奈良の鹿の「オス」と「メス」の特徴は?「鹿社会」の仕組みも解説!

各種お役立ち情報

奈良公園周辺エリアに1000頭以上が生息すると言われる「奈良の鹿」。

このページでは、奈良の鹿の「オス」と「メス」の特徴・見分け方、オスとメスがそれぞれ別の行動を取り、別の役割を担う「鹿社会」のシステムについても解説していきます。

なお、奈良で見られる鹿は「野生の鹿」であり、その他の本州各地などで見られる鹿と同じ「ニホンジカ(ホンシュウジカ)」ですので(奈良の鹿の定義)、本記事で説明する内容は一部の内容を除き(角切りや観光客との関わりなど)奈良だけの特徴・奈良だけにあてはまる内容という訳ではありません。

オス鹿の特徴

オス鹿(奈良)

体格は大きめ

オス鹿は、メスと比較すると体格は大きめです。全長はメス鹿よりも少し長い1.5メートル程度ですが、体重についてはメス鹿の2倍近い80キロ程度あるため、体つきががっしりした雰囲気を一目で感じられるようになっています。

オスとメスは、「角があるかどうか」も見分けるポイントですが、特に「成獣(成長した鹿)」であれば、そもそも体つきが大きく異なるので、鹿の姿を見ただけでオスなのか、メスなのかは特に予備知識なく判断することができます。なお、あくまでも奈良の鹿は野生ですので、何らかの事情でオス鹿でもかなり痩せてしまっている場合もあります。

また、「毛」については、夏毛はメスと全く同じで茶褐色に白い斑点の「鹿の子模様」ですが、冬毛については発情期にはたてがみのような毛が生えるほか、メスと比較して濃い茶色の毛色となります。

生態的にメスとの差が大きいのは寿命であり、オスは奈良の場合12~15年程度とメスの半分強の寿命しかありません。

角が生えます

オス鹿最大の特徴とも言えるのは、やはり「鹿の角」。オス鹿にしか生えない角は、生後1年程度は生えてこないのですが、1歳以降は毎年角が生えては生え変わるというサイクルを一生に渡り続けていくことになります。

角は2歳で2又に分かれ、3歳以降では3又に分かれ、4つの先端を持つ角となるのが一般的となっています。

なお、角は春先に生え始め、9月頃には完成し、その後安全対策のために角切りされるのが一般的(野生であっても一定の保護を受ける奈良の鹿だけの特徴)ですが、角を放っておいても次の年になれば勝手に脱落し、また春からは新しい角が生えるという新陳代謝の激しいものとなっています。

単独行動も多い

オス鹿の特徴としては、鹿社会の中で「単独行動」を行うことが多いという点も挙げられます。そもそもオス鹿は「子鹿(バンビちゃん)」の子育てには一切関わらないようになっており、発情期に子供をつくる以外の期間は、「余り何もしていない」と言ってもよい存在です。

発情期の期間は、後ほど詳しく解説するように完全に単独で行動し、メス鹿の群れの中に入ることがありますが、オスはそれ以外の期間は「一応の」オス鹿の群れの中で生活することになります。しかしその「オス鹿の群れ」は目的や役割を持った群れというよりは、非常にルーズな関係性・ドライな関係性の中で一応存在するようなものであり、休息したり食事をしたりするタイミングもバラバラで、群れの中にはいるものの、単独で気ままに動いているような形になっています。

発情期は危険です

観光客の方と「オス鹿」の関わりの中で注意すべき点は、オス鹿の「発情期」の問題です。オス鹿は発情期になると非常に気性が荒くなってしまい、他のオス鹿とケンカをしたりすることも頻繁にあります。

もし、鹿ではない人間(観光客)であったとしても、オス鹿のテリトリーにむやみに入るなど気に障る行動を取れば、オス鹿に攻撃される・危害を加えられる可能性は十二分にあります。9月頃~11月頃をピークとする発情期の期間は、「観光客が鹿にしてはいけないこと」などを確認の上、オス鹿にはあまり近づかないほうが無難です。

メス鹿の特徴

メス鹿(奈良)

体格は小さめ

メス鹿は、オス鹿と比較すると体つきはかなり小さめとなります。身体の全長などはそこまでの差はないのですが、体重が倍近く異なる場合もありますので、ほっそりとした鹿であればメス鹿、がっしりとした鹿であればオス鹿というおおよその「見分け」が可能です。毛については夏毛はオスと同じですが、冬毛は質素な雰囲気の灰褐色となります。

寿命については、オスの2倍程度生きる鹿も多く、奈良の場合20~25年程度生きる場合が目立ちます。

角は生えません

オスには立派に生える角ですが、メス鹿には基本的に角は一切生えません。メス鹿は成長してからも、角のない姿で比較的ほっそりとした体つきをしていますので、成長すればするほどにオス鹿との区別がつきやすくなります。

なお、鹿の角は、生後1年程度はオス・メスの区別なく生えないようになっています。生まれたての鹿については、体つきもまだ小さく、角も一切生えていませんので、オスとメスの区別をつけるのは簡単ではありません。

育児はメス鹿のみが行います

鹿社会では、メス鹿が生んだ鹿の赤ちゃん(バンビちゃん)は、メス鹿だけが育児を行い、オス鹿は基本的に一切関わりません。メス鹿による飼育は、性別に関わらずオス・メスの赤ちゃんどちらも行うようになっており、オス鹿であっても最初の2年間程度は、メス鹿の群れの中で育てられ、生活をすることになります。

なお、オス鹿の発情期ほどではありませんが、子育て中のメス鹿にむやみに干渉すると、やはり攻撃される可能性がありますので、そのようなことはしないようにしましょう。

鹿の群れ・鹿社会の仕組み

鹿の群れはオス・メス別々

鹿の群れは、基本的にオスとメスは別々の群れを作ります。オスはオスの群れ。メスはメスの群れであり、メスの赤ちゃん鹿は、母親が所属する群れで一生を過ごすことが多くなっています。また、オス鹿についても最初の2年程度はメス鹿の群れの中で過ごします。2年程度経つと独立し、メスの群れから離れ、オスの群れに属することが多くなっています。

なお、群れは「メスの群れ」の方が「群れ」としての性質が強くなっており、オス鹿の群れは、一応集団で行動しているもののそれぞれの行動はバラバラのことも多く、場合によっては群れに属さずに日頃から単独で気ままに過ごしているオスも見られます。

発情期のオスは単独行動

なお、「オスの群れ」については、「発情期」になると消滅します。発情期になると、オス鹿は気性が荒くなり通常時とは全く異なる行動を取るようになりますが、基本的に全てのオス鹿が「単独行動」を行うようになり、たくましく強そうな鹿はメス鹿の群れの中に入り込み、その中で生活をするようになります。

オス鹿による「囲い込み」

オス鹿がメス鹿の群れに入り込むということ。これは要するに「囲い込み(ハーレム)」をつくるという行為であり、多数のメス鹿に対して1匹のオス鹿が君臨するという構図になります。

囲い込みをする=テリトリー・縄張りをつくるということですので、囲い込みをするオス鹿は、別のオス鹿が自分の縄張りに入ってくるような場合は威嚇・攻撃を行うこともあります。発情期にはオス鹿同士が角を突き合わせてケンカをする姿も見られ、メス鹿が自分の縄張りから離れていくのを妨害することもあるのです。

まとめ

以上、奈良の鹿の「オス」と「メス」の違い、そして「鹿社会」の仕組みなどについて解説してきました。

ざっくりまとめ直すと、

オス鹿は体格が大きく、角が生えます。群れはかなりルーズなもので、単独行動も多くなっています。

メス鹿は体格が小さく、角が生えません。ある程度しっかりした群れで活動し、子育てはメスだけで行います。

両者の違いは体格差や角の有無で判断可能ですが、赤ちゃん鹿については違いを判断するのは難しくなります。

鹿の群れはオスの群れ、メスの群れが別々に存在しますが、発情期にはオス鹿がメスの群れを「囲い込む」光景が見られます。

主にこういった内容をまとめてきました。

オス鹿、メス鹿は赤ちゃんでなければ見た目で区別がつきますので、発情期の期間には特に「オス鹿」には近づかないようにして頂ければとおもいます。