「奈良の鹿」の「身体的特徴」とは?体格・角・毛色などについて解説

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こちらでは、天然記念物である「奈良の鹿」の外観・身体的特徴について、「体格(大きさ)」・「角」・「毛」・「足(ひづめ)」などのテーマごとに解説していきます。

奈良の鹿は、偶蹄目(ウシ目)シカ科シカ属「ニホンジカ」であり、国内の山間部、また宮島や牡鹿半島にいる「鹿」たちなどと種類上は同じものとなっています。

「奈良の鹿」と特徴づける「外観上の特徴・定義」というものがあると勘違いされる方もいるようですが、実はそのようなものは存在しません。

体格・大きさ

奈良の鹿の体格・大きさ。それは、基本的には日本全国にいるニホンジカと変わりありません。主な身体測定上の数値は、以下の通りとなります。

頭胴長:オス約150cm・メス約135cm
肩高:オス約85cm・メス約72cm
体重:オス約80kg・メス約 45kg
尾長:オス約12cm・メス約12cm

(参考・奈良の鹿愛護会ウェブサイト

上記からもわかるように、体つきとしては、基本的に「オス」の方がかなり大きい体格をしています。体つきの違いは比較的明確で、公園などで鹿を見かけた場合、予備知識がなくても、とりわけ大きな個体であれば誰でも「オス」と「メス」の区別をつけることが可能です。奈良の鹿は、頭数上では「メス」がかなり多い状況のため、体の大きな「オス」は比較的目立つ存在になっています。

奈良の鹿については、一般的にやや「やせ形」である場合が多いのではないか。と言われることもあります。実際に鹿の姿を見ると、時に「やせた姿の鹿」が見える場合もありますが、これは見る人の認識によって大きく差が出やすいテーマとも言えます。

なお、様々な呼びかけが行われている通り、痩せている鹿も含め奈良の鹿に鹿せんべい以外の食べ物を与えるような行為は絶対にしてはいけません。観光客などの方の「よくある誤解」としてありがちですが、本来鹿が食べるもの以外を食べさせることは、重大な健康被害などにつながる場合が少なくありませんので、絶対にそのような行為はおやめ下さい。

痩せているとイメージされることも多い奈良の鹿ですが、特殊な環境で生息していることもあり、寿命は野生の鹿としては一般に長いとされています。

鹿の角

奈良の鹿のうち、オス鹿のトレードマークとも言える「鹿の角」。角はメスには一切生えず、オス鹿のみが持つものです。「角」は、骨組織・硬い皮膚でできたものであり、鹿の場合は1年おきに新しい角が生える(古い角は勝手に外れる)という仕組みになっています。

角は3月の終わりや4月頃から生え始め、最初のうちは皮膚に覆われうぶ毛も生えている「袋角」と呼ばれるやわらかい組織であり、内部に血流もありますが、夏にかけてぐんぐんと成長していくと立派な角に変化します。角は半年で数十センチという相当なスピードで成長するため、早くも9月頃には完成し、その後は安全対策のため、「鹿の角切り」をはじめ保護活動の中で随時「角切り」が行われます。

なお、オスに生える角は、生まれたての時期である1歳までの期間は角が生えることはありません。1歳を超えるとまず1本だけの角が生え、2歳以降は分かれ目のある角が生まれ、4歳ごろまでは毎年「角の先」が増えていきます。4歳以降は3つの分かれ目、4つの「角の先」を持つ形(三又四先・みつまたよんせん)となります。もっとも、鹿のコンディションなどによって個体差はありますが、角の生え方によってまだ生まれてからそれほど経過していないのか、それとも壮年期の鹿なのかをある程度は見分けることが出来るようになっているのです。

冬毛・夏毛

「角」ほどには注目されない要素ですが、鹿の体に生えている「毛」は、毎年「冬毛」と「夏毛」に生え変わる仕組みになっています。期間としては、冬毛の期間の方が長めであり、冬毛から夏毛へは5月~6月頃、夏毛から冬毛へは8月~10月頃に生え変わります。生え変わるタイミングでは毛がボサボサに見え、健康に問題があるように見えてしまいますが、あくまでも毛が生え変わろうとしている外観なので問題はありません。

それぞれの毛の特徴としては、夏毛は茶褐色の毛色に、白い斑点が見られる「鹿の子模様」が特徴となっており、オスもメスも大きな差はない外観となります。一方、冬毛についてはオスとメスに違いがあり、オスは濃茶色の毛色に、秋の発情期の期間のみはタテガミのような毛も生える一方、メスは灰褐色の毛が生えるのみとなっています。

なお、冬にはオス・メスともに白い斑点はなくなりますが、翌年再び夏毛が生える際には、概ね同じ場所に同じ大きさの白い斑点ができるようになっています。

足・ひづめ

鹿は哺乳類の中でも「偶蹄目」と呼ばれる種類に属しています。偶蹄目の動物は、指が2本か4本しかなく、人間の指で「親指」と呼べる部分は退化し、シカの場合は大きな「ひづめ」である2本の指はそれぞれ人間の「中指(第3指)」・「薬指(第4指)」にあたる部分が発達したものとなっています。また、その脇にはごく小さな2本の指(副蹄)もあり、こちらは人間でいうところの「人差し指(第2指)」と「小指(第5指)」にあたります。

消化器官

草食動物である鹿は、主に奈良公園に生えている芝生などを主食として食べています。鹿は頑丈な「歯」を持っており、上に14本・下に20本の合計34本の歯が生えるようになっています。また、鹿は胃で消化した食べ物を再び口に戻して噛み砕くという「反芻」を行うことで知られており、胃の数は4つもあります。

それぞれの胃は、口に近い位置にある「第1胃」では胃に住むバクテリアにより草の硬い繊維を分解する役割を果たしているほか、「第2胃」では分解しきれない繊維質を再び口に戻す反芻作業を行い、「第3胃」では人間の胃と同様に消化液(胃液)によって消化をする「第4胃」に送るための作業を行っています。

このように、シカの消化の仕組みは人間とは全く違います。観光客の方の中には、人間が食べるようなものを鹿に「エサやり」する人がいますが、もしお弁当や肉、お菓子などを鹿にあげてしまえば、この消化の仕組みに対応できず、消化不良や病気になってしまう可能性があります。鹿せんべい以外のエサは絶対に与えないようにしてください。

まとめ

・鹿はオスの方が大きい体格をしています。

・角は半年で数十センチも成長し、1年サイクルで生えるようになっています。

・鹿の毛には「冬毛」と「夏毛」があり、夏毛には「白い斑点」模様が出来ます。

・鹿の指は大きなひづめ2本を含む4本、胃の数は4つもあります。