近鉄電車は「どのくらい混むのか」(混雑状況を各路線・各列車ごとに解説)

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日本最大規模の「私鉄」として奈良県を中心に大阪~名古屋までの広い範囲をカバーする「近鉄電車(近畿日本鉄道)。

近鉄電車は、比較的ローカルな路線でも本数が多く、奈良という大阪のベッドタウン・世界的観光地を基盤とするため利用者も比較的多くなっています。

こちらの記事では、そんな近鉄電車の各路線系統ごとの「混雑状況」について、「座るためのコツ」などと合わせて解説していきます。

近鉄電車は「奈良だからすべて田舎のローカル線」と勘違いされる場合も時にありますが、利用状況などを見れば、田舎の電車というよりは首都圏の東武・西武などに比較的近い存在となっており、混雑についても比較的激しい混雑が生じる場合もあります。

大阪難波~鶴橋~生駒~奈良方面(難波・奈良線系統)

最も利用が多い路線です

近鉄電車のドル箱路線である大阪~奈良を結ぶ「近鉄難波・奈良線」については、本数も多く・近鉄各路線の中で最も利用者も多いため「混雑」は最も激しくなります。

現在は阪神なんば線と直通し、近鉄奈良~神戸三宮間で快速急行が20〜30分おきに運行されているため、奈良県~兵庫県を移動する長距離の利用者も見られます。

奈良線については、京阪神の阪急・阪神・京阪線、また首都圏の主要私鉄などに近いくらいの利用があると考えて頂いてかまいません。

通勤ラッシュ時はかなりの混雑・10両編成の運行も

まず、朝の通勤ラッシュについては奈良という一見地方・田舎と見られることも多い空間から「10両編成」の電車(快速急行・一部有料特急)が次々に運行されます。

10両編成の「快速急行」には、大阪へと通勤・通学する大勢の奈良市民・生駒市民などが乗り込み、10両であってもやや窮屈になるほどの混雑状況が人口減少時代の今現在もなお見られます。

もっとも、一番利用が多い時代(昭和の終わり・平成の初頭)と比べるとこれでも朝の利用者は半分程度にまで減っています。それでも相変わらず激しい混雑があるということは、かつての混雑は現在の首都圏を上回る水準であったということにもなるのです。

混雑については、奈良方面からの場合、JR線と乗り換え可能な鶴橋駅の連絡改札口に近い「前よりの車両」が特に混雑するようになっており、さすがに首都圏の通勤ラッシュには及ばないかもしれませんが、身動きは取りづらいほどの混雑ぶり・1両あたり状況によっては150人程度は乗車しているであろう状況となります。

なお、当然ながら朝の大阪から奈良方面へ向かう電車は大阪方面行きと比べるとすいています。

昼間時はそれほど混まず・土日祝日は増結で座りやすく

昼間時については平日は6両編成の運行が基本ですが、奈良~大阪・大阪~奈良方面ともに混雑は少なくなります。但し鶴橋駅・生駒駅などの途中駅からの場合は時間によっては座れない場合も多々あります。

夕方の帰宅時間帯については、大阪難波方面からの電車は相応に混雑し、難波からでも座れないことが多々あります(鶴橋駅からはほぼ100%座れません)。2022年のダイヤ改正で、夕方の快速急行が10両から8両に「減車」されたため、体感的な混雑はテレワークなどがある程度普及する前のコロナ前と同等程度になっています。

観光利用については、春や秋の観光シーズン・初詣・奈良での各種イベント開催時には一定の混雑が見られますが、一般論としては通勤ラッシュを上回るような状況にはなりません。基本的には平日でない場合は昼間時の運行両数も一部多くなる(土日祝日は昼間に8両編成あり)場合があり、両数が多い列車は座れる可能性が高くなります。

なお、奈良線系統については昼間時の運行は多くありませんが、通勤時間帯を中心に運行される有料の「特急」は満席になることは非常に少ないため、絶対に座りたい場合は特急のご利用もおすすめです。

大阪上本町~鶴橋~大和八木~名張方面(大阪線系統)

近鉄奈良線とは異なり、大阪から名古屋・伊勢志摩方面への特急電車が多数運行されている「大阪線」。大阪線は大阪上本町駅始発で五位堂・大和八木・榛原・名張方面へ参ります。

大阪線については本数は奈良線系統よりも少な目ですが、混雑については、概ね「奈良線」よりは少しましなケースが多くなります。

もっとも、大阪線沿線もベッドタウンとして人口が多いため、朝夕には10両編成・8両編成の快速急行・急行が運行され、こちらについては朝を中心に窮屈になるほどの混雑ぶりとなります。

一方、昼間時については急行電車も含め、後述する近畿大学関係を除き、奈良側・大阪側のどの駅からでも座れるような場合が多くなります。

また、大和八木より東の区間は利用が減りますので、この区間については朝の通勤時間帯の一部列車を除き、ほぼ終日座れる可能性があります。

なお、大阪側の沿線(長瀬駅)近くには関西最大の学生数を誇る「近畿大学」がありますので、ラッシュ時を除く最混雑区間は鶴橋駅~長瀬駅間の普通電車となり、午前は主に長瀬方面を中心に、午後は主に鶴橋方面を中心に、こちらはほぼ終日一定の利用が見られます。

特急電車については、観光客が集中するといった一部例外を除き「満席」になることはほぼないような輸送力となっているため、混雑を心配する必要は大きくありません。

大阪阿部野橋~藤井寺~橿原神宮前~吉野方面(南大阪・吉野・長野線系統)

近鉄電車の中では線路の幅も違い、他路線とは違うターミナル(天王寺・阿部野橋)となっている「南大阪・吉野・長野線」

こちらは大阪府内の南東部(南河内エリア)を中心とした通勤・通学利用や飛鳥・吉野方面への観光利用の多い路線であり、決してローカル路線とは言えない輸送量を誇ります。

また、南大阪線については、河内長野・富田林方面を結ぶ近鉄長野線との間で準急・急行が直通することもあり、長野線沿線の大学関係者(大阪芸術大学など)の利用も大変多くなっています。

通勤ラッシュについては 南大阪線は10両編成は運行できず、8両編成が限界となっていますので、 藤井寺駅・河内松原駅など大阪府内の主要駅から利用する場合については奈良線・大阪線と大差ない混雑ぶりとなることもあります。

昼間時については、大学生の利用なども多いため時間帯によっては座れない場合もありますが、大阪阿部野橋駅からの場合発車直前の乗車でなければ座れる場合も多い他、その他各駅からのご利用の場合も、阿倍野橋から遠いほど座れるケースの方が多くなります。

なお、奈良県内吉野・飛鳥方面への観光利用については、日本随一の桜の名所である「吉野山」へのお花見シーズンには吉野行きの電車がかなりの混雑となり、吉野駅からのお帰りの場合についても、吉野駅出発の時点で座れないレベルの混雑が見られる場合も多くなります。

また、特急についても両数が少ないこともあり、通常はほぼ空気を輸送するほどにガラガラであっても、観光のご利用が集中した場合は直前には満席となることもあります。

京都~大和西大寺~橿原神宮前方面(京都・橿原線系統)

京都から奈良県内各地を結ぶ最も利便性の高いアクセスルートである近鉄「京都・橿原線」。京都駅からは近鉄奈良駅・橿原神宮前駅・天理駅行きの急行がそれぞれ運行されており、様々な場所に乗り換えなしでアクセスすることが可能です。

混雑については、朝夕については京都方面のみならず逆方向のけいはんな学研都市方面も含めた通勤・通学利用が多く、京都府内の区間については状況によっては奈良線・大阪線に匹敵する混雑ぶりとなることも多くなっています。但し、2022年のダイヤ改正により、とりわけ夕方ラッシュ時間帯の急行電車が増便されたため、その分混雑は緩和される傾向にあります。

昼間時についてはどの列車も大きな混雑は見られず、大学生が多く利用する一部列車を除いては座れる場合が多くなります。一見混んでいる場合も、車両の位置により立ち客が多い車両と、ガラガラの車両に分かれている場合も目立ちます。

土日祝日についてはルートの性質上、観光利用の非常に多い路線ですが、特急の利用も多いため、急行電車が観光客で埋まるような混雑になることは特殊なケースを除き基本的に少なく、概ねストレスなくご利用可能です。

また、特急については京都駅を約15分おきなどに発車するダイヤとなっており、観光客の利便性が非常に高くなっています。特急の利用者は比較的多くなっていますが、本数が多いために満席になることは通常ほぼありません。

名古屋~四日市~津~宇治山田方面(名古屋・山田線系統)

近鉄電車の中でも大阪圏ではなく名古屋圏を走る路線である「名古屋線・山田線」系統。こちらの路線は三重県内や名古屋等を結ぶ通勤・通学利用、また東京方面などから伊勢志摩エリアへの主要アクセス路線として観光客の利用も多くなっています。

混雑については、昼間時については三重県内も含めて全体を平均して見れば、大阪・奈良・京都方面の主要路線と比べると概ね抑えられたものとなっています。

しかし、朝夕の通勤ラッシュについては本数が非常に多いわけでもなく、特急以外の両数は6両以下、普通や準急は3両などが基本ですので、名古屋に近い区間については、場合によっては近鉄電車各路線の中で特に混雑が激しい状況となっているとも言えます。

なお、名古屋から伊勢志摩への移動については特急の利用が基本となるため、急行以下の電車については、通常のご利用による混雑はあっても、観光利用に伴う混雑はほぼ見られません。

また、特急については観光シーズンなどに利用が集中する場合は混雑するケースがありますが、本数が多いため、満席になるようなことは非常に少なくなっています。快適に移動したい場合は、特急電車のご利用が最もおすすめと言えるでしょう。

学研奈良登美ヶ丘~生駒~長田~地下鉄中央線方面(けいはんな線)

近鉄電車各路線の中で最も近年に開業した路線であり、大阪メトロ中央線と直通運転をしている利便性の高い「けいはんな線」

こちらは奈良県生駒市・奈良市・京都府精華町などのベッドタウンにお住まいの方やけいはんな学研都市の研究施設等への通勤者が利用する路線であり、近鉄各線にありがちな観光利用というものはほぼ完全にゼロとなっています。

混雑については、朝夕の通勤・通学利用に限り見られ、昼間時はガラガラの電車が多いなど、極端な混雑はほぼ見られません。

朝のラッシュ時については、奈良県内の各駅からであれば座れることも多くなっていますが、新石切・吉田・荒本駅など大阪府内(東大阪)の駅からは座れない場合が多くを占めます。

また、夕方については大阪メトロ中央線の各駅からは、コスモスクエア駅・大阪港駅などからでない限りは、ほぼ座ることができません。

最も「通勤路線」らしい特徴となっているのが「けいはんな線」と言えるでしょう。

その他路線について

近鉄電車には、その他にも生駒線・田原本線・御所線・湯の山線・鈴鹿線など主要路線から支線のように伸びる路線があります。

これら路線については、特に生駒線、またそれ以外の路線についても朝夕は座れない程度に一定の混雑が見られますが、昼間時などは概ねどこからでも座れるような状況となっています。

但し、ローカルな路線であるほどに両数が少なく、また沿線高校などの利用比率が相対的に高くなりますので、学生の通学・帰宅時間には乗客がほぼ学生だけであるにも関わらず、相応の混雑状況が見られるケースがありますのでその点はご留意下さい。

まとめ

以上、日本最大規模の私鉄「近鉄電車」の「混雑状況」について解説してきました。

首都圏などの極端なラッシュ時の混雑と比べると、どの路線でも多少はましな場合が多い近鉄電車の混雑状況ですが、人口減少社会が著しい近鉄沿線であっても、未だ奈良線・大阪線系統の朝ラッシュ時には、身動きがやや取りにくいほどの混雑状況になる場合が多くなっています。

また、近鉄電車は観光利用が日本一多いと思われる鉄道会社となっており、観光シーズンには観光客の動きに応じて一定の混雑状況が見られることもあります。

近鉄電車の場合、観光利用の多い路線であれば別途特急料金が必要な「特急」の運行本数が多く、また特急は一部のケースを除き満席にならないような輸送力が確保されている場合が多いため、確実に「座りたい」場合は特急をご利用頂くのが最も手っ取り早い方法といえるでしょう。