【冬】奈良県内の「雪」事情はどんな感じ?(地域ごとに違う冬の気候)【積雪・凍結】

自然・気候

数多くの世界遺産・国宝に指定された観光地を有する「奈良県」。奈良県は滋賀県とともに近畿地方の中では海に面していない県となっており、「内陸」特有の夏は暑く、冬は寒い気候が特徴となっています。

こちらのページでは、奈良県の四季の気候の中でも「冬」の「雪」について解説していきます。

奈良は一般に「雪」のイメージは余り持たれない場所であり、実際に奈良市街地などで積雪が見られることはそれほど多くはありませんが、県内でも場所によっては雪が多くなる場所や、一度積もるとなかなか雪が解けにくいような場所があったりするなど、決して雪と無縁の地域ではありません。

奈良盆地一帯の「雪」は?

奈良で約20年ぶりの大雪となった2014年2月14日の奈良県庁前

奈良県内でも「平地」のエリア、奈良市・橿原市をはじめとした主要都市のある「奈良盆地」一帯については、「雪」は決して多くはありません。

冬に雪が舞う程度の天気になることは珍しいとは言えませんが、「積雪」についてはほぼ「ゼロ」の年もあり、もし積もっても多くて年間数日程度しか積雪は見られません。

また、積雪量についても10㎝を超えるような積雪は、特に市街地周辺では数年に1回程度しか見られません。2014年の大雪では、奈良市で15㎝・橿原など中和エリア周辺では20㎝程度の積雪となり「大雪警報」も発令されましたが、このような積雪になることはかなり稀となっています。

なお、盆地一帯でも山辺の道沿いや桜井市・明日香村などは山間部に近いため、大きな差はないものの奈良市などより少し雪が多くなる傾向があります。

上記のように、数年に1度程度の大雪や山麓部などの積雪可能性などはあるとはいえ、全体としては雪がかなり少ないため、奈良盆地一帯は大まかにいうと、極端に雪対策・雪に対する警戒が必要なエリアではないということになります。

すなわち、観光に訪れて「雪景色」が見たいといっても、見られる可能性はかなり低いと言わざるを得ないのです。

もっとも、少ない頻度であっても積もった際には交通などに大きな影響が出ます。また、奈良は京阪神の都心より寒い場所ですので1㎝程度の積雪・ごくわずかな雪化粧程度であっても、気温が氷点下の場合などは路面凍結が発生し運転がかなり危険な状態になりやすい状況も見られます。

大阪・神戸都心などで路面凍結になることはめったにありませんが、奈良の場合はそれら都市部と比べると路面凍結がやや生じやすい場所となりますので、その点は十分にご注意下さい。

大和高原・宇陀エリアの「雪」は?

雪が少ない「奈良盆地」エリアからわずか10㎞ほどしか離れていませんが、標高の高い大和高原エリア・宇陀エリアでは気候は大きく異なります。

こちらについては、毎年ほぼ必ず積雪が見られ、雪が多いような年は、積雪が見られる日数が年間10日を超えるような場合も見られます。冬の間ずっと雪に覆われるという訳ではありませんが、特に標高が高いエリア(標高500m以上など)では、寒い年には大雪が降ったあと、日陰を中心に比較的長期間積雪が残ったりすることもしばしば見られます(高見山など登山を要する標高の高い山では根雪の場合も多い)。

また、特に注意が必要な点としては、奈良盆地一帯では完全な「雨」であった場合でも、大和高原・宇陀エリアでは積雪となるほどの雪になる場合が多い点も挙げられます。

「雪予報」などどこにも見られないにも関わらず、冬の名阪国道を通ったり、近鉄大阪線で榛原駅に到着したら積雪になっていた。というケースはほぼ毎年のように見られます。

冬に「冷たい雨」が降るような場合、また「冬型の気圧配置」が強まる場合などは、奈良盆地一帯では何もなくても、標高が高い場所では雪に対する注意が必要です。

また、標高が高いためマイナス5度以下になることも珍しくない(大宇陀の1月の最低気温平均は-2.5℃)ため、路面凍結も非常に起こりやすく、山の中の道路などは一度積もると路面の雪が凍ってしまい、日陰の場合はかなり長期間凍結状態が維持されてしまう場合も少なくありません。

奈良盆地一帯ではなく、名阪国道沿いや宇陀方面などへお越しの場合は、冬は「スノータイヤ」などの装備が必須です。

南部山間部の「雪」は?

大和高原・宇陀エリア以上に山深いエリアであり、標高2000m近い山もある南部山間部。

雪については、「南」だから温暖であるという勘違いをする人も中にはおられますが、気候的には京阪神周辺の気候とは大きく異なります。

南部といっても標高が低い地域・高い地域で気温・天気は異なってきますが、全体として見るとどちらかといえば日本海側の気候に近いほどに冬の寒さが厳しく、雪の多さが目立ちます。

もっとも、標高がそこまで高くはない吉野山・賀名生梅林・十津川温泉周辺などは、「極寒」というほどではなく、雪が非常に多いわけではありません。

しかしながら、温泉地として名高い「洞川」周辺にはスキー場があったりするなど、とりわけ人が住む場所でも標高が800m以上などの地域を有する「天川村」や「野迫川村」は場所によっては「東北」の平地よりも寒く、雪についても必ず毎年複数回積雪するほか、年によっては根雪となるケースもあります。

これら特に標高が高い地域では、気温が低いので降水量に対する積雪量が多く、1日で20㎝以上の積雪になることは決して珍しくありませんし、寒冷な年で雪が度々積もる場合は積雪50㎝以上に達することもあります。

多くの登山者に人気の「大峰山地」については、標高1500mを超える山も多く、積雪量は吹き溜まりなどを中心にメートル単位が一般的で、状況によっては5月まで雪が残る場所もあるほどで、冬山登山は危険が大きいことでも知られます。

路面凍結や積雪の影響により、冬には通行禁止となる道路も多く、「大台ケ原」へのアクセス道路についても、12月から4月頃までは通行止めになります。

奈良県南部に「冬」に訪れる場合は、特に標高が高いエリアへ行く場合は「積雪・凍結」はごく当たり前であるという前提で訪れるようにして下さい。

積雪時の交通状況について

雪の日でも市街地の奈良交通バスは走る場合がある

奈良県内で積雪となった場合、「交通機関・道路」がどのような状況になるかについては、場所・区間によって大きく異なります。

例えば奈良市方面と大阪を結ぶ主要な道路である「阪奈道路・第二阪奈道路」については、路面に積雪があるとかなりの確率ですぐに通行止めになります。また、もう一つのルートである「国道163号線」についても積雪時は通行止めとなる場合があります。

こうなると、奈良市や生駒市では鉄道以外の交通機関で大阪方面へ行くことはかなり難しくなり、大きく迂回しなければ移動が出来ない車にとっての「準・陸の孤島」と化します。

一方、積雪が珍しくない「名阪国道」などについては、必ずしも積雪=通行止めということにはならない場合が多くなっています。

もっとも、ノーマルタイヤが多い奈良盆地一帯の市街地については、積雪時は渋滞や事故による通行不能が目立ちますので、自動車の利用は一切おすすめできません。

公共交通機関の鉄道・バスについては、かなりの積雪が見られる場合でも、全体としては運行される場合が多くなっています。

近鉄電車やJR線については、積雪で運休となることは少ない(とりわけ近鉄線)状況で、積雪時はむしろ「マイカー」から鉄道の利用へと人の流れが移るため利用が増える場合もあります。

奈良県内を走る奈良交通バスについては、郊外の住宅街で急勾配のある路線や山間部の路線で運休となるケースもありますが、市街地を走る多くの路線(奈良の「市内循環」など)については、過去には10㎝以上の積雪で道路に雪が積もっても運休せずに走ったこともあります(状況はその都度変化する場合があります)。

奈良で雪が降る場合には、道路状況が悪化しやすいですので、運休していない場合は公共交通機関のご利用をおすすめします。

まとめ

奈良県については、「雪」が少ないイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際は地域ごとにその状況は大きく異なります。

奈良市や橿原市など「奈良盆地一帯」については、確かに積雪は少なくなります。積もっても通常年数回以内、場合によっては雪が一度も積もらない年もあります。但し気温は京阪神と比べると冷え込むために、路面凍結には注意が必要です。

奈良盆地一帯から近い「大和高原・宇陀エリア」については標高が高いために積雪の頻度は多くなり、雪が珍しくない地域となります。一度積もると溶けにくい場合も多く、冬にこちらのエリアへアクセスする場合、冬用タイヤの装備が必須です。

南部の山間部については、標高によりますがおおむね奈良県で最も寒く、雪も多い地域となります。十津川温泉周辺など標高が比較的低い場所は極端な積雪は見られませんが、特に天川村や野迫川村など標高500~1000m程度の地域になると、根雪となることも多くなり、人が住む場所でも多い場合50㎝以上の積雪が見られることもあります。

奈良県については、海に面していない割には地域や季節によって気象状況が大きく変動します。1年を通した気候の特徴は、上記の記事で詳しく解説しています。