【秋篠寺本堂】鎌倉時代の美麗な国宝建築の内部には「伎芸天」等の仏さまが多数祀られる

ごあんない

奈良時代の様式に近い鎌倉時代の和様建築

秋篠寺「本堂」は、西大寺の北方約1キロ程度の場所に境内を広げる「秋篠寺」の中心的な仏堂です。森の中にぽっかりと設けられた敷石の空間の中央部に設けられた建物は素朴な美しさを感じさせる佇まいが特徴となっており、寄棟造・本瓦葺きで正面には格子戸・連子窓を使用した建築は規模としては桁行5間(約17.5メートル)・梁間4間(約12メートル)とごく平均的な仏堂のスケールとなっています。歴史としては創建当初の「講堂」の歴史を引き継ぎつつも、部材や構造としては事実上の建立年代として大修理を受けた鎌倉時代の建物であると考えられています。その簡素な造りは様式としては奈良時代の建築に近くなっているため、鎌倉時代の建築様式である大仏様ではなく、純粋な和様建築の典型例として知られており、建造物としての国宝指定を受けている大変貴重な存在となっています。

主な仏像について

伎芸天立像(重文)

秋篠寺の本尊よりも知名度が高い仏像として広く知られる「伎芸天(ぎげいてん)」。伎芸天は、芸能の上達などに関係する天女として信仰を集めてきた存在となっている一方、「伎芸天」を名乗る像は現在この秋篠寺にしか残されておらず、大変貴重な存在となっています。

本堂に安置されている伎芸天立像は、頭部のみが奈良時代の乾漆造のものであり、胴体などはその後の破損により寄木造のものが鎌倉時代に補われた形となっています。像は宝冠や衣の一部も失われているものの、かつては極彩色であった像全体からは「継ぎ目」を意識させるようなことはなく、違和感のない調和した美しさを感じられるほか、そのリアリティは目の前で慈悲溢れる実際の人物と対面しているような気分にさせてくれるほどのものであり、古くから文化人などの関心も集めて来た存在となっています。

薬師如来坐像(重文)

本尊薬師如来坐像は、鎌倉時代後期に造立されたと考えられている像高140センチほどの秋篠寺の本尊であり、伎芸天のような「リアリティ」は有していませんが、過剰な彩色などは一切なく檀像のような美しさを感じさせる佇まいとなっています。なお、そのやや厳めしい表情から貞観様式の特徴も感じられるものの、基本的にはそれよりも後世の作と考えられているということです。

日光菩薩・月光菩薩立像(重文)

現在は薬師如来坐像の両脇侍として安置されている日光菩薩・月光菩薩立像平安時代初期と比較的古い時期に造立された一木造の堂々たる仏さまとなっており、薬師如来などとは異なり、当初は鮮やかな極彩色の仏像であったと考えられているほか、梵天・帝釈天像として造立された可能性もある像となっています。

帝釈天立像(重文)

帝釈天立像は伎芸天と同じく頭部が奈良時代の乾漆造、胴体などは鎌倉時代の寄木造・極彩色となっている後補部分が多い仏像であり、比較的引き締まった厳かな表情をしておられることが特徴となっています。

地蔵菩薩立像(重文)

一木造で彩色などは施されていない素朴な美しさを感じさせる像である地蔵菩薩立像平安時代の中頃に造立されたと考えられており、作風としては造立時期よりも古い藤原時代の様式美を感じさせる佇まいとなっています。

五大力菩薩像

全てが寄木造の五大力菩薩像は、平安時代末期の造立・極彩色の像となっており「五大力菩薩」としての貴重な作例として知られています。堂内西側に本尊などとは別に安置されている像は髪を逆立てた上に強烈な怒りの表情を見せており、畏怖を感じさせるほどの迫力を有しています。

愛染明王坐像

赤々としたお姿が印象的な愛染明王坐像は鎌倉時代末の造立と考えられており、堂内東側の厨子に比較的小さな仏像として単独で納められています。

不動明王立像

寄木造でかつては極彩色であった不動明王立像は愛染明王などと同じく鎌倉時代末に造立されたと考えられています。

十二神将像

小ぶりな人形のようにも見える十二神将像は、寄木造・極彩色で鎌倉時代末期の造立となっており、本尊薬師如来を守護するような形で様々な表情の像が堂内の中央部に左右に6躰ずつ分かれて並べられています。

【秋篠寺】「伎芸天」などで有名な寺院は苔むした樹林の風景も美しい

秋篠寺本堂の風景

本堂は、森が広がる境内地では唯一とも言える広々とした敷石の広場の中央部にその堂々たる佇まいを見せています。装飾性をほとんど感じさせず、屋根、軒、窓も含めて全体がシンプルな造りとなっていますが、その素朴さがむしろ古風な美しさを感じさせてくれる存在となっています。

秋篠寺本堂の連子窓・格子窓・軒などを望む

正面は中央が格子窓、左右両端は連子窓となっていますが、中央の格子の部分から内部に立ち入ることは出来ず、本堂内部の仏像を見る際は左側の側面から参入する形となっています。

秋篠寺本堂を裏手から望む

拝観情報(秋篠寺)

◇拝観時間

・9時30分~16時30分

◇拝観料

・高校生以上500円・中学生以下無料(※拝観には成人の方の同伴が必要です)

※30名以上の団体の場合一般450円、大学生400円、高校生350円

※80名以上の団体の場合一般400円、大学生350円、高校生300円

※障害者は本人様のみ手帳呈示で無料

◇御朱印について

・秋篠寺では通常時は御朱印の授与は行われていません。授与は毎年6月6日、秘仏の大元帥明王像の公開時にその御朱印を頂ける機会が唯一となっています。当日は混雑が予想されますので訪問時はその点をご留意ください。

アクセス

奈良交通バス

・近鉄大和西大寺駅から「押熊」行き乗車、「秋篠寺」下車(運賃190円)、西に徒歩4分

近鉄大和西大寺駅から北西に徒歩約20分

※駐車場は境内北東側にありますが、台数はそれほど多くはありません。またアクセスルートは対向不可能な道をバスが通るような箇所もありますので、公共交通機関を利用して訪れることをおすすめします。

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