【東大寺法華堂(三月堂)】東大寺成立前からの歴史も有する圧巻の「仏像の宝庫」

東大寺三月堂(法華堂) 観光スポット・みどころ

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観光のご案内

歴史・概要

東大寺法華堂は、「上院」と呼ばれる大仏殿東側のなだからか傾斜地のエリア、具体的には「二月堂」の南隣、「手向山八幡宮」の北側すぐに位置する仏堂であり、建築は「国宝」に指定されています。

旧暦3月に「法華会」が行われることから、一般には「三月堂」と呼ばれている法華堂。

その建立は奈良時代の大仏開眼よりさらにさかのぼる時期にあたるとされています。

建立は奈良時代中頃の天平5年(733年)とも言われ、当時はまだ「東大寺」として伽藍の整備が行われている時期ではなく、東大寺の前身の「金鐘寺」の時代となっているため、法華堂の建物はこの「金鐘寺」の貴重な遺構であるということにもなります。

法華堂は、東大寺境内の主要な仏堂、建築の多くが戦乱等で焼失した際も焼け残り、門や倉庫としては「転害門」や「正倉院」も残されているものの、東大寺唯一の奈良時代から残る「仏堂」の建造物として、現在も一部が当時の姿をとどめています。

なお、三月堂・法華堂という呼び名は「法華会」の行事が行われるようになってからの呼び名であり、それまではご本尊の不空羂索観音菩薩にちなんで「羂索堂」・「羂索院」と呼ばれていたとも言われています。

現在の建築は「奈良時代」と「鎌倉時代」が混じり合う

さて、現在は一つの建物である法華堂は、奈良時代の建立当初は寄棟造りの正堂と礼堂が隣合わせになる「双堂」形式となっていました。

すなわち現代まで奈良時代の痕跡を残す建物であるとは言え、建造当初は現在の姿とは違う形(2つの建物が並ぶような形)となっていたということになります。

しかし東大寺が平重衡の乱によって壊滅的被害を受けて間もない鎌倉時代初頭に南側に位置する礼堂が入母屋造りへ改築され、別箇であった正堂と礼堂が一つの建物となりました。

現在も奈良時代の建築様式をとどめるものは北側の正堂の方となっていますが、時代を超えた建築の融合は、決して違和感を感じさせず、むしろ美しい調和の世界を感じさせるものとなっています。

安置されている仏像(文化財)について

堂内には奈良時代の仏像が多数安置されていましたが、近年の改修を機に一部は東大寺ミュージアムに移転されました。

現在は、本尊である不空羂索観音菩薩、梵天、帝釈天、金剛力士、四天王などの仏像が安置され、以前法華堂に安置されていた日光・月光菩薩、弁財天、吉祥天、地蔵菩薩、不動明王の仏像は東大寺ミュージアムに安置されていますが、現在も「国宝の宝庫」として知られています。

本尊「不空羂索観音菩薩立像」(国宝)

法華堂の象徴とも言える本尊不空羂索観音菩薩。こちらは奈良時代(大仏建造の頃)に造立されたと考えられる金箔が美しい3メートル60センチもの巨大な仏像となっており、その堂々たる姿が印象的な存在になっています。

「羂索」と呼ばれる鎖を使って民衆を救うとされる仏さまは、3つの目・8本の腕をお持ちの「三目八臂」というお姿になっており、合掌されるお手には水晶を挟んでいる姿や、「化仏」が数多くの宝石に囲まれた「宝冠」が大変美しいことで知られています。

その圧倒的な姿は一目見るだけで「奈良時代を代表する仏像」という名にふさわしい理由が理解出来るでしょう。

「梵天・帝釈天立像」(国宝)

本尊の左右に設置されている梵天・帝釈天立像は、高さは4メートルと本尊以上の大きさを持つ存在となっており、同じく奈良時代の仏像として国宝に指定されています。

この仏像の特色としては、一般的には梵天像が着物を着用し、帝釈天像が鎧を身に着けると言われる中で、梵天像が鎧、帝釈天が着物と言う真逆の姿をしているという不思議な特徴があります。

なお、一般的に脇侍としてご本尊を御守りする仏像が本尊よりも大きいことは余りなく、この梵天・帝釈天立像は不空羂索観音菩薩と同じような時期からこのお堂にあるものではなく、他所から移転されてきた存在とも推測されます。

秘仏「執金剛神像」(国宝)

法華堂堂内において通常時は公開されていない秘仏としては、毎年12月16日(開山忌)のみに公開される「執金剛神像」もあり、こちらは東大寺の前身寺院時代に東大寺初代別当にもなる「良弁」により造立が図られた像と言われるなど非常に古い存在ながら、通常は公開されていないこともあり、彩色が良く残された存在になっています。

像は漫画の登場人物のごとく鮮やかであり、かつ金剛杵を持つ姿の厳めしさが際立つユニークな存在となっています。

その他の仏像・文化財

このほかには、彩色が一部で残る高さ3メートルほどの「四天王像」(国宝)、また南大門の裸の像とは異なり、鎧を身に着ける姿が特徴的な「金剛力士像(阿吽)」(国宝)もあり、こちらは堂内では通常の配置とは異なり左側が阿形・右側が吽形となるように安置されています。

また、須弥壇上の天井には奈良時代と鎌倉時代に造られた美しい天蓋が設けられています。

混雑状況について

大勢の観光客が訪れることで知られる東大寺。法華堂(三月堂)を拝観する際も、その混雑状況が気になる方も多いかもしれません。

しかし、結論から言えば法華堂、二月堂周辺は大仏殿の回遊ルートから離れているため、周辺が観光客で混雑するようなことは少なくなっており、特別公開・各種行事・団体客などの要因がない場合は混雑で困るようなことはまずありません。

むしろ、比較的空いているにも関わらず、法華堂の位置する「上院」エリアは東大寺のエッセンスとも言える天平時代の雰囲気を色濃く残しており、法華堂はその象徴的存在ともなっていますので、大仏殿等を拝観する際に合わせてお立ち寄りになることをおすすめできるスポットになっています。

東大寺法華堂(三月堂)の風景

東大寺三月堂(法華堂)
東大寺法華堂(三月堂)の屋根(正堂・礼堂接合部)

法華堂の建物の中央部には、鎌倉時代に「正堂」と「礼堂」が1つの建物に改築された際の接合部分とも言える場所があり、内部には「相の間」と呼ばれる小部屋を挟みつつ、柱などを組み合わせて上手に新しい建物を生み出した工夫のほどが伺えるようになっています。

三月堂の建築を真下から望む

三月堂の堂々とした建築は、間近に近寄ってしっかりと眺めることが可能です。また、比較的頻繁に建物付近に「鹿」が寝そべっているようなことも多いため、いかにも「奈良らしい」写真を撮影する事もできたりします。

二月堂と三月堂の並び

二月堂と三月堂が並び立つ姿は壮観であり、南大門・大仏殿周辺の風景以上に、この「上院」エリアの風景を愛する人々も多くなっています。

東大寺法華堂(三月堂)を南側から望む

法華堂(三月堂)を拝観する際の入り口は建物の南側(礼堂正面)にあり、手向山八幡宮の鳥居のすぐそばにもなっています。

黄昏時の三月堂(法華堂)

太陽が北西方向に沈む夏の夕方などには、西日に法華堂の「北側」の壁面が照らされることになり、三月堂と二月堂に挟まれるエリアは時代の流れが止まったかのように幻想的な雰囲気に包まれます。

法華堂は正面のみならず、様々な方角からその「建築」をじっくりと味わうことで、より深い魅力や細やかな意匠や構造を確かめて頂けます。

次項では、拝観に関する情報を解説していきます。

拝観情報

拝観料:大人(中学生以上)600円・小学生300円

※30名以上の団体の場合、大人(大学生以上)550円・高校生500円・中学生400円・小学生200円

※障害者手帳提示の場合大人300円・小学生150円

※奈良市ななまるカードをお持ちの本人に限り無料(要呈示)

拝観時間: 8時30分~16時

次項では、交通アクセスについてご案内致します。

アクセス(電車・バス)

近鉄・JR線各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「市内循環外回り」・「高畑町」・「山村町」・「藤原台」行き乗車、「東大寺大仏殿・春日大社前」バス停下車、北東に徒歩15分、または「春日大社本殿」行き乗車、「東大寺大仏殿」バス停下車、北東に徒歩15分

・JR、近鉄奈良駅から「青山住宅」・「州見台八丁目」行き乗車、「今小路」バス停下車、東に徒歩15分

ぐるっとバス(土日祝日・観光シーズンのみ運行)

・大仏殿前駐車場バス停(駅からは別途ぐるっとバスなどによるアクセスが必要です)から「ぐるっとバス若草山麓ルート」乗車、「手向山八幡宮・二月堂前」バス停下車、北に徒歩5分

近鉄奈良駅から東に徒歩25分

JR奈良駅から北東に徒歩35分

周辺のみどころ・観光スポット

二月堂から南へすぐ、手向山八幡宮から北にすぐ、四月堂(三昧堂)から東にすぐ、東大寺大仏殿から東に徒歩5分、若草山登山口から北に徒歩5分、春日大社本殿から北に徒歩15分

東大寺法華堂(三月堂)周辺地図