【御蓋山】入山不可の「神域」は春日大社の創建神話の舞台

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「神の山」としての「御蓋山」

御蓋山(みかさやま・三笠山)は春日大社の東方、春日山の主峰である花山の西方に位置する山です。標高は298メートル、その名の通りに左右対称な笠形の山容となっています。この山は眺める角度、また天候や日差しにより、独立した峰として見えたり、春日山全体の一部分として見えたりと、その自然もあいまって様々な姿を見せる山で、その特徴的な山容は古くから神山として崇敬の対象となってきました。現在に渡るまで狩猟や伐採、入山(春日大社関係の特別な機会を除く)も禁じられてきたため、いわゆる「春日山原始林」として都市に隣接する森林としては大変貴重な自然が広がり、世界遺産にも認定されています。

なお、神山である御蓋山は「春日大社」の創建神話の舞台としても知られており、その山頂には、藤原氏の招請により鹿島神宮からやってきた武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が最初に「浮雲殿」と呼ばれる場所に降り立った地点として知られており、その降臨したと伝えられる地には「本宮神社」が祀られています。

また、この歴史ある山は古代人たちの心の拠り所ともなったようで、「あまの原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山にいでし月かも」(古今和歌集 巻九の四〇六)かの阿倍仲麻呂の有名な歌は「若草山」ではなくこの山「御蓋山」を詠んだものと言われます。

その他にも万葉集では「春日なる 御笠の山に 居る雲を 出で見るごとに 君をしそ思ふ」(巻十二の三二〇九)、「雨隠る 御笠の山を 高みかも 月の出で来ぬ 夜はふけにつつ」(巻六の九八〇)などと御蓋山がうたわれるものは多く、特に「月の出」にまつわる歌が多くなっています。

「みかさやま」は二つある

ちなみに、かつては唯一の「三笠の山」と呼ばれてきた「御蓋山」ですが、江戸時代以降、御蓋山(みかさやま・三笠山)のみならず、若草山も「三笠山(みかさやま)」と呼ばれるようになったために、両者が混同されやすくなってしまいました。そのため現在ではこちらの春日山の「みかさやま」には「御蓋山」の名称が多く用いられるとともに、御蓋山ではなく、実際に「3つの笠」が重なっているようにみえる若草山を「三笠山」と呼ぶ通称が一般化されるようになっています。

奈良市内各地から御蓋山を望めます

昔から春日山の神域として大切にされてきた御蓋山は、奈良の風景を味わう際にはぜひ知っておきたい、見ておきたい大変重要なスポットではありますが、先述の通り原始林かつ「神の山」である御蓋山は入山することは不可能であり、その風景は奈良市内の各地から望む形で味わうことになっています。御蓋山をしっかりと望むことが出来る場所としては、奈良県庁舎の屋上・飛火野や浮見堂周辺・また白毫寺から山村町方面にかけての山の辺の道(北)コース周辺からは特に御蓋山の姿をよく望むことが可能となっています。また、極めて目にする機会は少ないものの、飛火野から望む雪化粧した御蓋山の山容は実に美しく、いにしえを想起させる神秘的な風景を目にすることができます。

御蓋山を眺める場合は市内の各地からとなりますが、御蓋山になるべく近づきたいような場合、「春日山遊歩道」を通ることで、御蓋山山頂まで数百メートルの位置までアクセス可能となっています。但しその場合も、御蓋山山頂の神社などを見ることは出来ません。基本的には遠目に見てその雰囲気を感じるほうがベターと言えるでしょう。

御蓋山を望む風景

晩秋の御蓋山

御蓋山は、天候や日差しの加減により春日山一帯の中で浮き上がって見えることもあれば、その特徴的な山の形が見えにくい時もあります。なお、認知度としては地元住民でも、いつも見ている山並みの中に美しい三角形の「御蓋山」が存在することに気づいていない人も多い状況です。

早朝の御蓋山

雨が降った翌日の早朝時間帯には御蓋山周辺から雲が湧くこともあり、差し込む日差しと湧き上がる雲の織りなす風景は、市街地に隣接する「原生林」の雰囲気を一層感じさせるものとなっています。

雪景色の御蓋山

滅多に見ることは出来ませんが、雪が積もった時には一面の雪原となる飛火野の背景にどっしりとした御蓋山を望む水墨画のような風景を見ることが可能です。また、山麓は雨で山地は雪が降るような場合、御蓋山周辺で雪の「境界線」が現れ、グラデーションのような風景を生み出すこともあります。

若草山から御蓋山・高円山を望む風景

若草山の登山道沿いからは、御蓋山・春日山の形とその原始林の姿を飛火野からの景色と同様、しっかりと眺めて頂けるようになっています。若草山から眺めると、「御蓋山」は、高円山や春日山の主峰(花山)などと比べ、市街地方面にせり出した、三角形の形をしていることが良く分かります。

御蓋山近くの「飛火野」までのアクセス

近鉄・JR線各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「市内循環外回り」・「中循環外回り(近鉄奈良駅からのみ)」・「山村町」・「藤原台」・「鹿野園町」行き乗車、「春日大社表参道」下車、東側すぐ

近鉄奈良駅から東に徒歩20分

JR奈良駅から東に徒歩30分

周辺のみどころ・観光スポット

一帯は奈良公園エリア、浅芽ヶ原・片岡梅林から東にすぐ、奈良国立博物館から南東に徒歩5分、浮見堂から北東に徒歩5分、春日大社本殿から西に徒歩10分、東大寺大仏殿から南に徒歩10分

※御蓋山本体に直接入山することは禁じられていますのでご注意ください。御蓋山は周辺から眺めることのみ可能となっています。

※なお、御蓋山に最も近い「立ち入り可能な場所」に行く場合、「春日山遊歩道」を歩くことになります。春日山遊歩道は「水谷茶屋」付近から若草山へと谷筋を登るルートと、新薬師寺近くから「滝坂の道」の近くを通って春日奥山へと行くルートの2通りがあり、いずれも途中で御蓋山方面へと向かう通行禁止の獣道と分岐することになり、その分岐点付近が御蓋山の最寄りとなります。

御蓋山周辺地図(入山はできません)