近鉄「けいはんな線」の運賃は高すぎる?その実態と「便利な使い方」をまとめてみた

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大阪を東西に貫く緑の電車「大阪メトロ中央線」。中央線の行き先は、西側の終点は大阪市内の「コスモスクエア」ですが、東側は奈良県内の「生駒」・「学研奈良登美ヶ丘」となっています。

なぜ奈良県まで足をのばしているかと言えば、途中で近鉄「けいはんな線」に乗り入れる形を取っているため。一方で、けいはんな線経由で奈良県内と大阪都心部を移動すると、運賃が非常に高いという「悪評」もしばしば聞かれます。

この記事では、そんな近鉄「けいはんな線」の運賃について「どの程度高いのか」・「本当に高いのか」、「どう使えば便利なのか」といった視点からじっくりと解説していきます。

運賃が高い?その理由は?

運賃は本当に高いのか

運賃が高いと評判の近鉄「けいはんな線」。関西でも屈指の高額運賃と揶揄されることもある路線ですが、本当に運賃は高いのでしょうか。

次項でも近鉄奈良線経由の運賃と比較していきますが、例えば近鉄けいはんな線「生駒駅」から地下鉄中央線「森ノ宮駅」までの区間、そして近鉄奈良線の同じく「生駒駅」から、近鉄奈良線「鶴橋駅」までの区間で比べてみましょう。森ノ宮駅と鶴橋駅は違う場所ですが、いずれも大阪環状線への乗換駅となっており、距離にしては「けいはんな線」経由のほうが「短い」区間となっています。

運賃は、けいはんな線生駒駅~中央線森ノ宮駅間=690円・近鉄奈良線生駒駅~近鉄奈良線鶴橋駅間=430円(2023年4月1日改定)

の普通運賃が掛かります。距離はけいはんな線経由が15.7キロ、近鉄奈良線経由の場合17.2キロです。

要するに、15.7キロの距離に690円、17.2キロの距離に430円という訳ですから、距離ベースで考えると、けいはんな線経由の運賃はやはり相当な割高感がある、倍近い運賃になっているということがお分かりいただけたかと思います。もっとも、逆に言えば、近鉄の通常の運賃(奈良線)についてはけいはんな線経由と比べれば使いやすい運賃であることもご理解頂けるのではないかと思います。

なぜ、高くなるのか

さて、割高感がぬぐえない運賃となっていることがご理解頂けたかと思いますが、そもそもなぜこのような高額の運賃になっているのでしょうか。

それは、簡単に言えば運行している会社が違うから。そして、建設費を補うための「加算運賃」が計上されているから。このダブルの効果によるものです。

まず、会社が違うというのは当たり前の話で、「近鉄けいはんな線」が「地下鉄中央線」に直通運転、乗り入れる形をとっている以上、「近畿日本鉄道」と「大阪メトロ」の運賃がそれぞれ発生してしまうということになります。けいはんな線と中央線の境目は東大阪市の「長田駅」ですが、運賃を計算するときは、近鉄の運賃で長田駅まで計算したものと、長田駅から大阪メトロに乗った場合の運賃として計算したものの合計が運賃額となります。

要するに、直通運転していても、運賃計算上は「長田駅で乗り換えた・降りてもう一度乗った」というような扱いになっているということなのです。

また加算運賃については、近鉄けいはんな線の建設費を捻出する目的で、生駒駅~長田駅間では通常の近鉄の運賃にプラス90円、学研奈良登美ヶ丘駅~長田駅間では通常の近鉄の運賃にプラス130円がかかります。

直通運転していても、乗り継ぎ割引運賃の適用はありませんので、「乗り換えた」ものとして2つの会社の運賃が別々にかかる上に、加算運賃までかかってしまうために、あのような高額な運賃になってしまっているのです。加えて、2023年には値上げが実施され、より割高感が生じる状況にもなっています。

近鉄奈良線経由と運賃・所要時間を比較

高額な運賃になってしまっている「けいはんな線」ルートですが、ここからは、けいはんな線・近鉄奈良線を利用して比較的便利にアクセス可能な大阪の主要駅への運賃・所要時間について、近鉄奈良線を使う場合と、けいはんな線と中央線を活用してアクセスする場合に分けてそれぞれ運賃・所要時間を比較していきます。

学研奈良登美ヶ丘駅から

※学研奈良登美ヶ丘駅からの場合、生駒駅まではけいはんな線の利用が必須ですが、そこから近鉄奈良線に乗り換えて大阪方面へ移動することが出来ます。

◇本町駅まで

けいはんな線+中央線で直通=運賃910円・所要時間約37分
生駒で近鉄奈良線に乗り換え、難波から地下鉄御堂筋線に乗り換え=運賃850円・所要時間約45分

◇大阪港駅まで

・けいはんな線+中央線で直通=運賃960円・所要時間約48分
・生駒で近鉄奈良線に乗り換え、難波から地下鉄千日前線、阿波座で地下鉄中央線に乗り換え=運賃950円・所要時間約1時間少々

◇梅田駅まで

・けいはんな線+中央線利用、本町駅で御堂筋線へ乗り換え=運賃910円・所要時間約50分弱
・生駒で近鉄奈良線に乗り換え、難波から地下鉄御堂筋線に乗り換え=運賃900円・所要時間約50分前後

けいはんな線を使う場合において、全て運賃が高くなりましたが、大阪港・梅田への運賃は大差ありません。また、所要時間ベースでは全ての場合で「けいはんな線利用が早い」という結果になっています。

また、近鉄奈良線利用の場合、乗り換え回数が多いため、乗るタイミングごとに所要時間に差が出るケースが多くなっています。確かに運賃は少し高いものの、けいはんな線=不便というのは「言い過ぎ」であることがご理解頂けるかと思います。

なお、大阪港へは近鉄奈良線から阪神なんば線九条駅まで直通でアクセスし、地下鉄中央線九条駅へ乗り継ぐルートもありますが、運賃が割高のためご紹介していません。

生駒駅から

生駒駅に停車中のコスモスクエア行き電車

◇本町駅まで

・けいはんな線+中央線で直通=運賃740円・所要時間約26分
・近鉄奈良線利用、難波から地下鉄御堂筋線に乗り換え=運賃680円・所要時間約30分前後

◇大阪港駅まで

・けいはんな線+中央線で直通=運賃790円・所要時間約38分
・近鉄奈良線利用、難波から地下鉄千日前線、阿波座で地下鉄中央線に乗り換え=運賃780円・所要時間約50分前後

◇梅田駅まで

・けいはんな線+中央線利用、本町駅で御堂筋線へ乗り換え=運賃740円・所要時間約36分~
・近鉄奈良線利用、難波から地下鉄御堂筋線に乗り換え=運賃730円・所要時間約35分~

生駒駅からの場合でも、運賃については大阪港・梅田へ行く場合は大差ありませんが、やはり近鉄奈良線経由が割安になるという結果となっています。また、学研奈良登美ヶ丘駅からの利用と比べると、特に梅田へ行く場合は近鉄奈良線の優位性が高くなっています。

生駒からの場合、学研奈良登美ヶ丘からの場合とは異なり近鉄奈良線が直接ご利用頂けますので、けいはんな線を使うメリットがやや少なくなっていると言えるでしょう。

どういう使い方が便利なの?

これまで、「なぜ高いのか」と「けいはんな線利用・近鉄奈良線経由を比較した場合」について解説してきましたが、結局「けいはんな線+中央線」利用はどのような場合、どのような使い方をすれば便利にご利用頂けるのでしょうか。

地下鉄中央線沿線へ行く場合

当たり前ですが、けいはんな線は全ての電車が地下鉄中央線に直通していますので、「比較」でも見て来たように、本町駅や大阪港駅など、地下鉄中央線沿線へ行く場合にはやはり便利になっています。

もっとも、運賃は多少高くなりますが、区間によってはわずか10円差の場合もあり、まず100円以上の差にはなりませんので、スピーディに「直通」でアクセスできる「けいはんな線」ルートを使うメリットは大きくなるでしょう。

とりわけ大阪のベイエリア、大阪港・コスモスクエア方面にはけいはんな線+地下鉄中央線ルートは非常に便利な存在となっています。

乗り換え回数が少なくなる場合

けいはんな線を使った方が乗り換え回数や手間が省ける場合についても、運賃は基本的に多少高くはなりますが、時間のロスや手間が掛かりませんので、けいはんな線+中央線ルートをご利用になることをおすすめします。

とりわけ大阪市内であれば、近鉄奈良線経由の場合上本町駅からの乗り換えが不便な地下鉄「谷町線」沿線(北側)、また地下鉄今里筋線・長堀鶴見緑地線線沿線(主に北側)などへはけいはんな線のご利用が便利でしょう。

もっとも、近鉄奈良線との位置関係ではけいはんな線は2キロほど「北側」を走っています。谷町線沿線でも南側の天王寺方面などであれば、近鉄奈良線経由が無難と言えるでしょう。

また、けいはんな線沿線の場合でも、近鉄奈良線もご利用可能な「生駒駅」からについては、先の比較でも説明して来たとおり、けいはんな線+中央線ルートのメリットがやや少なくなっています。生駒駅からの場合は、中央線沿線・中央線経由でしか乗り継げないエリア(今里筋線など)へのアクセスでなければ近鉄奈良線を使うほうが便利な場合も多いでしょう。

座りたい場合

けいはんな線は、シンプルな言い方をすれば、「高いので、空いている」電車です。もし、運賃が近鉄奈良線経由と同程度であれば、恐らく今の倍くらいのお客様がおられてもおかしくはありませんが、とにかく「高い」ということで回避される傾向があります。

これを逆手に取れば、学研奈良登美ヶ丘・生駒などのけいはんな線各駅からはほぼ「座れる」ということにもなりますので、昼間でも座れない場合がある近鉄奈良線を避けてあえて「空いているけいはんな線」を使うというのも一つの手段でしょう。

ラッシュ時については、生駒駅より先の区間では座れない場合がありますし、そもそも大阪方面から地下鉄中央線でお帰りの場合は、本町駅などから座ることはほぼ不可能です。

「座れる」メリットは奈良方面からけいはんな線を利用して、大阪市内などにアクセスする場合に限られます。

まとめ

近鉄けいはんな線は、奈良市の学研奈良登美ヶ丘駅から生駒駅を経由し、東大阪市の長田駅からは大阪メトロ中央線に直通する鉄道路線です。

単純計算をすれば、けいはんな線の運賃の高さ自体は周辺の他路線と比べて歴然としており、対距離ベースでみれば日本の都市鉄道では屈指の「相当高額な運賃」であることは否定できません。

しかし、直通でアクセス可能な大阪都心部の本町エリア、また大阪港・コスモスクエアといったベイエリアなどの地下鉄中央線沿線へは、所要時間も早くなりますので、あえてけいはんな線利用を避ける必要はありません。

また、運賃を安くするための近鉄奈良線経由で移動した場合でも、難波などから地下鉄に乗り継ぐと、結局その地下鉄運賃がかかってしまうため、けいはんな線と大きく運賃差は生じません。

いくら運賃が高いと言っても、首都圏で言えば「東葉高速鉄道」ほどの高額運賃ではありませんので、けいはんな線=高い=使えない=不便と言う訳ではありません。むしろ、便利に使える場合には、どんどん使っていって頂くべき路線、それが近鉄けいはんな線なのです。