奈良の世界遺産「古都奈良の文化財」とは?

こちらでは、奈良市内で世界遺産として指定されている「東大寺・興福寺・春日大社・元興寺・薬師寺・唐招提寺・平城宮跡・春日山原始林」=「古都奈良の文化財」について、その登録理由や各登録物件の概要、観光の方法について解説をしていきます。

奈良市にある「世界遺産」とは?

世界的な観光都市である古都「奈良」。現在に通ずる日本の歴史のはじまりを物語る奈良のまちには、京都などと同様ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって「世界遺産」に指定されているスポットが多数あります。

奈良市内の世界遺産は、ざっくりとまとめると東大寺・興福寺・春日大社・元興寺・薬師寺・唐招提寺・平城宮跡・春日山原始林の計8か所となっていますが、世界遺産に指定される上では、個々のスポットごとではなく、主に奈良時代の歴史・文化を象徴するものとして「古都奈良の文化財」というひとまとまりのグループとして登録されています。

個々のスポットごとの登録ではありませんので、登録地域の面積は、構成資産616.9ヘクタール、それを保護する緩衝地帯の2501.5ヘクタールという比較的広い範囲が登録されてます。

世界遺産に登録されたのは1998年(平成10年)の12月2日。京都で開催されたユネスコ世界遺産委員会において、日本で9件目となる世界文化遺産として登録されました。なお、日本ではじめて登録された世界遺産は奈良県内でも「法隆寺」の方となっており、古都奈良の文化財の世界遺産登録は、古都京都の文化財・姫路城などに続く形で登録されています。

世界遺産の登録理由

古都奈良の文化財の「世界遺産登録」の理由としては、以下の世界遺産登録基準に該当することが挙げられています。

(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii) 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在である。
(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(vi)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

※世界遺産登録基準は日本ユネスコ協会連盟サイト内「世界遺産の登録基準」より引用

なお、「古都奈良の文化財」としては複数の歴史遺産を含む形で登録されていますので、世界遺産登録にあたっては個々の寺社仏閣、また所蔵する固有の国宝・重要文化財などを評価したものではありません。むしろ「奈良の歴史遺産」全体の価値が評価されたものと言えるでしょう。

奈良の文化遺産は、平安時代以降は平城宮エリアが荒れ地・農地化したため遺構の保存状態がよい一方で、寺社に関しては奈良時代以降もとりわけ鎌倉時代の建築様式(大仏様)や仏教美術(慶派など)など独自の発展を遂げていった歴史を持つなど、考古学的な重要性と長い歴史の中における一貫した重要性を併せ持つ貴重な空間となっており、全体として非常に価値が高い存在となっています。

世界遺産登録スポット一覧

東大寺

東大寺は、奈良の観光スポット・奈良の世界遺産を代表するお寺であり、「大仏殿」にいらっしゃる「奈良の大仏さま」や「お水取り」で有名な「二月堂」などで知られています。東大寺は境内の大半のエリアが世界遺産としての指定区域となっています。

【東大寺】「大仏さま」で有名な奈良最大の規模と知名度を誇るお寺

興福寺

興福寺は、近鉄奈良駅から徒歩圏にあり、奈良公園エリアの入り口にもあたる場所にある寺院です。2018年に「中金堂」が再建されて注目を集めている空間には、奈良時代のみならず、運慶関連など鎌倉時代の仏教美術も多数保存されています。

【興福寺】日本の国宝彫刻の1割以上を現在も所蔵する「奈良の象徴」の一つ

春日大社

春日大社は、東大寺の南東に位置し、春日山原始林の麓に境内を持つ奈良最大の神社です。春日山原始林を含む境内一円が世界遺産の登録区域となっており、歴史上では興福寺との関係性や「鹿」を巡る伝承など、奈良における宗教文化・都市文化を象徴する存在となっています。

【春日大社】原始林を含む広大な境内地を有する「世界遺産」は「藤原氏」ゆかりの神社

元興寺

元興寺は「ならまち」エリア内に境内を有する寺院であり、現在こそこぢんまりとした境内となっていますが、かつては現在のならまちエリアの大半の区域を伽藍としていた「巨大寺院」としての歴史を有しています。なお、境内の本堂・禅室に用いられている部材・瓦が飛鳥時代にさかのぼる日本最古級のものであることで知られています。

【元興寺(極楽坊)】ならまちの町並みに囲まれる「世界遺産」は飛鳥時代からの歴史を今に伝える

薬師寺

薬師寺は、唐招提寺の南側に位置する奈良市内では東大寺に次ぐ規模を有する巨大な寺院です。奈良時代の遺産としては「東塔」が大変有名であり、飛鳥時代からの歴史を色濃く反映した仏教美術でも知られています。なお、広大な境内では近年新築・造成された建築・区域もあるため「玄奘三蔵院伽藍」などの真新しいエリアは、厳密には世界遺産そのものの指定区域にはあたりません。

【薬師寺】白鳳時代の面影を味わえる一方で多数の真新しい仏堂も立ち並ぶ奈良有数の巨大寺院

唐招提寺

唐招提寺は、薬師寺の北側に位置する「鑑真和上」ゆかりのお寺であり、奈良市内の寺院の中では最も奈良時代の雰囲気を色濃く残した「伽藍(境内)」が広がっています。

【唐招提寺】美しい奈良時代の建築が複数残される「鑑真和上」ゆかりの寺院

平城宮跡

平城宮跡は、奈良時代の「平城京」の中心にあたるエリアであり、「大極殿」・「内裏」・「朝堂院」・「朱雀門」など主に天皇の住まい・朝廷による政治に関わる施設が密集していた区域となっています。

【平城宮跡】かつての日本の首都=奈良の都の中心部は広々とした草原が広がる

春日山原始林

春日山原始林は、春日大社の創建神話の舞台「御蓋山」などを含む広大な原始林であり、「古都奈良の世界遺産」の中では唯一の「自然」に関わる構成要素となっています。なお、登録の区分としては他の寺社と同じく「世界文化遺産」の枠組みであり、春日大社の信仰に基づいて自然環境がほぼ手つかずで残されてきた文化が評価された形になっています。

【春日山原始林・春日山遊歩道】市街地のすぐそばに広がる圧倒的な「自然」

世界遺産の観光・拝観について

奈良の世界遺産「古都奈良の文化財」に関しては、寺社に関しては「世界遺産」であることによる拝観の制限などはありません。また、薬師寺の拝観料のみやや高くなる時期がありますが、基本的には世界遺産であることによって拝観料が特別に高くなっているというようなこともありません。とりわけ、平城宮跡などは復原された大極殿も含め拝観料・入館料などは一切かかりません。また、東大寺・興福寺は境内拝観は24時間自由で、料金も不要となっています。京都の世界遺産と比べると、観光上の「自由度」は比較的高いと言えるでしょう。

なお、世界遺産の中でも「春日山原始林」については「春日奥山ドライブウェイ」や「春日山遊歩道」・「滝坂の道」などの散策ルート以外の区域、「御蓋山」や「花山」など手つかずの原始林の中心的エリアは春日大社の信仰上の「禁足地」となっているため立ち入りは出来ません。

「古都奈良の文化財」については、およそ数キロ四方のエリアにまとまっていますので、春日山原始林を除けば奈良交通バスの1日乗車券(奈良公園・西の京 世界遺産 1-Day Passなど)を使うことで、ややハードなスケジュールにはなりますが「1日で全て巡る」ことも出来ない訳ではありません。もっとも、1つ1つの寺社などををじっくり拝観・散策していくのであれば、1泊2日以上のスケジュールがあったほうが無難です。

また、奈良を初めて訪れるような場合は、バスガイドさんによる丁寧な案内と観光バスでの移動手段がセットになった「定期観光バス」もおすすめです。

奈良の世界遺産はどのようなスケジュール・行程でも比較的巡りやすくなっていますので、ぜひその魅力を味わうために訪れてみてはいかがでしょうか。