奈良の鹿の「食生活」は?鹿せんべいは「おやつ」?詳しく解説

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この記事では、奈良の鹿についてその「食生活・食べ物」というテーマで解説を行っていきます。

鹿は一般に「草食動物」として知られており、奈良の鹿も同じなのですが、「人間との関係」が深い奈良の鹿の「食べ物」を取り巻く環境は、少し違うところもあるようになっています。

以下、人間による「鹿の健康被害」も含め、鹿と「食」を取り巻く環境を見て行きます。

奈良の鹿は何を食べているのか

奈良の鹿。世界的にも珍しい市街地の真横に生息する野生の鹿ですが、その食生活・食事の基本は、全国各地に生息する野生の鹿と同じく、草食動物の典型として地面に生える草や葉っぱ、笹などを食べています。

鹿が住む奈良公園一帯の特徴としては、各「園地」や「若草山」、また「飛火野」などに豊富な「ノシバ(芝生)」が生えているということがあり、奈良の鹿は最大の「主食」としてはこの各エリアに生えているノシバを食べています。

一方で、ノシバは春や夏には豊富に生えているものの、冬などには枯れてしまいますので、年中たくさん食べられるという訳ではありません。

そのため、ノシバのみならず、実際にはかなりの量の「枯れ葉」・「生葉(枯れていないもの)」・「木の実(ドングリなど)」・「笹(ササ)」なども食べますし、場合によっては木の皮やキノコ類などを口にすることもあります。

鹿が食べるものは、「草食動物」の範疇を越えることはありませんが、奈良公園一帯にある相当な種類の植物を食べているのです。

食べる量は?

鹿は、人間の食べる量と比較すると考えられないくらいの「大食漢」となっています。

草食動物は、そもそも栄養価が低いものからエネルギーなどを確保しなくてはいけませんので、食べる量は多くなっており、鹿が食べる草や葉の量は1日5キログラムにも及ぶとされています。

そんなにたくさん食べなくてはいけない訳ですので、鹿は朝や夕方にたくさん食べて、昼間は休息・消化していることが多いとは言うものの、食事時間の長さという意味では、人間や肉食動物を大幅に上回る状況になっています。

ちなみに、鹿は大量の草や葉を食べて、4つもある複雑な「胃」の中で微生物の力を借り、また「反芻」を繰り返しながら消化を行って栄養を吸収しています。

「鹿せんべい」の位置づけ

さて、奈良の鹿と「観光客」をつなぐ象徴的存在と言えば「鹿せんべい」が挙げられますが、鹿の食生活の中で「鹿せんべい」はどのような存在なのでしょうか。

これは、簡単に言ってしまえば、鹿せんべいは微々たる「おやつ」に過ぎないということになります。そもそも鹿は1日5キロにも及ぶ草や葉を食べている以上、1枚3~4グラム程度とされる鹿せんべいなどを大量に食べても余り変化はありません。

ざっくり計算すれば、カロリーベースではやや違うものの、重さで考えると鹿せんべい100枚を食べてようやく1日の食事量の数パーセントになるというくらいですので、「鹿せんべいをねだって食べて、それを『主な食事』として腹を満たす」という方法で生存している鹿は基本的にいない訳なのです。そもそも、いくら観光客が多くても、鹿せんべいを100枚食べようと思うとかなり時間が掛かってしまいますので、効率的な方法とも言えないのです。

なお、鹿せんべいそのものは、ノシバなどと比べれば摂取可能なカロリーは重量比では比較的高く、小麦粉や米ぬかなど奈良公園内にある草・葉とは全く違う原材料で造られています。但し、草食動物である鹿の消化に問題のない材料で作られていますので、鹿がいくら食べても健康上の問題はありません。

食べさせてはいけないもの

さて、これまで解説してきたことからもわかるかもしれませんが、要するに、鹿は草や葉っぱ、鹿せんべいといった食べ物以外は一切食べることが出来ません。

また、観光客の方は多くがマナーが良く、鹿せんべいを買って、鹿せんべいを鹿にあげるという模範的なシカとの関わり方をして下さっています。

しかし、ごく一部の方は、鹿に対して人間が食べる「お菓子」や「お弁当」をあげたりしているケースもあります。また、故意なのか、鹿が誤解して食べる「事故」なのかはわかりませんが、観光客の方がお持ちの「ビニール袋」や「紙」などを鹿が何らかの理由で食べてしまうというケースも比較的多く見られます。

「お菓子」や「お弁当」などは当然ながら草食動物である鹿の消化器官ではうまく消化できず、健康を害する危険性がありますし、「ビニール袋」などであれば、そもそも排出することも出来ずに、胃の中にたまっていき硬化するという状況を招きます。

このようなものを食べた瞬間に鹿が死んでしまうようなことは通常ありませんし、食べた瞬間は一見すると普通に元気そうにしているので、何も考えずに与えてしまうということもあるようですが、長期的には鹿の健康・寿命に悪影響を及ぼすことになりますので、くれぐれも「鹿せんべい」以外(鹿苑では「ドングリ」をあげることも出来ます)は与えないようにして下さい。

まとめ

以上、奈良の鹿の「食生活」というテーマについてまとめてきました。もう一度ざっくりとまとめ直すと、

・奈良の鹿は「草食動物」。奈良公園一帯に生える「ノシバ」を中心に、草葉や木の実、笹など幅広く食べています。

・鹿は1日5キログラムにも及ぶ食事をとっており、鹿せんべいは大量に食べてもあくまでもわずかな「おやつ」程度の存在です。

・鹿が人間の食べ物を食べたり、ビニール袋や紙を食べることによる健康被害が発生していますので、そのようなものを絶対に与えないようにしてください。

このような内容を解説してきました。

鹿は草葉を主食としている以上、人間はとにかく「鹿せんべい」だけを与えておけば、それが鹿にとって一番幸せな結果となります。くれぐれも食べ残しなどを気軽に与えることがないようにしてくださいね。