、必ずしも昼の長さと完全に一致する訳ではありません。

奈良で特徴的なのは、冬場の日照時間が比較的少ないことであり、奈良盆地の場合瀬戸内海側・太平洋側に位置づけられて冬は「雨も雪も少ない」場所であるにも関わらず、季節風の影響などで「雲が広がること」自体は多いことが影響しています。

例えば東京の場合は乾いた晴れの天気が続き、1月の日照時間は平年値で180時間を越え、奈良の1.5倍以上とかなりの差があります。

奈良の場合、降水量のデータを見ると首都圏と大差ないにも関わらず、季節風の影響で雲が出やすい環境のため、晴れ間だけは少なくなってしまうのです。

これは奈良に留まらず、日本海側からの影響を受けやすい京都周辺など近畿地方中部の広い範囲で見られる傾向ですが、近隣でも大阪・神戸などは日照時間がやや多めのため、奈良盆地の内陸部でやや山地に近い条件も影響していると考えられます。

なお、奈良県内でも山岳地帯に位置する天川村や野迫川村などは、寒冷な年には「雲が広がる」だけではなく実際に紀伊山地で雲が湧いて「雪が降る」ケースも多く、日照時間は更に少ない傾向のある地域です。

春は各地と同様よく晴れやすい

4月の日照時間平年値=180.3時間
5月の日照時間平年値=184.8時間
※奈良地方気象台の平年値

冬が終わり、春先になると奈良県内の日照時間は増加傾向となります。4月や5月については、全国的に見ても晴れやすい・行楽日和となりやすい気候が整う季節ですが、奈良も例外なくよく晴れる時期となります。

4・5月の日照時間平均は180時間を越え、真夏と比べるとまだ少し少ないものの、快晴となる日も多くなります。もっとも、春は周期的に天気が変わり、雨も降ることがありますので、良く晴れる日と天気が崩れる日の「メリハリのある天候」がはっきりする時期とも言えるでしょう。

夏の日照時間・晴れ間は盆地エリアでは比較的多め

8月の日照時間平年値=205.4時間
※奈良地方気象台の平年値

冬場の日照時間が瀬戸内・太平洋側としてはやや少ない奈良ですが、全体平均としては全国的に見ても特段多くも、少なくもない日照時間となっており、冬場に減った分をどこかで「取り返している」ことになります。

その季節は「真夏」のシーズンであり、8月のみ奈良地方気象台の日照時間平均が200時間を越えるシーズンとなっています。

奈良盆地一帯は、大阪周辺などと同様に「瀬戸内海式気候」の傾向が見られる地域であり、太平洋からやや離れていることから海からの湿った気流の影響を受けにくく、夏場は晴れる日がかなり多くなり、春以上に晴天が長続きするシーズンとなります。

また、夏の夕立についても紀伊山地では比較的多い頻度で見られますが、奈良盆地周辺は「時折ある」程度で終日よく晴れるケースの方が多く、こちらも日照時間の長さをもたらす要因になっています。

但し、同じ奈良県内でも太平洋側からの気流の影響を受けやすい南部は、紀伊山地で雨雲が発達しやすいこともあり、奈良盆地周辺と比べると、夏場の日照時間はやや減る傾向にあります。特に台風の影響を受ける際には南東部を中心に異常な豪雨になることもあり、奈良=夏は晴れ。というイメージだけで捉えることは危険です。

秋も晴れる日はやや多め

正倉院展などで奈良への観光客が増える秋のシーズンは、日照時間としてみると150時間前後と多くも少ないもない、ごく平均的な日照時間となります。但し、特に10月を過ぎると昼間の時間が短い季節に入っていきますので、昼間の時間が短い中での日照時間としてみると、特に少ないということもなく、晴れる日は比較的多めとなっています。

秋は季節が進むごとに雨の量も少なくなっていく時期ですので、台風シーズンを過ぎた後の秋については、春と同等と言えるくらいに観光がしやすい・行楽日和が多い時期と言えるでしょう。

まとめ

奈良の気候を「日照時間」という観点から見ると、奈良は日照時間は多いとも少ないとも言えない平均的な「晴れやすさ」を持つ地域と言えます。年間の日照時間は東京や福岡とほぼ同様で、大阪や神戸・名古屋などと比べるとやや少なくなっています。

地域ごとに見ると、奈良県内では奈良地方気象台の日照時間平年値が最も多くなっています。但し、山地の観測地点は山の影になるといった理由もありうるため、多い・少ないを断定することは適切ではありません。

季節ごとに見ると、奈良盆地一帯は冬場は雨も雪も少な目の地域ながら、季節風の影響で「雲は広がりやすい」ため、日照時間は首都圏や大阪・神戸など太平洋側の各地と比べ少ない傾向が見られます。一方で真夏のシーズンは盆地エリアでは晴れる日がかなり多く、日照時間は多くなります(但し、南部を中心に海からの気流の影響を受けやすく、山間部などでは豪雨になることもあります)。