奈良市の人口変化・推移・予測について(データから見る奈良市)

こちらの記事では、「奈良市」を「データ」から見ていくという趣旨の下、「奈良市の人口」というテーマについて、人口の長期的推移や将来の人口予測の状況などから奈良市という街の過去・現在・未来を考えていきます。

奈良市は昭和中期~後期における「郊外住宅地」の開発による極端な人口増加という経過を経つつ、平成時代は中盤からは人口減少局面へと入る「成熟期」へと進み、令和の時代には急速な人口減少段階を迎える「衰退期」に入りかねない状況となっています。

奈良といえば「国際文化観光都市」として各種世界遺産が有名な都市ですが、内実を見れば「都市機能」は「観光経済」というよりは「郊外住民」の人口規模と比較的豊かな資産保有状況によって成立してきたことは否定できません。

本サイトは「奈良市の歴史・観光」を詳しくご案内する内容が基本ですが、この記事では少し踏み込んで奈良市というまちの人口問題について、じっくりと検討してみたいと思います。

現在の奈良市の人口は?

奈良市の直近の人口(2019年現在)は、

35万5976人(2019年12月1日・住民基本台帳人口・奈良市公式サイトを参照)

となっています。

また、世帯数は16万3420世帯となっており、1世帯当たりの平均住民数は2人を越しています。

人口規模としては、和歌山市・大阪府高槻市・埼玉県川越市・東京都新宿区・東京都北区などとほぼ同じ規模であり、県庁所在地では大津市・長野市・宮崎市・前橋市などと似たような人口となっています。

単純なスケールとして見ると、「大きくも小さくもないまち」という表現がぴったり似合うような人口規模となっています。

なお、地域ごとの人口を見ると、一応は奈良市の中心部とされている「近鉄奈良駅・JR奈良駅」周辺は10万人規模の人口であるのに対し、西部の郊外住宅地(学園前・富雄・登美ヶ丘・高の原・西大寺)周辺はすべて合計すると20万人程度の人口規模となっており、郊外エリアの人口が多くなっています。

奈良市の人口の長期的推移について

さて、奈良市の人口については、これまではどのような増え方・減り方の経過を辿ってきたのでしょうか。

1980年(昭和55年)30万5614人
1985年(昭和60年)33万5468人
1990年(平成2年)35万7187人
1995年(平成7年)36万8039人
2000年(平成12年)37万4944人
2005年(平成17年)37万0102人
2010年(平成22年)36万6591人
2015年(平成27年)36万0310人
2019年(平成31年)35万6352人

※2019年の人口(4月1日)現在のみ住民基本台帳・それ以外は国勢調査データ
※奈良市は大学生が住民票を置いたまま大学進学に伴い転居する場合が多いこと等もあり、住民基本台帳による人口とは1千人~3千人程度の差異(国勢調査の方が少ない)が見られます。


奈良市の人口については、平成前期までは増加基調を辿り、2000年頃からは減少に転じています。

減少ペースとしては年間1000人~2000人程度で推移しており、次回の国勢調査(2020年)においては現在のペースを考慮すると35万人少々の人口規模になることが推定されます。

昭和の中期~後期には市内西部の郊外住宅地の人口が急増した歴史があり、人口増加分は「学園前」・「富雄」・「高の原」エリアなどの住宅開発・団地開発などが下支えしてきた奈良市は、郊外の開発余地がなくなり、オールドニュータウン化が進むにつれて人口減少局面へと入っています。

特に戸建て住宅やUR賃貸住宅の多い高の原駅周辺の平城ニュータウン、また近鉄学園前駅の南側の住宅地の人口減少比率は高めとなっています。

奈良の典型的な郊外住宅地(富雄団地から学園前方面を望む)

また、旧市街地も含めた地域ごとの人口動向を見ると、「きたまち」・「ならまち」エリアにあたるJR奈良駅・近鉄奈良駅の北東側・南側エリアについては人口が平成の間に20パーセント以上の割合で減少している地域が少なくありません。

山間部についてはそのそもの人口が少ないため統計上は大きな指標にはなりませんが、柳生エリア・田原エリア・月ヶ瀬エリアなどの人口は、最も多い時期から半減以下になっている地域、ほぼゼロに近づいて行っているような地域も少なくありません。日本全国の過疎地域と同様、相当厳しい情勢となっています。

なお、近年は人口減少局面ながらも「駅前マンション開発」については比較的堅調に行われているため、大和西大寺駅・学研奈良登美ヶ丘駅周辺ではかなりの人口増加が続いているところもある他、JR奈良駅の西側エリア・近鉄新大宮駅周辺の人口規模も増加基調が見られます。

奈良で最も若年世代が多い「学研奈良登美ヶ丘駅」周辺

都心回帰や「駅前」への注目が集まる状況下では、奈良市内でも人口の大きな「格差」が生まれている状況が確認できるのが現状と言えます。

これらを「交通手段」で見ていくと、概ね「バス利用」が必須となるような地域や、「自家用車以外のまともな交通手段」がないような地域は人口減少、「駅徒歩圏」のエリアでは人口増加もしくは減少率の抑制が見られるという状況となっています。

将来の推計人口について

人口減少が進みつつある奈良市ですが、将来の人口についてはどのような推計がなされているのでしょうか。

奈良市の第4次総合計画(後期基本計画)及び国勢調査に基づくの推計人口は以下の通りとなっています。

参考:第2次奈良市地域福祉計画(第2章 奈良市をめぐる状況)

2020年(令和2年)35万0000人
2025年(令和7年)33万4900人
2030年(令和12年)31万7800人
2035年(令和17年)29万8800人
2040年(令和22年)27万8900人

かつての推計では、2020年を迎える段階では34万人、2035年では27万人台という推計もありましたが、2020年でも人口は35万人を維持していることを考慮すると、人口減少ペースは10年前の予測よりは抑えられている状況にあります。

今後は予想以上の出生数の減少などもあり、減少ペースが拡大する可能性がありますが、現在の人口比率などから考慮すると、年を重ねるごとに推計が改善・推計よりも多めに推移する傾向が近年は見られることから、推計通りに2035年の時点で人口30万人を切るかについては不確実性が高いと言え、むしろ予想よりは堅調な人口規模を維持する可能性もあります。

もっとも、大幅な人口減少局面がほぼ永続的に続くことは紛れもない事実となっており、もし減少ペースに変化がない場合は、2060年には20万人を切るような状況、2100年には10万人を切るような状況も示唆されています。

人口減少時代の奈良市はどうなるのか?

奈良市は、かつて昭和中期~後期に急激な人口増加を成し遂げた際には、基本的に人口増加分は「大阪のベッドタウン」としてのみの機能を果たすような形で発展してきました。

つまり、古くからの街並み・市街地の人口が急増したわけではなく、近鉄や有名不動産会社などが開発した戸建ての住宅地や、かつての公団住宅(現在のUR)の大規模団地群など、「郊外」のニュータウンとしてのまちづくりが人口増加を支えてきました。

建物や都市基盤は同じままで訪れる人口減少時代には、「分厚い郊外住宅地」が「極端なオールドニュータウン化・空洞化」して「ゴーストタウン」化していく過程との格闘になることは言うまでもありません。

それを促進するように、平成以降の住宅開発は郊外住宅地からJR奈良駅・新大宮駅・大和西大寺駅・学研奈良登美ヶ丘駅の近く等の「利便性の高いマンション開発」へ移行し、こちらについては未だ一定の勢い・需要を確保し続けています。駅前の再開発やマンション開発が進む中で人口減少が進むと、駅から離れた住宅地・団地の衰退ペースは一層加速されてしまいます。

なお、奈良市については世界的な「観光都市」という側面があるため、退職後のリタイア世代がマンションを購入して移住してくるような傾向が見られます。現在は極端な統計的な傾向は見られませんが、今後富裕層の高齢者の移住が更に増加するようなことがあれば、高齢化比率の高まりに一定の影響を及ぼすことが推定されます。

奈良市については世界的観光都市+大阪の大ベッドタウンという性質上、単なる「地方都市」とは異なるかなり利便性の高い「近鉄電車」の存在・実際の利用者数よりはかなり多めに設定されている奈良交通のバス便(朝7時台には150便以上が発着する学園前駅)など、現在でも都市の基盤インフラについては異例の利便性が確保されています。

近鉄「学園前駅」は現在も郊外住宅地行きのバスが多数発着

今後は駅前の人口規模が一定程度維持されつつ、駅から離れた地域の衰退が一層表面化する中で、公共交通網をどのように維持・拡充していくのか、またそのような地域の住宅ストックをどのように活用していくのかが大きなテーマとなることが推定されます。

なお、公共交通機関に関しては簡易な協議会などはありつつ、実質的には「近鉄」と「奈良交通」に現在に至るまで自由放任に近い形で一任してきたという状況がありますので、今後は奈良市として観光振興に留まらない交通政策を明確に示していくことが急務と言えます。

コンパクトシティの観点・オールドニュータウン対策を着実に遂行していくという意味合いでは、奈良市はまず「交通政策」の再検討・維持拡充・再編を行うことが急務と言えるのではないでしょうか。

まとめ

奈良市の人口は、昭和中期~後期にかけて郊外のニュータウン開発に伴い急増した後、2000年ごろからは減少局面へと入っています。

最盛期の人口は37万5千人程度、現在(2019年)は35万5千人程度となっており、現在は年間1000人~2000人程度のペースで減少が進んでいます。今後は一層の高齢化により減少ペースの拡大が推定される状況です。

人口予測については、10年前の推計よりも最新の推計人口では減少ペースに改善が見られており、現在の実際の減少ペースは推計よりもややゆるやかな傾向があるため、あと15年程度は30万人台を維持する可能性が高くなっています。

人口減少局面ではこれまでに大量に建設された「郊外」の「住宅ストック(特に一戸建て)」の「家余り」が問題化する可能性が高く、単なる「観光都市」というよりは「オールドタウン」としての都市政策、とりわけ民間事業者に一任してきた公共交通網の維持などが重要な局面へと入ってきています。