奈良で最も有名な神社であり大勢の参拝者がいつも訪れる世界遺産「春日大社」。こちらでは、そんな春日大社の「年中行事(祭事・儀式)」について、主要なものを一覧でご紹介していきます。
神事は原則として日程が固定されており、毎年同様の形式で実施されることが常ですが、ご案内する内容はあくまでも「例年の傾向・通常時の内容」ですので、実施日程・実施内容については変更となる可能性もあります。
また、春日大社が執り行う各種祭事には「拝観・見学不可」のものもありますが、そちらについても合わせてご紹介しておりますので、拝観・見学を検討される場合、それが可能かどうかもあらかじめご確認頂く事をおすすめします。
1月の行事
1月1日:初詣
春日大社の初詣は、午前0時より太鼓の音と共に開門される形で始まります。当日は昼間時間帯には大勢の参拝者が訪れますが、深夜帯については開門前・直後は混雑が見られますが、早朝にかけては比較的参拝しやすい環境です。
1月1日:歳旦祭 摂末社巡拝 (※拝観不可)
午前5時から、春日大社の神職らが境内一帯の摂社・末社を参拝し、春日大社の神様へ世界の平和・国家・皇室の安泰などを祈ります。なお、この祭事については見学・拝観等は出来ません。
1月2日:日供始式並興福寺貫首社参式
時間:10時~
場所:中門下(回廊内側)・若宮神社
日供始式並興福寺貫首社参式(にっくはじめしきならびにこうふくじかんすしゃさんしき)は、春日大社の神職らにより、毎日行う朝夕の日供を無事平穏に行えるように祈りが捧げられる他、神仏習合の時代に春日大社と興福寺が不可分な関係にあった時代の習わしを踏襲し、興福寺の貫主・僧侶らが春日大社を参拝し神前にて「読経」を行います。
1月3日:神楽始式
時間:11時~
場所:中門前(回廊内側)
年が明けて初めての「神楽」の奉奏が行われ、秘曲である「神おろし」や「千代まで」を奏して国家の安泰や神楽奉納が無事平穏に行えるように祈念します。
1月5日:南市恵比須神社「初えびす」
時間:朝7時~
場所:南市恵比須神社境内
いわゆ春日大社の「境内」ではありませんが、境外末社に位置づけられるならまちエリアの「南市恵比須神社」では、奈良で最もにぎわいを見せるとも言われる「初えびす」が実施され、当日は吉兆笹等の授与を受けるために大勢の参拝者が列を作ります。
なお、南市恵比須神社は通常時は閉門され、参拝出来るのはこの「初えびす」の際等、祭事開催時に限られています。
1月7日:御祈祷始式
時間:10時~
場所:幣殿(儀式本体)・直会殿(狂言奉納)
神職が中臣祓(大祓詞)を奉唱し、国家・皇室・国民の安泰を祈ります。また、直会殿にある春日明神の「鹿島立神影」への拝礼を行い、狂言の奉納も実施されます。
なお、儀式の後には「中旬の献」と呼ばれる神饌(神様へお供えする料理)が儀式の参加者へと振舞われる事でも知られています。
1月10日:末社佐良気神社「春日の十日えびす」
時間:10時~15時頃
場所:末社佐良気神社境内
春日大社の「えびす様」として知られる末社の佐良気神社において、福娘による吉兆笹や縁起物・御札の授与等が行われます。
毎年成人の日:舞楽始式
時間:13時~
場所:林檎の庭(回廊内側)
南都楽所により、舞楽(ぶがく)の奉納が行われ、1年間無事平穏に舞楽を奉仕出来るよう祈りが捧げられます。
1月第4土曜日:大とんど
時間:13時~18時ごろ(受付)
場所:飛火野内特設会場
古くなった各種縁起物(前年以前の古神符・正月の〆飾り)等を焚き上げて頂ける「大とんど」は、各地で行われていますが春日大社のものは、数ある「大とんど」の中でも最も遅い時期である1月末に「飛火野」で実施されます。
大とんどの概要については、上記の記事でも詳しく解説しています。
2月の行事
節分の日:節分万燈籠
節分の日には、回廊一帯の「燈籠」が点灯される「節分万燈籠」が行われます。
2月17日:祈年祭
時間:10時~
場所:参道~本殿一帯
神職により、この年の五穀豊穣を願う祈りが捧げられます。オフシーズンということもあり基本的に見学者も少な目の静かな祭事となっています。
2月23日:天長祭
時間:10時~
場所:参道~本殿一帯
令和の今上天皇の誕生日に、天皇陛下のご長寿とご健康を願い春日大社の神様へ祈りを捧げる神事です。こちらもごく静かな環境で斎行されます。
3月の行事
3月10日:辰の立榊式
時間:10時~
場所:一の鳥居前
辰の立榊式(たつのたてさかきしき)は3月13日に斎行される春日大社の例祭「春日祭」の前儀にあたる儀式であり、一之鳥居に大きな榊を立て準備を行います。
3月11日:巳の祓式・午の御酒式(※拝観不可)
時間:15時~
場所:幣殿・御本殿内院
巳の祓式(みのはらえしき)も例祭「春日祭」の前儀であり、春日祭を執り行う神職を神木で祓い清め儀式です。その後は神前で神職が春日大社で醸造したお酒を頂くという午の御酒式(うまのみきしき)が行われます(こちらは拝観不可)。
3月12日:未の砂置式(※拝観不可)
時間:10時~
場所:境内一帯
春日祭の前日に行われる前儀である未の砂置式(ひつじのすなおきしき)は、境内各所や神前に清めの砂を撒く儀式です。なお、拝観・見学は出来ません。
3月13日:春日祭(※一部を除き拝観不可)
時間:9時~
場所:参道~本殿一帯
春日祭は春日大社の1年で最も重要な祭事(例祭)であり、宮中からの勅使が春日大社を参拝するという「勅祭」となっています。歴史は古く、かつては勅祭であるとともに春日大社を氏神とする「藤原氏」のための祭事という側面もありました。
現在は9時からの御戸開之儀・10時からは勅使参向之儀が行われ、一連の儀式は正午頃まで行われます。なお、当日は参道一帯を除き拝観・見学は出来ません。
3月14日:戌の小祭
時間:10時~
場所:各摂末社
春日祭終了後の後儀にあたる戌の小祭(いぬのこまつり)は、各摂末社に神饌(お供えの食べ物)を捧げる儀式となっています。
3月15日:御田植祭・御田植神事
時間:10時~(神事は11時~)
場所:本殿一帯(祭事)、林檎の庭・榎本神社前・若宮神社前(神事)
五穀豊穣を祈る祭事である「御田植祭(拝観不可)」の後、「御田植神事」として林檎の庭・榎本神社の下・若宮神社の前で八乙女らにより「田植歌」に合わせて田植えの動作(耕したり・苗を植えたりする姿)を再現した「田舞」が奉納されます。
こちらの祭事は平安時代末・1163年(長寛元年)より途切れることなく実施されています。
4月~5月の行事
4月3日:上巳の節供祭(※拝観不可)
時間:10時~
場所:本殿一帯
「五節供」の祭事の1つである上巳の節供祭(じょうしのせっくさい)では、拝観は出来ませんが、古式の神饌を神前にお供えして天下国家の安定や人々の幸せ等がお祈りされます。
4月5日:水谷神社鎮花祭
時間:10時~
場所:水谷神社前
夏場の様々な病気流行を鎮めるための祈りが捧げられる「鎮花祭」では、本殿北側の摂社水谷神社の前で神楽の奉納等が行われます。当日は通常無人の水谷神社に授与所が設けられる他、13時からは室町時代からの歴史を持ち、現在では時事的な話題も盛り込まれる事で知られる狂言の奉納も行われます。
4月下旬頃:小笠原流古式弓術奉納
時間:14時~
場所:若宮神社・林檎の庭
おん祭で行われる「稚児流鏑馬」の稽古を行う弓馬術礼法小笠原流により、境内2か所で武家装束を身にまとった姿で弓術を奉納する「蟇目の儀(ひきめのぎ)」・「百々手式(ももてしき)」が行われます。
5月5日:菖蒲祭(※一部拝観不可)
時間:10時~
場所:本殿一帯(神事)・林檎の庭(舞楽)
いわゆる「端午の節句」の祭事であり、古式の神饌に粽・菖蒲・蓬を添えたものを神前にお供えして天下国家の安定・万民の幸福等を祈ります。儀式の後には舞楽の奉納も行われる他、当日は飛火野で剣道大会も合わせて実施されます。
なお、神饌をお供えする神事の見学・拝観は出来ませんが、舞楽については林檎の庭で行われるため、外側の参拝所から見学・拝観する事が可能です。
5月5日:子供の日萬葉雅楽会
時間:13時~
場所:萬葉植物園内浮舞台
菖蒲祭が執り行われた後には「子供の日」にちなみ、年齢層の若い人々に伝統芸能に親しんでもらう試みとして、萬葉植物園内の浮舞台において「南都楽所」により様々な管弦・舞楽が披露されます。なお、こちらは萬葉植物園の入園料のみで見学可能です。
5月10日:献茶祭
時間:11時~(裏千家が担当の年は10時~)
場所:舞殿
表千家(不審庵)・裏千家(今日庵)・武者小路千家(官休庵)により年ごとに交代で献茶が行われます。献茶の様子は参拝所から見学・拝観が可能となっている他、当日は献茶の儀が終わった後、一般の方も参加可能な拝服席が設けられます。
5月第3金曜日:薪御能「呪師走りの儀」
時間:11時~
場所:舞殿
関係の深い興福寺・春日大社の2か所で行われる「薪御能(たきぎおのう)」は、当初は「魔除けの儀式」として平安時代に始められたとされ、後に「能楽」を取り入れて現在の形へと発展していったとされています。
5月第3金曜には、能楽の中でも最も古式の呪師芸能の形態に基づく「呪師走りの儀」が行われます。
5月第3土曜日:薪御能「御社上りの儀」
時間:11時~
場所:若宮神社拝舎
2日目の「薪御能」では、若宮神社の拝舎において、「御社上りの儀」の奉納が古式に従い行われます。
6月~8月の行事
6月30日:夏越大祓式
時間:15時~
場所:祓戸神社前
各地の神社で行われる「夏」を乗り切るために無病息災を祈る「夏越大祓式(なごしのおおはらえしき)」。春日大社でも祓戸神社前で神事が行われる他、一般の方も参道に設置された「茅の輪」をくぐって無病息災を祈ることが出来るようになっています。
8月7日:七夕節供祭(※拝観不可)
時間:10時~
場所:本殿一帯
五節句の一つとして、旧暦の七夕に行われる「七夕節供祭」は拝観不可ですが、桔梗を添えた古式神饌をお供えし、人々の健康・社会の安定がお祈りされます。
8月14日・15日:中元万燈籠
時間:19時~21時30分頃
場所:回廊一帯(※回廊内特別参拝料金:500円)
回廊一帯に吊り下げられたり参道を照らす各種「燈籠(境内には平安時代から現代のものまで3000基ほどがあります)」が点灯される「中元万燈籠」。2月の節分万燈籠と同様、夜の春日大社が燈籠の光に包まれる美しい風景を見ようと、大勢の参拝者が訪れます。
なお、かなり混雑する場合が多い為、スムーズに順路を進んでいく事が求められる場合があります。
8月15日:中元疫神祭(※拝観不可)
時間:10時
場所:本殿一帯
万燈籠2日目の朝には、拝観は出来ませんが疫病などの災いをもたらしうる疫神(えきじん)を鎮める「中元疫神祭」も執り行われます。
9月~11月の行事
中秋の名月当日:采女祭
時間:17時~
場所:三条通り・采女神社・猿沢池一帯
猿沢池に伝わる悲恋の采女伝説にちなみ行われる「采女祭」は、猿沢池の真横に鎮座する春日大社境外末社「采女神社」の祭事です。当日は「花扇奉納行列・管絃船の儀」といった華やかな儀式が行われ、大勢の観光客が訪れます。
当日は日頃閉鎖されている采女神社の境内・授与所も開かれ、人気の「糸占」の授与等が行われます。
10月9日:重陽節供祭(※拝観不可)・献香之儀
時間:10時~
場所:本殿一帯
五節句の祭事の1つである重陽節供祭では菊花を添えた古式神饌が供えられ、天下国家の安定・万民の幸福等がお祈りされます。
当日は重陽節供祭に引き続いて「香道」志野流家元の奉仕により神前に「献香」が行われます。献香之儀については参拝所一帯からの拝観が可能です。
11月3日:明治祭
時間:10時~
場所:本殿一帯
明治天皇の事績を偲ぶ祭事となっています。神事は拝観不可ですが、その後の舞楽については参拝所一帯から拝観・見学が可能です。
11月3日:文化の日萬葉雅楽会
時間:13時~
場所:萬葉植物園内浮舞台
明治祭が執り行われた後には「文化の日」にちなみ、年齢層の若い人々に伝統芸能に親しんでもらう試みとして、萬葉植物園内の浮舞台において「南都楽所」により様々な管弦・舞楽が披露されます。なお、こちらは萬葉植物園の入園料のみで見学可能です。
11月23日:新嘗祭(※一部拝観不可)
時間:10時~
場所:本殿一帯
新嘗祭(にいなめさい)は、その年の農作物の収穫に感謝を捧げる祭事であり、神事の拝観は出来ませんが、本殿近くの稲垣に懸税(かけぢから)と呼ばれる稲穂が掛けられた風景等をご覧頂けます。
12月の行事
12月15日~18日:春日若宮おん祭
春日大社の1年で、例祭の春日祭よりも規模が大きく・一般的な知名度も高い祭事である「春日若宮おん祭」。
こちらは摂社若宮神社の例祭であり、奈良国立博物館近くの「お旅所」に神様をお遷ししたり、市街地を練り歩く「お渡り式」が行われる等、多数のみどころのある祭事となっています。
12月15日:大宿所詣・大宿所祭・御湯立
時間:13時~
場所:三条通~餅飯殿商店街(大宿所詣)・春日大社大宿所(神事等)
おん祭の一連の儀式の開始を告げる「大宿所祭」は、春日大社の境内からは離れたならまちエリア、餅飯殿商店街内にある春日大社大宿所で執り行われます。
当日はまず13時よりおん祭に奉仕する「大和士(やまとざむらい)」らが三条通から大宿所までの区間を行列します。
その後大宿所においておん祭が無事平穏に行えるように祈願する「大宿所祭」が実施され、清めの湯を撒く「御湯立」の儀式も3回実施されます。
12月16日:大和士宵宮詣・田楽座宵宮詣・宵宮祭
時間:14時30分頃~
場所:若宮神社・本殿
16日には、大和士・流鏑馬児(やぶさめのちご)が神事が無事に行えるように若宮神社にお祈りする「大和士宵宮詣」、「田楽座」が本殿と若宮神社で田楽を奉納する「田楽座宵宮詣」、本格的な神事に入る前に「御戸開(みとびらき)の神饌」を神前に供え祭事が無事斎行出来るように祈りを捧げる「宵宮祭」等が行われます。
12月17日:遷幸の儀・お渡り式・お旅所祭など
時間:0時~(遷幸の儀)・12時~(お渡り式)など
場所:若宮神社~お旅所・表参道・奈良公園~三条通り一帯等
17日は、若宮神社から神様が一時的に「お旅所」へお遷しされ、様々な神事が行われる祭事の「本番」とも言える日となります。
一般に「おん祭」と呼ばれるのはこの日であり、当日は日付が変わるとともに神様をお遷しする遷幸の儀から始まり、暁祭・本殿祭・留守事・お渡り式・南大門交名の儀・松の下式・競馬・お旅所祭・稚児流鏑馬・還幸の儀等の祭事・儀式が終日執り行われます。
とりわけ12時(正午)からの「お渡り式」は奈良公園から奈良駅一帯を通り、三条通り経由で練り歩く伝統的な「行列」であり、華やかなその姿を目にしようと、大勢の観光客が訪れます。
12月18日:奉納相撲・後宴能
時間:13時~
場所・お旅所
主要な祭事の翌日は、お旅所で奉納相撲と能・狂言の奉納が行われます。これで「おん祭」の一連の行事は全て終了となります。
12月28日:御煤払式(※拝観不可)
時間:10時~
場所:本殿など
東大寺における「お身拭い」等と同様、春日大社でも社殿のほこりを取り除いて清める「御煤払式」が行われます。なお、拝観は不可となっています。
12月31日:年越大祓式
時間:15時~
場所:祓戸神社前・水谷川
年越大祓式(としこしのおおはらえしき)は、毎年大晦日に1年間に積み重なった罪やけがれを祓う神事です。当日は祓戸神社前でのお祓いの他、境内を流れる水谷川(みずやがわ)に、全国から集められた人や車を象った「形代」を流す儀式も行われます。