この記事では、近鉄奈良駅の近くにある「率川神社」で6月に行われる「三枝祭(ゆり祭)」の内容について解説していきます。
三枝祭は観光客からの知名度が高い祭事と言う訳ではありませんが、大神神社から電車に乗ってササユリを運ぶなど、独特の祭事となっています。
なお、行列などの見学は公道を練り歩くため、全て自由となっています。
※2020年については、実施内容が大幅に変更・縮小されているため、一般参拝者は見学できません。
三枝祭(ゆり祭)の由来
率川神社の「例祭」であり、数ある年中行事の中でも最も重要な祭事である「三枝祭(ゆり祭)」。この祭事は「ゆり祭」という名前の通り、現在では神前に美しい「ササユリ」を飾り付け、酒樽を奉納するという珍しい光景が見られることで知られていますが、その歴史は大変古く、飛鳥時代には既に存在したとされ、大宝元年(701年)に制定された「大宝令」に国家的な祭祀として既に記述されていたとされています。
また、「ササユリ」を飾り付けるという習わしは後世に加えられたものではありますが、そのルーツはやはり非常に古く、率川神社のご祭神である媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)がかつて住んでおられた三輪山の山麓(狭井川沿い)が「ササユリ」が咲き誇る美しい場所であったことにちなむものとされています。
三枝祭の日程
率川神社の例祭でもある三枝祭(ゆり祭)は、
毎年6月17日
に執り行われています。例祭のため日程は固定であり、曜日に関わらずこの日付で行われます。2021年については、実施内容が大幅に変更・縮小されているため、一般参拝者は見学できません。
なお、祭事は6月16日にササユリを奈良に運ぶところから始まっており、16日15時からはまず宵宮祭りが行われ、翌6月17日に例祭が執行されます。更に次の日の6月18日(午前10時~)からは後宴祭が、また午後4時からは奉納演芸も行われ、全体としては3日間に及ぶ祭事となっています。
祭事の流れ・内容
6月17日の三枝祭(ゆり祭)は、神社で儀式が行われるのみならず、まずは「ユリの花」を運ぶところから始まります。ユリの花の運搬は前日の16日に実施されます。
6月16日
9時~「奉献神事道中安全祈願祭(大神神社)」
三枝祭で使用されるササユリは、ご祭神である媛蹈韛五十鈴姫命が三輪山麓に住んでいた際に周囲に美しいササユリが咲いていたとい伝説にちなんだものとなっているため、現在では実際に大神神社(三輪山麓)からササユリを率川神社まで運ぶという儀式が行われています。まず午前9時からは運搬や神事を行う上での安全を祈願する祭事が「大神神社」で行われます。
祭事終了後「ササユリを奈良に運搬(JR線利用)」
安全祈願が終了すると、ササユリは自動車ではなく、しっかりとしたカゴに乗せられた上で、なぜか「JR線」で運搬されます。三輪駅からJR万葉まほろば線(桜井線)を利用してJR奈良駅に運ばれる道中では、一般の乗客の方と同じ車両でササユリも運搬され、なかなか見られないユニークな光景が展開されます。
11時頃~「行列の練り歩き(JR奈良駅~率川神社間)」
電車に乗って無事JR奈良駅に到着したササユリの花は、次は率川神社へと運搬されます。駅前では「大神神社豊年講」の方々が「ささゆり音頭」を踊った後、行列が三条通りなどを練り歩きます。一行は近鉄奈良駅や東向商店街、餅飯殿商店街も経由して率川神社へ向かいます。
この後、12時30分頃からは笹ゆり奉献の奉告祭、15時頃からは宵宮祭が行われ、翌日の例祭への準備が行われます。
6月17日
10時半~「三枝祭(ゆり祭)」
メインの祭事である三枝祭では、「白酒(しろき)」と呼ばれるお酒を「缶(ほとぎ)」、また「黒酒(くろき)」と呼ばれるお酒を「罇(そん)」と呼ばれる酒樽に入れた上で、酒樽の周囲が美しいササユリの花で飾られお供えされます。また折櫃に納められた多数の神饌(お供えの食べ物)も供えられ、4人の巫女が「うま酒みわの舞」を神前で舞う姿も見られます。なお、神事が終了した後には参列者に神酒の振る舞いも行われます。
13時15分頃~「七媛女(ななおとめ)・ゆり姫・稚児行列安全祈願祭及び市内巡行(行列)」
三枝祭が終了した後には、安全祈願の後に再び周辺地域を練り歩く行列が行われます。行列は美しい装束に身を包む「七媛女」を筆頭に、ゆり姫や稚児らが華やかに、にぎやかに練り歩く姿が見られ、初夏の奈良に鮮やかな彩りを添える存在となっています。
この後、18日にも後宴祭や奉納演芸が行われ、一連の祭事は終了することになります。