観光都市である古都「奈良」は、近年リモートワークの増加やコロナ禍などで「移住先」としての注目も集めつつあります。
奈良に住むことを検討する際に気になるのは、不動産の価格や家賃の水準といった「居住」に関わるコスト。
当記事では、それらを代表する「指標・データ」である「地価」について、奈良市内の状況を簡単に見ていきたいと思います。
市内全体の地価の傾向は?
奈良の地価について、まず最初に結論から言ってしまえば、その傾向は「全体としてはそれほど高くはない都市」と言うことが可能です。
もちろん、日本全国には様々な都市があり、奈良よりも全体的な地価が低い県庁所在地は多数見られますし、「地方都市」だけで区切れば奈良の地価は高めです。
但し、奈良へ移り住む人が多い地域である「首都圏」や「京阪神」の大都市圏と比較すると、郊外エリアも含めて見ても「奈良市の方が安め」という傾向ははっきりしています。
奈良の場合、地価が全国的に見ても高めである大阪・京都の通勤圏内にあるという要因で、「その他地方都市」よりは地価が高めになります。
一方、大阪・京都の都心からは離れており、オールドニュータウン化が進む場所も多い。といったこともあり、京阪神の中では特に地価が高い場所という訳ではありません。
首都圏や京阪神の都心周辺・主要な郊外エリアからの「移住」であれば、奈良の地価が高いと感じることはまずないでしょう。
地価が高い場所は?
奈良市内の地価ランキング
奈良市内の公示地価・基準地価のランキングを見た場合、当然と言えばそれまでですが、ランキング上位は全て駅前または駅に近い「商業地域」となっています。
地価順位 | 住所 | 地域の特徴 | アクセス | 地価(公示地価または基準地価) | 坪単価換算 |
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1位 | 東向中町4番 | 駅前すぐの商業地域 | 近鉄奈良駅から徒歩すぐ | 85万0000円/m2 | 280万9917円/坪 |
2位 | 中筋町1番4 | 駅前すぐの商業地域 | 近鉄奈良駅から徒歩すぐ | 73万0000円/m2 | 241万3223円/坪 |
3位 | 西大寺東町2-1-51 | 駅に近い商業地域 | 近鉄大和西大寺駅から徒歩2分 | 49万4000円/m2 | 163万3057円/坪 |
4位 | 油阪地方町3番1 | 駅に近い商業地域 | JR奈良駅から徒歩2分 | 48万5000円/m2 | 160万3305円/坪 |
5位 | 三条町511番1内 | 駅に近い商業地域 | JR奈良駅から徒歩2分 | 48万0000円/m2 | 158万6776円/坪 |
6位 | 学園北2-3-1 | 駅に近い商業地域 | 近鉄学園前駅から徒歩2分 | 45万4000円/m2 | 150万0826円/坪 |
7位 | 富雄元町2-3-5 | 駅前すぐの商業地域 | 近鉄富雄駅から徒歩すぐ | 32万9000円/m2 | 108万7603円/坪 |
8位 | 油阪町1番66 | 駅に近い商業地域 | Jr奈良駅から徒歩3分 | 32万5000円/m2 | 107万4380円/坪 |
9位 | 芝辻町2-11-5 | 駅前すぐの商業地域 | 近鉄新大宮駅からすぐ | 31万7000円/m2 | 104万7933円/坪 |
10位 | 大宮町6丁目3番4外 | 駅から少し離れた商業地域 | 近鉄新大宮駅から徒歩4分 | 31万2000円/m2 | 103万1404円/坪 |
11位 | 三条本町9-21 | 駅に近い商業地域 | 奈良駅から徒歩3分 | 30万9000円/m2 | 102万1487円/坪 |
観光都市らしい地価高騰も
駅前はコロナ禍の影響などにより地価の状況は不透明感が強まっていますが、近鉄奈良駅前の地価は地方の主要県庁所在地(新潟市・岐阜市・長野市)の地価最高地点よりも高くなっており、決して割安な地域とは言えません。
特に、奈良市の場合は近鉄奈良駅・JR奈良駅前には百貨店もショッピングモールも一切なく「市の中心部」と言えるような環境には乏しく、大和西大寺駅・学園前駅・高の原駅といった大きな駅ごとに一定規模の商業施設や市街地が「分散」している特徴がありますので、まちの中心が1か所にまとまっていない中で、奈良駅前の地価がこの金額になっているのは、やはり「観光地」としての特徴を表したものと言えるでしょう。
奈良駅周辺については、餅飯殿商店街など駅から徒歩5分以上離れた場所も含め、観光客の動線となっているエリアは地価はやや高めで、コロナ禍までは上昇傾向の続く地域でもありました。
住宅地
住宅地について見ると、奈良市内での位置づけとしては「1平米=10万円」を越えると市内ではやや地価が高い地域と言えますが、このような区域は観光客も見られる「ならまち・きたまち」エリア周辺、また開発が進む大和西大寺駅・学研奈良登美ヶ丘駅周辺など主要駅の周辺地域、西部のいわゆる「高級住宅地」とされるエリアに分布しています。
このうち、「ならまち・きたまち」エリア一帯については、駅から遠いほど・観光客の動線から外れた地域ほど割安な傾向がありますが、駅の徒歩圏にあたる地域の場合、大阪・京都市内や近郊地域に匹敵する地価となっている場所が一部で見られます。
また、特に近年も開発が進む大和西大寺駅・学研奈良登美ヶ丘駅周辺地域は、住宅地であっても地価が高めの場所があり、特に西大寺駅南側の地域は、京阪神の奈良市内の住宅地域としては最も高額な地価となっています。
市内西部の場合は、市内では最も地価が高い場所の1つである学園前駅徒歩圏(学園南・学園北など)を筆頭に、駅からやや離れた(場合によってはバス利用が前提)登美ヶ丘・東登美ヶ丘・北登美ヶ丘・松陽台・学園大和町といった住宅地が市内では地価がやや高めの地域であり、いわゆる「お屋敷」が並ぶ高級住宅地となっている地域もあります。
なお、「1平米=10万円」は市内の住宅地ではやや高額な部類に入りますが、京阪神や首都圏の住宅地と比較すると、全く高額な区分には入りません。
比較的手ごろな場所は?
奈良市内の場合、駅から離れた住宅地は西部の一部を除き地価は「1平米=10万円以下」となっており、京阪神の郊外エリアとしては比較的安価な地価水準と言えます。
主要駅の利用圏でも、近鉄大和西大寺の北側に少し離れたエリア、また近鉄奈良駅・JR奈良駅からバスを利用するようなエリアは総じて地価水準はやや低めです。特に大和西大寺駅周辺については、道路事情が余り良くないこともあり、駅前の地価はかなり高めでも、徒歩10分程度歩けば地価がかなり抑えられた地域となります。
また、近鉄西ノ京駅周辺エリア・尼ヶ辻駅周辺エリアなどは、駅周辺も含めて地価水準はやや低くなっています。
なお、全国各地を見ると、標高の高い団地や交通利便性の悪い場所などで、実質的に買い手がつかないような郊外住宅地も多々見られますが、奈良市内の場合そういったエリアは現在の所見受けられず、郊外住宅地で「1平米=5万円」を下回る地域は基本的にありません。
奈良市の場合は地価は割安感がある地域も多いですが、「極端に安い場所」もないという理解が現在の所は適切と言えるでしょう。
不動産価格・賃貸価格と地価
これまで解説してきた内容は、奈良市内の「地価」を概観するものですが、実際の不動産価格・家賃との関係性はどうなっているのでしょうか。
これについては、地価がその地域の不動産の鑑定額を評価したものである以上、地価が高い地域は実際の取引価格も高く、地価が安い地域は安くなるという傾向があることは間違いありません。
但し、賃貸物件の家賃については状況は様々です。例えば住宅地としては地価が割高な駅周辺地域であっても、家賃2万円~3万円台の格安物件が豊富なケースは多々見られます(新大宮駅・奈良駅・富雄駅など)。また、地価が割安な地域であっても、格安賃貸物件がなく、むしろ一定の家賃水準の物件が多く見られる場所もあります。
家賃水準は、その地域における賃貸物件の密度、また築年数のわずかな違い、駐車スペースの有無、間口・道路・坂道の有無などによって大きく異なりますので、「地価が高い場所=家賃の高い場所」と決めつけて家探しを断念するのではなく、駅前周辺も含めて広く家探しをされることをおすすめします。