【奈良】少し妖しげな雰囲気が広がるエリア「黒髪山」ってどんなところ?【古墳・神社】

ごあんない

京都府境の近くに位置する歴史ある丘陵地

奈良市北部、近鉄奈良駅から北に2キロ程度離れた旧ドリームランド周辺地域は数多くの歴史スポットがある場所となっており、通称「黒髪山」と呼ばれています。この地域は昭和に奈良ドリームランドやゴルフ練習場等が開発されましたが住宅地化はされておらず、現在も一部で森林が残る空間となっています。

ドリームランドに隣接する地には、奈良豆比古神社の末社である黒髪山稲荷神社が鎮座し、朱色の鳥居が目立つ小さな境内には、白瀧大神を祀る石などがいくつもみられます。

人間の髪を埋めたので「黒髪山」?

この神社と「黒髪山」というユニークな地名の由来については、増尾正子氏の『奈良の昔話』に次のように書かれています。

「開化天皇の孫に、狹穂彦と狹穂姫という兄妹がおられ、妹の狹穂姫は、第十一代垂仁天皇の皇后になっておられた。天皇位を狙っていた狹穂彦は、妹の狹穂姫に、謀判に荷担して天皇を殺すようそそのかすが、天皇を愛していた狹穂姫は天皇を殺すことが出来ず、企てが露見する。天皇は狹穂彦討伐の軍をおこし、狹穂姫は兄の軍に走る。その時姫はみごもっていた。妃を愛する天皇が、攻めあぐんでいるうちに、姫は「稲ゆぎ(稲を積んで造った応急の城)のなかで、皇子を産まれた。姫はその皇子に「誉津別命(ほむつわけのみこと)」と命名して天皇方にお渡しし、自らは、追手から逃れるため、黒髪を切って山に埋め、古い衣をまとって逃去したという。皇后が黒髪を埋めたところから、この山が黒髪山と呼ばれ、稲城の古事から、五穀の神「保食の神」を招請し、転じて稲荷になったと伝えられる。」

(増尾正子著・『奈良の昔話』)

すなわち、「黒髪」という名は、ほんとうに人間の「黒い髪」を埋めた地であるというややシリアスなエピソードに基づいているというのです。

また、増尾氏は回想の中で次のようなエピソードも紹介しています。

「黒髪山も、学校からの距離はそう遠くないのだけれど、しんどかった思い出の一つだ。しかも、たどりついたお社は昼でも薄暗い木立の中にあり、祠のまわりには、長い黒髪を半紙で束ねたものが、いくつもぶらさげられてあって、その髪の毛には女の執念がこもっているような気がして気味が悪かった。」

(増尾正子著・『奈良の昔話』)

この髪が吊るされていたとされる神社=黒髪山稲荷神社では、現在はそのような妖しげな風景を見ることは一切ありませんが、神社の東側に位置する建物には「史蹟 黒髪山」の看板とともに、次のような万葉集の一首が記されています。「ぬば玉の黒髪山の山草に 小雨ふりしきしくしく思ほゆ」(巻十一の二四五六)

墓所・古墳・廃線跡と歴史愛好家には楽しめるエリアです

黒髪山稲荷神社の東から分かれ道を南に行くと、聖徳太子の皇子の墓と言われる那富山墓へとたどり着きます。この墓の四隅には「隼人石」と呼ばれる獣頭人身像を刻んだ石がありますが、柵があり近づくことは出来ません。

また、黒髪山稲荷神社から、東向きに直進すると、黒髪橋を渡ることになります。黒髪橋のある場所にはかつて「大仏鉄道」の黒髪山トンネルが通っており、明治40年の廃止からも昭和40年ごろまではトンネルが残っていましたが、現在のような大型車両が行き交う道路へと拡幅するためにトンネルは取り壊され、切り通しの上に黒髪橋が設けられることになりました。

このほか、黒髪橋の直下の県道を北に少し進むと元明天皇陵(奈保山東陵)・元正天皇陵(奈保山西陵)があり、黒髪山周辺は一般的な奈良の観光地からは外れているものの、非常に歴史の深い地域となっています。

周辺の景観は住宅が少ないとはいえ、レジャー施設・商業施設・資材置き場等が入り乱れた雑然とした様相を呈しており、歴史ある地には必ずしも見えがたいというのもまた現状と言える状況です。しかし薄暗い小山や森の広がる風景は「黒髪山」という名の通り、やや神秘的なイメージも漂わせるものとなっています。

観光スポット

元明天皇陵

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黒髪山稲荷神社から北東に少し離れた住宅街の近くには、2010年に天皇陛下もご参拝されたことで知られる平城遷都を行った「元明天皇」の御陵「元明天皇陵」があります。

元正天皇陵

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元明天皇陵から西に進んだ里山の一角には、元明天皇の皇女である元正天皇の御陵があります。

那富山墓

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先述したように「隼人石」と呼ばれる奇妙な石像物のある「那富山墓」は聖武天皇の皇子のお墓ですが、周辺は虫などが多い上にお墓の近くまで近づくことは出来ず、遠目にその姿を望むことになります。

黒髪山の風景

史蹟「黒髪山」の看板(奈良市)

黒髪山神社に掲げられた「史蹟 黒髪山」の看板。「黒髪」をめぐる伝説が伝わる場所であることを示しています。

黒髪橋(奈良市)

神社の近くにある「黒髪橋」。下に走る通りをまたぐ何の変哲もない橋に見えますが、かつては橋のある場所も山であり、下を「大仏鉄道」の黒髪山トンネルが通っていました。現在はその痕跡は見られませんが、大仏鉄道関係スポットの一つとなっています。

今は無き「ドリームランド」のジェットコースター「ASKA」

黒髪山エリアと言えば、かつては「ドリームランド」と呼ばれる遊園地があったことで知られています。このコースターは木造コースターの「ASKA」で、閉園間際のドリームランドの名物アトラクションでした。なお、これら施設は2016年10月ごろに一挙に解体され、現在は遊園地があった痕跡はほとんど見られなくなりました。

アクセス

各駅からのアクセス

※黒髪山稲荷神社まで

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「高の原駅」・「加茂駅」・「南加茂台五丁目」行き乗車、「奈保町」バス停下車、西に徒歩8分(道路の上にある橋の上付近まで登って頂く必要があります)

近隣スポット

奈良豆比古神社から西に徒歩12分、元明天皇陵から南西に徒歩12分、元正天皇陵から南に徒歩12分、鴻池周辺から北に徒歩15分

黒髪山周辺地図

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