奈良漬とは結局どんな食べ物?基礎知識をしっかり解説

基礎知識・お役立ち情報

奈良のグルメ、特産品で最も有名なもの。と言えばやはり「柿の葉寿司」か「奈良漬」。

奈良漬というと、頻繁に食べる人もいるかもしれませんが、全く食べた事もない人も多く、漠然と「色が濃い」とか「アルコール分が含まれている」とか言ったイメージだけを持つ方も多いかもしれません。

本記事では、奈良漬について、ごく初歩的な「基礎知識」と言える内容をテーマごとに見て行きます。

どうやって作るの?他の漬物との違い(特徴)は?

奈良漬は、ざっくりとした大きな区分としては酒粕に漬ける「粕漬け」の一種にあたります。

但し、現在では一般に「粕漬け」と「奈良漬」は種類としては別のお漬物として扱います。

奈良漬の大きな特徴としては、塩漬けした野菜類などを酒粕に「複数回」漬けこんで作ることが挙げられます。1回漬けて終わり。なのではなく、漬け変えを行ったもの(5回程度行うこともある)を一般に「奈良漬」と呼んでいるのです。

製造業者や作り方によって期間は異なりますが、何度も漬け変える上に短いものでも半年~長いものでは今西本店のように5年単位~といった長い時間漬け込むことから、奈良漬の見た目としては元々の素材の姿とは違ったもの(長期保存に適した状態)となり、一般には「べっこう色(長い場合は黒に近くなる)」と言われる独特の色合いに変化します。

粕漬けといっても、野菜の素材感が際立つ浅漬けの粕漬けもありますので、複数回・長時間漬け込む奈良漬は、その中でも全く異なるタイプのお漬物であり、例えば京漬物など色合い鮮やかで素材感たっぷりのお漬物とはむしろ正反対の性質を持っているのです。

奈良漬けは完成するまでに時間と手間がかかる一方、保存性に優れていることもあり、「漬物の王様」といった呼ばれ方をすることもあります。

原材料は?

奈良漬に使われる主な野菜の種類は、白うり・きゅうり(胡瓜)・小玉すいか(西瓜)・生姜・なす(茄子)などが一般的です。

また、この他には製造業者によって青うり・にんじん(人参)・大根・玉ねぎ・たけのこ(筍)・梅・ごぼう・れんこん(蓮根)・小玉メロン(小玉)・しいたけ(椎茸)・ひょうたんなどといった素材が用いられることもあります。でんぷん質のお漬物に適していない野菜・果実類でなければ、かなりの種類の素材で「奈良漬」を作ることが出来るようになっています。

奈良漬の歴史とは?

奈良漬は、その名の通り奈良で成立して特産品として知られるようになったお漬物です。

酒粕で漬け込んだお漬物(奈良漬の原型)は、奈良に都があった奈良時代から存在したことは確実で、長屋王邸跡(現在の商業施設「ミ・ナーラ」が建つ場所)で発掘された木簡の中には『進物加須津毛瓜(たてまつりものかすづけうり)加須津韓奈須比(かすづけかんなすび)』といった漬物に関する記述が残されています。

なお、当時のお酒は現在のようなものではなく、いわゆる「どぶろく」であったことから、今とは酒粕の素材は少し違ったものであったと考えられます。

奈良漬に類するお漬物の存在は、平安時代の『延喜式(律令の施行細則)』においてもうりやなすなどを使った「粕漬」に関する記述が見られます。

もっとも、奈良漬というブランドが古代から存在した記録はなく、「奈良漬」という記述自体は中世以降のものとなります。初出のものとしては室町時代の1492年(明応元年)の『山科家礼記』に、「ナラツケオケ一」との記述が見られ、このあたりから「奈良漬」と呼ばれるようになったものと推測されます。

特産品としての知名度は、江戸時代の初頭(慶長年間)に中筋町(現在の近鉄奈良駅前)に住む漢方医であった「糸屋宗仙(いとやそうせん)」が、奈良でとれた白うりの粕漬けを「奈良漬」として販売しこれがヒットしたことで、全国的な知名度を持つようになっていったとされています。奈良漬は徳川家康や幕府からも重宝されたようで、その後うりの漬物のみならず、様々な野菜漬けが作られるようになきました。

なお、奈良が漬物の産地として発展した歴史的背景としては、奈良が「清酒のふるさと」と呼ばれていることも忘れてはいけません。山間部の正暦寺では「菩提泉」という清酒が日本で初めて醸造されたという逸話が残りますが、良質な清酒を醸造する過程において、良質な酒粕を供給することが出来た奈良の土地柄というものが、美味しい奈良漬の発展につながったとも言えるのです。

奈良漬の味はどんな感じ?

奈良漬はどんな味がするのか。というと、これは意外にも定義はしづらいテーマです。

奈良漬の味について、ある商品を食べたある人は、子供でも食べやすい甘みある懐かしい味わい。と言い、ある商品を食べたある人は、ほんのり甘みがあってすっきりした味わい。と言い、ある商品を食べたある人は、塩気が効いていてご飯によく合う。と言い、ある商品を食べたある人は、今まで食べた事のない言葉に言い表せない味わい。と言い、数か月後に「ようやく美味しさがわかった」と言うようなケースもあります。

このような状況が何を表しているかというと、要するに各業者ごとの製法によって、風味はかなり差が出る(出せる)ということです。

奈良漬を漬け込む際には、酒粕という絶対不可欠な存在の他に、みりん・食塩・砂糖、場合によっては化学調味料(うま味調味料)を添加することがあります。

確認している限り、酒粕以外を一切使わないのは奈良の今西本店の一業者のみであり、森奈良漬店は塩のみ使用、その他みりん・塩のみ使用する業者、砂糖類も使用する業者、その他の添加物も使う業者といったように各業者ごとに味付けが多岐に渡ります。

添加物を少なくすればするほど、調味料慣れした現代の味覚からすると独特の風味が生まれますし(好き嫌いは分かれます)、化学調味料などに手を出すと一般的な意味で「食べやすさ」は増しますが、必ずしも奈良漬本来の風味でない。というケースも増えていきます。

奈良漬の味について何が良くて、何が悪いとは言えませんが、要するに甘みの強いもの・ほどほどに甘いもの・塩気を感じるもの・形容しがたい独特の風味のものなど、消費者のニーズに沿った形(または伝統に即した形)で様々な味わいがあり、それらからお好きなものを選ぶことが出来る。ということです。

奈良漬とアルコール分

奈良漬は一般に、「アルコール分」を含む食べ物の代表格として広く知られています。

実際に、奈良漬には一定のアルコール分が含まれています。JAS法における定義(日本農林規格)では、漬け変えをするだけでなく、3.5%以上のアルコール分を含むことが奈良漬の定義とされており、一般的な奈良漬には5%以上のアルコール分が含まれていることが多いですので、むしろ一定のアルコール分は奈良漬にとって必須でもあります。

もっとも、「食べると飲酒運転になる」といったような事態がそう簡単に起きるかというと、それはかなり疑問符が付くところです。

奈良漬は濃厚な風味で「ご飯のおとも」として最適な存在ですが、基本的にそんなに大量に食べるものではありません。仮にたくさん(何切れも)食べたとして、缶ビール一杯分のアルコール量を摂取しようと思えば、奈良漬を少なくとも300グラム以上食べなくてはなりません(アルコール分5%の場合)。

現実的には、1食で100グラムの奈良漬を食べることすら珍しいことであると考えられますので、奈良漬で酒気帯び。という事態はそれほど現実的とは言えないのです。

もっとも究極的には可能性自体はゼロではありませんし、お酒に弱い方は酒気帯び以前の問題がありますので、奈良漬を食べてすぐにあえて運転する必要はありません。

奈良でなくても奈良漬?

先に解説したように、奈良漬は複数回長時間漬け込んだ「粕漬け」のことを指す名称です。すなわち、必ずしも地域による縛りがある訳ではありません。

奈良市内で製造されていても「浅漬け」は「浅漬け」ですし、関東や九州で製造されていても、奈良漬の定義にあてはまる製造方法であればそれは「奈良漬」と呼んでよいことになります。

例えば神戸市灘区の「甲南漬」は愛称こそ神戸にちなんだものですが、種類としては奈良漬であると明記されてますし、茨城県取手市は奈良漬が特産品の一つであったりします。大小を問わなければ奈良漬を製造する業者などは全国に多数あり、その商品は「奈良漬」を名乗っている場合がほとんどです。

要するに、奈良漬というのは、それ自体は地域性を表すものというよりは、長期間漬け込んで複数回漬け変えを行ったあの「べっこう色」のお漬物を指す名称に過ぎない。と考えて頂いた方がよいかもしれません。

なお、奈良漬の生産量と生産業者が最も多いのは奈良市一帯ですので、奈良が奈良漬の本場であることには違いありません。

奈良の代表的な奈良漬店は?

奈良を代表する奈良漬店としては、例えば以下のようなお店があります。柿の葉寿司などと異なり、各お店ごとに作り方や味わいにはっきり違いがあることが特徴です。

今西本店酒粕以外使用しない「元祖奈良漬」を名乗る奈良漬店。
添加物を使わず長期間漬けるため真っ黒の奈良漬であり、「わかる人にはわかる」かなり独特の風味が評判です。メディアなどでも紹介されることも多くなっています。
森奈良漬店メディアなどで取り上げられることも多い東大寺参道沿いのお店です。添加物は少なく塩のみで、アルコール分はやや高く、甘さは控えめです。
山崎屋本店東向商店街内ほか奈良周辺各所に店を構える奈良最大級の奈良漬店です。食べやすい定番商品から広く揃うため、観光の途中に立ち寄る人も多いお店です。
西出奈良漬本舗JR奈良駅から近い場所にある奈良漬店です。みりん・砂糖も加えた食べやすい奈良漬を販売しています。
本家寿吉屋西の京地域に本店を持つ奈良漬店。比較的色が薄く甘みのある食べやすい奈良漬となっています。
今西清兵衛商店造り酒屋であるお店ですが、その酒粕を用いてぜいたくに奈良漬も製造しています。甘さは控えめで旨味とお酒の香りが特徴となっています。

まとめ

奈良漬は、「粕漬け」の一種であり、複数回漬け変えを行って長期間漬け込んだものを指す名称です。日本農業規格においては、漬け変えのほかにアルコール分を3.5%以上含むものとする。という定義も見られ、その性質上保存性に優れた存在として知られます。

奈良漬に用いられる素材は白うり・きゅうり(胡瓜)・小玉すいか(西瓜)・生姜などを筆頭に、にんじん・大根・玉ねぎ、メロンなど野菜や果実の様々な素材が用いられます。漬け込む期間は業者により差があり、最短で半年ほど、最長では5年以上漬け込むこともあります。

歴史は奈良時代から既に粕漬けの一種が作られていた記録は残されていますが、「奈良漬」がブランド化されたのは中世~江戸時代以降のことです。現在では奈良に留まらず、各地で奈良漬は製造されており、甲南漬けや取手の奈良漬のように、奈良漬が特産品となっている奈良以外の地域もあります。

味については添加物(何も入れない・塩だけ・みりんや砂糖も・化学調味料も)の状況次第で大きく異なり、作り方次第で甘みが強いものもあれば、そうでないものもあります。なお、アルコール分を含む代表的な食材のため、「酒気帯びになる」というような評判も目立ちますが、かなりの量を食べなければ可能性は低いと推定されます。