奈良の鹿の生態は?季節ごとに異なる特徴・行動を詳しく解説!

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この記事では、あくまでも「野生動物」である奈良の「鹿」の生態について、毎日どのように暮らしているのか、1年の中で季節ごと、時期ごとにどのような違いや特徴があるのかを解説していきます。

鹿は実は規則正しい生活を送っており、無意味に見えるような鹿の行動にも、実際のところは毎日の生活サイクルが関わっている場合も少なくありません。

「鹿の写真」などを撮影する場合は、鹿の行動パターンをある程度把握しておくことで、シャッターチャンスを増やす機会にもなるかもしれません。

鹿の1日は規則正しい?

季節によって行動特性や性格に違いが出る鹿ですが、奈良公園周辺で暮らす鹿たちの日々の生活は、比較的「規則正しい」生活を送っています。

簡単に言えば、

寝床

奈良公園・春日大社周辺の林の中などで10~20匹程度の群れで睡眠をとります。

早朝・午前

眠りから覚めると奈良公園一帯の芝生ゾーンへじわじわと移動し、食事をとります。食事をとる場所は「飛火野」や「若草山」、奈良公園「春日野・浮雲園地」など一定の芝生が生えている場所であればどこでも鹿の姿を見かけます。

お昼間

食事をとり終わると、木蔭や少し静かな場所などのんびりと反芻(消化)作業を行ったり、休息をとり思い思いの時間を過ごします。休んでいる最中に鹿せんべいを与えられると、ほとんどの鹿は喜んで食べてくれます。

夕方・夜

休んでいた場所から再び移動し、芝生広場などで芝生を食べつつ、林の中などへ戻り、眠りにつきます。

このような流れが、「鹿の1日」になっています。

このように見ると、大勢の観光客が訪れて「鹿せんべい」をあげようとする日中時間帯は、鹿にとってはメインとなる食事の時間帯ではなく、あくまでも「片手間=おやつ」として鹿せんべいを食べているということがよくわかるかと思います。

また、鹿の群れは毎日違う場所をさまよい歩くというよりは、決まった場所で決まった群れが移動するパターンが多くなっており、ある程度の「規則性」が生み出されています。なお、このような生活スタイルは奈良公園で長年人間と関わってきた「奈良の鹿」独特のものであり、世界中どこでも同じように「のんびり」とした鹿の群れが生息している訳ではありません。

鹿の1年

比較的規則正しい生活を送る鹿たちですが、毎日の生活とは別に1年サイクルで鹿の「出産」や「子育て」が行われる中で、鹿たちは季節ごとに違った行動・特徴を見せます。

気性が荒くなる秋の「発情期」

奈良の鹿は、奈良公園周辺に設置されている看板にも書いてあるように、とりわけ「発情期のオス」が気性が荒いことで知られています。

発情期は概ね秋のシーズン、8月の終わりから12月のはじめ頃、とりわけ9月から11月の間となっており、その間にメス鹿との恋・交尾が行われます。発情期のオス鹿には、みだりに近寄ったりしてはいけません。

鹿は複数のメス鹿とともに一種のハーレムをつくり、「縄張り」を確保します。縄張りに侵入した他のオス鹿と角を突き合わせてケンカをすることもありますし、自ら地面におしっこをかけて泥と混ぜ、それを自分の体にこすりつけて「におい=シカのお化粧」をつけるという行動を取ることもあります。このような状況下では他のオス鹿でなく、仮に相手が人間であっても鹿にとって邪魔な存在であれば、危害を加えられるリスクは高くなります。

実際に、観光客が鹿にケガを負わされる事故は毎年少なからず発生していますので、特に秋の「オス鹿」にはお気をつけください。

また、発情期のオス鹿ほどではありませんが、子育て中のメス鹿も神経質になる余り、気性が荒くなる場合があります。

出産シーズンは初夏

シカの場合は、発情期が一定の期間となっているため、おのずから「出産」シーズンも毎年同じ時期となります。鹿の妊娠期間は約210日から230日程度と言われており、毎年5月中旬~7月いっぱいくらいまでの期間が出産シーズンとなります。とりわけ6月の中頃は鹿の出産ラッシュとなり、鹿苑では多数の子鹿(バンビ)が保護されます。

「角」は春・夏に成長

奈良の鹿のうち、「オス鹿のトレードマーク」とも言えるのは「鹿の角」。現在では危険防止のために「鹿の角切り」などの行事のみならず随時オスの角切りが実施され、生えきった角は切られて回収されるようになっていますが、角の生える期間には奈良公園内のあちこちで鋭い角を持つオス鹿の姿を目にすることが出来ます。

角は3月頃から生え始め、その後9月頃までには立派な角が生えきるようになっており、主に春先から夏のシーズンにかけてどんどん成長していくということになります。

静かな「冬」

出産シーズンとなる初夏、角がどんどん生える春~夏、発情期となる秋など、比較的忙しく回っていく「鹿の1年」ですが、例外的に冬のシーズンは比較的「静かな鹿」たちの姿を見ることが出来ます。発情期を終えたオス鹿は、基本的にのんびりと過ごしていることが多くなっています。もっとも、鹿は野生動物ですので、年間を通して人間に危害を加える可能性がゼロになることはありませんので、その点はご留意ください。

冬毛と夏毛

余り知られていませんが、鹿の体を覆う「毛」は、実は冬と夏で「違う毛」が生えるようになっています。冬毛から夏毛へは毎年5~6月頃、夏毛から冬毛へは8~10月頃に生え変わる(生え変わりには1週間から10日程度かかります)ようになっており、全体としては冬毛の期間が長くなっています。

夏毛はオス・メスを問わず茶褐色で白い斑点模様(いわゆる鹿の子模様)が特徴となっており、一方の冬毛はオスが濃茶色・メスが灰褐色となっており比較的大きな違いがあります。

まとめ

・奈良の鹿は比較的規則正しい生活を送っています。

・鹿せんべいを食べる時間帯は「休息」時間であることが多くなっています。

・鹿の発情期は9~11月頃が中心であり、みだりに近寄ってはいけません。

・出産シーズン、角の生える時期、毛の生え代わりなど、「鹿の1年間」は時期ごとに大きな特徴・違いが見られます