奈良市の観光客数の変化・推移について(データから見る奈良市) | 奈良まちあるき風景紀行

奈良市の観光客数の変化・推移について(データから見る奈良市)

奈良の基礎知識

日本有数の国際文化観光都市であり、世界的な知名度を有する古都「奈良」。こちらの記事においては、奈良を訪れる観光客数という観点(データ)から、奈良という都市の現在までの状況や将来の状況について考えていきます。

奈良市は、近年数年に渡り「バブル」と言える勢いで外国人観光客数が増加を続け、特定の観光地のにぎわい・混雑は増す一方でした。しかし、2019年以降は韓国からの観光客の減少などに伴い状況が少しづつ変化し始め、2020年からは新型コロナウイルスによる壊滅的な影響を受けているため、現在はほぼゼロベースから観光を検討せざるを得ない状況も見られます。

なお、本記事で利用する全ての観光客数に関する統計データは、奈良市の「奈良市観光入込客数調査報告書」のデータを参考にしています。

現在の奈良市の観光客数は?

奈良市を訪れる観光客の数(入込観光客数)については、データ上の最新としては、

2018年においては「1702万5千人」となっています。

このうち「日本人」は1437万4千人・外国人は265万1千人であり、観光客数の約15.6%は国外からの「インバウンド」需要に伴うものとなっています。

観光客数の合計として見ると、この数字は5275万人の京都市の3分の1程度、3538万人の神戸市の半分程度となっています。人口規模から考えると奈良は京都・神戸の4分の1程度ですので、都市の規模に対する観光客数は京都よりも多くなっています。

また、奈良市内のみに限ってみれば、京都や神戸と比べると東大寺・薬師寺・平城宮跡をはじめ観光地が奈良市内の比較的狭いエリア(5キロ四方程度の区域)にほぼ全てが密集(奈良県全体として見るとかなり分散していますが)しているため、観光客の分散具合・面積などから考慮しても奈良市はかなり「密度の高い観光地」と呼ぶことができるでしょう。

実際に、近鉄奈良駅・JR奈良駅・東向商店街・三条通り沿い・東大寺や春日大社の参道・興福寺境内といった観光客の主要動線については、少なくともコロナ前の時期には、京都の観光地とそう変わらないような人混みが見られるようになっています。

奈良市の観光客数の長期的推移

さて、現在2018年現在では約1702万人の観光客数は、これまでどのように推移してきたのでしょうか。

簡単にこの10年ほどの数字を見てみることにしましょう。

観光客数合計うち外国人観光客
2009年1396万6千人40万7千人
2010年1841万5千人(平城遷都1300年祭の開催による増加)62万9千人
2011年1313万5千人17万4千人(東日本大震災による減少)
2012年1332万4千人26万7千人
2013年1379万5千人43万5千人
2014年1414万3千人63万人
2015年1497万6千人97万5千人
2016年1554万3千人157万6千人
2017年1631万4千人199万人
2018年1702万5千人265万1千人

データからわかることは、この数年は急速に観光客数が増加しているという点です。

特に外国人観光客については、東日本大震災のあった2011年の「底」からは15倍程度にまで増加しており、2014年頃からはまさに「バブル」の様相といってもよい増加の勢いを見せています。

加えて、インバウンドに留まらず国内からの観光客数についても、外国人観光客数を引いた数字で考えると、近年はおおむね微増の傾向が見られます。

「奈良市の観光客数」については、ここ数年、新型コロナウイルスの影響を受ける前については、人数ベースでは明らかに「景気の良い状況・ちょっとしたバブル」と言っても差し支えない訳なのです。

ちなみに、外国人観光客数については、国内観光客と比べ「季節・月」ごとの変動が少な目という特徴があります。そのため、近年は「オフシーズン」であった1・2月などの観光客数が年間平均に近づく平準化の傾向も見られます。

インバウンド需要を巡っては、日本一の観光都市とも言える京都市については、コロナ前より「観光公害」と呼ばれる状況に日本人の国内観光客数が明らかな減少傾向を見せています。

しかし、奈良については観光利用が多いバス路線が限定されていること(市内循環線)、京都ほど観光客向けの店舗が多くないこと、未だ夕方以降の観光客数が少ない(17時を過ぎると大幅に減少する)=「通勤・通学」や「日常生活」への影響はやや少ないことなどもあり、観光客が訪れることによる極端な混乱は今のところ見られないまま推移して来ました。

むしろ、長らくの間「京都・大阪から奈良への分散」が呼びかけられて来たほどなので、インバウンドによる「バブル」が進んでからも観光客を受け入れる余地が一定程度残されていたと考えてもよいでしょう(もっとも、正倉院展期間中などは交通機関・道路状況等に影響が発生することもありますが、こちらはインバウンドのみから生じた問題ではありません)。

新型コロナウイルスにより観光が大きな打撃を受けるまでの期間、その観光客増加は「バブル」と呼ばれてきたものの、奈良については社会的影響はそれほど大きくなかったのです。

今後はどうなっていくのか?

観光客の推移を考える場合、2020年の新型コロナウイルス流行によって観光客の動きはほぼ「ゼロ」になってしまいました。そのため、現在の奈良は再び「一からのスタート」を余儀なくされるような状況です。今後を考慮する場合は、様々な要素を複合的に検討する必要があります。

例えば、外部環境を見ると、いくつかの傾向が見えてきます。

・仮に数年以内にこの流行による影響が無くなったと仮定した場合でも、一般論としては「内需」に必ずしも明るい材料はありません。長期的には少子高齢化の一層の進展に従い「基礎トレンド」と言えるような観光需要、「内需」で下支えする部分は確実に減っていくことが常々指摘されています。

・一方で、内需については人口減少や度重なる増税、政府による財政出動の抑制などにより経済が弱含みを見せている中でも、身近な「観光・旅行」に関する部門は比較的堅調に推移してきた現状もあります。

また、経済が弱含む中では、多額の支出を要する分厚い観光旅行よりも、身近なお出かけの延長として電車で奈良を訪れる。といったような観光の方がニーズが大きいという側面もあります。コロナ禍による「マイクロツーリズム」の見直しも、京阪神エリアにおける「奈良」の存在感を高める可能性があります。

・コロナ後の「外需」という意味ではこちらも一般論として見れば、韓国と台湾は既に人口減少時代に入っている他、中国も日本から遅れること30年ほどで少子高齢化・人口減少のうねりが訪れることが予想され、観光客数の右肩上がりは永続的なものとは言えません。また、韓国については二国間関係上の問題もあるため、コロナ前からの動向でも極端な減少が見られることは周知の通りです。

・もっとも、外需については当面の期間についてはアジア諸国における更なる中間層の拡大、旅行に訪れる年齢層の人口拡大が推定されていること、またベトナム・インドネシア・マレーシア・シンガポール・タイといった東南アジア諸国やインドなどからの観光客の増加もまだ期待できるということから、明るい材料もあります。

内需・外需ともに、今後明らかに目減りしていくであろう内容と、思いのほか堅調であるポイント、また今後も期待できる需要などが入り乱れ、アフターコロナの観光客の動向は必ずしも想定することは出来ません。

しかし、現時点では概ね以下のような想定を示す事は出来るでしょう。

新型コロナウイルスによる影響が10年単位などに波及しない限りは、再度インバウンド需要・奈良を訪れる外国人観光客数の増加が期待されます。

数年以内に新型コロナウイルスの問題が解消することがもしあれば、遠距離を移動する「国内観光客」が再び戻って来る可能性も十分にあるでしょう。

今後観光客数が回復したとしても、回復期の反動需要を除いては、かつての「インバウンドバブル」を大きく超えるほどの数字は見られず、少なくもないが多くもない、落ち着いた状況になるのかもしれません。

「お出かけ」需要の本来の底堅さを考えれば、京阪神大都市圏各地から奈良へのお出かけは、感染状況が沈静化するタイミングからは、むしろ増加する可能性もあります。

観光産業は「平和産業」の象徴とも言われるように、その経済規模や観光客数は、「地域の魅力」以前に新型コロナウイルス等の「世界的情勢・自然現象」に左右されるものです。今後の「奈良観光」も地元の頑張りや経済政策以前に、全ては「ウイルス・感染対策(治療法・ワクチン)次第」となっています。

なお、奈良は各観光地間の交通機関については未だ改良の余地がある状況かもしれませんが、比較的狭い範囲に主要観光地がまとまっているというメリットがあります。また先述したように、露骨な「観光公害」が発生する可能性が生まれるほどの人口規模のある都市ではありません。

コロナ問題によって今後の計画が変更になる可能性も大きくなっていますが、奈良については今後高級ホテルが相次いで開業が予定されている他、平城宮跡周辺の観光施設が更に整備されたり、大阪の夢洲との直通アクセスが検討されていたり、JR線で西ノ京エリアへのアクセスが容易になる「八条新駅」の建設が予定されていたり、京奈和自動車道の奈良市内区間の整備がなされたり、超長期的なスパンではリニア中央新幹線が「奈良市付近」に駅を設ける計画になっていたりするなど、観光インフラという面では次々に新しい環境が整備されていきます。

その点では、今後については新型コロナウイルスの影響がどのくらいの期間(1~2年なのか、数年なのか、それとも半永続的なものなのか)続くのかなど、不透明な点は多いとはいえ、コロナ問題が仮に解消した場合には、再びしっかりとした観光インフラの下に、大勢の観光客をお迎えする事が出来るのではないか。とも思われます。

全てはウイルスを取り巻く環境次第。平和産業としての観光は、こういった宿命的な限界性を持っている一方、コロナ問題がもし緩和する場合には、そこまでの悲観は必要が無い。というのが実態と言えるのではないでしょうか。

真に大きな問題は、状況が改善した場合に観光客数が回復するのか。ではなく、状況が改善するまでに既存の観光事業者が存続可能か。という財務的な体力を巡る問題のみに収れんするとも言えるのです。

まとめ

・奈良市の観光客数は、2018年現在では年間1702万5千人、うち外国人観光客数は265万1千人となっています。

・近年は新型コロナウイルスの流行前までは観光客数は増加を続けており、外国人観光客数過去10年で最も少なかった2011年からは15倍ほどに増加しています。

・日本国内の「内需」としての観光客数についても、新型コロナウイルスの流行前まではこの10年ほどは概ね増加傾向で推移しています。

・2020年以降の観光客数は「新型コロナウイルスの流行」に伴い、ゼロベースからの再考が必要なまでに減少し、壊滅的なダメージを受けています。一方、今後については新型コロナウイルスの流行がどの位続くのかによって状況は異なります。例えば、数年以内に新型コロナウイルス問題がもし解消するのであれば、問題が解消した後には観光客数がこれまでの水準に回復し、元のにぎわいが戻る可能性も十分にありますが、外部環境は複雑ですので、「インバウンドバブル」の再来を求める必要はないかもしれません。