【法華寺】光明皇后ゆかりのお寺は「庭園」の美しさでも知られる

ごあんない

概要

法華寺(ほっけじ)は、奈良市北郊の海龍王寺や平城宮跡からもほど近い位置にある比較的大規模なお寺であり、歴史ロマンにあふれる「佐保・佐紀路」を代表するお寺となっています。

代々皇族や貴族の子女が住職となる「門跡寺院(尼寺)」としての歴史を歩んできたお寺は、創建の由緒としては聖武天皇の妻である「光明皇后」ゆかりのお寺として知られており、現在の境内には奈良時代の建築などは残されていないものの、本尊十一面観音や「浴室」の存在など、「光明皇后」の存在を今も感じさせるみどころが複数残されています。

なお、宗派としては独立した「光明宗」に属するお寺となっており、西大寺と深いつながりを有する海龍王寺などと比較すると、その他寺院との密接な関係は見られないのも特徴となっています。

歴史

創建は奈良時代にさかのぼる法華寺ですが、元々この地は奈良時代を代表する有名貴族「藤原不比等」の邸宅であった場所であり、その地を不比等の子女にあたる「光明皇后(聖武天皇の妻)」が受け継ぎ皇后宮として使用していたものを、天平17年(745年)5月に光明皇后の宮寺としたことが創建のルーツとなっています。

当時聖武天皇は「国分寺」と「国分尼寺」を建立するための詔を出しており、この宮寺も創建と同時か、それともしばらくした後からかは判然としていませんが、国分尼寺「法華寺」として整備が図られるようになり、造法華寺司という建設を後押しする役所も設置される中で奈良時代が終わる頃までには伽藍が完成したと考えられています。当時の法華寺は、金堂をはじめ東西塔や阿弥陀浄土院と呼ばれるお堂など、現在よりも特に南側に境内を広げる形のかなり規模の大きな寺院であったと考えられており、その他の奈良の大寺院と同様、一時は大いに繁栄したものと推定されます。

一方で、その他寺院と似たように平安時代になると荒廃が進み、平安末期には平重衡の南都焼討によって法華寺も被害を受けたとされるなど、長い受難の時代を歩むこととなりました。

そして鎌倉時代になると、やはりこちらも西大寺などと同様に復興が進められることになり、まずは東大寺の復興にも尽力した重源上人によって伽藍の復興が推し進められ、その後は西大寺・般若寺など多数のお寺の復興に尽力した叡尊上人によって更に復興が行われ、荒廃状態から一定の規模を取り戻すまでに復活することになります。

その後中世においては複数回の戦災、また慶長伏見地震による被害などで大きなダメージを受け、次の復興は江戸幕府の時代が始まる直前の慶長6年(1601年)豊臣秀頼と秀吉の側室であった「淀君」により本堂などが寄進される時まで持ち越されます。なお、奈良時代から長らく「東塔」は残され続けていましたが江戸時代の宝永地震で倒壊し、その後の伽藍は現在に至るまで主に江戸時代の建築を中心に、一部鎌倉期のものも残される形のものとなっています。

仏像・文化財について

本尊十一面観音菩薩立像(国宝)

法華寺の本尊十一面観音菩薩立像(国宝)は、春・夏・秋の年3回、比較的短い期間のみ公開される貴重な仏さまであり、ほぼ全体を1本の木材から彫り上げた像は光明皇后を模したものであるともされ、そのお姿はなまめかしく実に美麗な佇まいであることで知られています。

維摩居士坐像(国宝)

奈良時代後半に造立された国宝維摩居士坐像(ゆいまこじざぞう)は、興福寺の法会「維摩会」が一時期法華寺で行われていたことに由来して造立された像と考えられており、発話の瞬間を巧みに表現しているなどリアリティ、写実性が強い像となっています。

絹本著色阿弥陀三尊及び童子像(国宝)

秋に公開される「慈光殿」内部に収蔵されており、仏像ではなく平安時代を代表する仏画の一つである「絹本著色阿弥陀三尊及び童子像」温和な色使いが特徴的な存在となっており、阿弥陀如来を描いた部分、観音菩薩と勢至菩薩を表した部分、童子を描いた部分の3つに分かれています。

その他の仏像

本堂には、この他にも内部に多数の納入品が発見された文殊菩薩騎獅像(重文)、また創建期に近い時期に造立された梵天・帝釈天像の頭部であると推定される「二天頭」、また鎌倉時代に造立されたとされる巨大な仏像の「仏頭」、また像高1メートルほどの四天王像などが安置されています。また慈光殿内部にも複数の仏像、復元五重小塔、古瓦などが安置・展示されています。

法華寺のみどころ・風景

本堂

江戸時代が始まる直前に豊臣秀吉の側室であった淀君らの寄進で建立された本堂は、それ以前にあった仏堂の部材を活用する形で建てられており、重厚感あるお堂の内部には本尊の十一面観音菩薩立像を含め、創建期の面影を伝える「二天頭」など複数の仏さまが祀られています。

【法華寺本堂】日本有数の仏像「十一面観音菩薩立像」を安置する空間

華楽園

華楽園は、名勝庭園とは異なり通年公開されているお庭であり、法華寺の先代門主により造園された比較的新しいお庭となっています。庭園内には季節ごとの草花が数百種類咲き誇り、いつ来ても気持ちの良い季節ごとの風景を楽しんで頂けるようになっています。

【法華寺華楽園】季節ごとに様々な草花をお楽しみ頂けるお寺の庭園

名勝庭園

京都御所内「仙洞御所」から移築されたとも伝わる名勝庭園は、基本的には「杜若(カキツバタ)」の名所として広く知られており、客殿や本堂の建築を望みながら池に咲き誇る美しい花を味わって頂けるようになっています。なお、公開は春の4月1日~6月10日のみとなっており、かつて行われていた秋季の公開は近年は実施されていません。

【法華寺名勝庭園】杜若や皐月が美しく咲き誇る静かな空間

浴室

「浴室(からふろ)」は、光明皇后が「福祉事業」の一環として設置した薬草などを煎じて使用する「蒸気風呂」であり、現在の建築は江戸時代のものとなっていますが、奈良時代からの歴史を反映した法華寺を象徴する建物の一つとなっています。なお、現在では6月に主に信徒向けに浴室が開放され「蒸気風呂体験」が行われています。

【浴室(法華寺)】光明皇后が設けた蒸し風呂は「福祉のはじまり」を象徴する存在

光月亭

華楽園の北西側にある「光月亭」は、市内月ヶ瀬地区で18世紀に建てられた農家(庄屋)の住居建築を移築して来たものであり、お寺では少し珍しい「茅葺き屋根」がよく目立つ存在となっています。

【光月亭(法華寺)】お寺の敷地内にある重厚な「茅葺き屋根」の建築

鐘楼堂

鐘楼堂は「袴腰」と呼ばれる美麗な建築様式を持つ法華寺の「梵鐘」を吊り下げる建物であり、本堂と同時期にあたる慶長年間(江戸時代が始まる直前頃)に建立されたものと考えられています。

【法華寺鐘楼堂】美麗な「袴腰」が特徴の鐘楼建築

横笛堂

横笛堂は、鎌倉時代に建立された現在の法華寺境内では最も古い建築物であり、平家物語に登場し悲恋を繰り広げた「横笛」と呼ばれる人物ゆかりの建物として知られています。

【法華寺横笛堂】『平家物語』ゆかりの法華寺境内最古の建築

護摩堂

護摩堂は近年になって再建(前身のお堂は室町時代に失われました)された護摩法要が行われる建物であり、池の中に浮かぶような佇まいが特徴となっており、6月には花しょうぶが美しく咲き誇ることでも知られています。

【法華寺護摩堂】真新しいお堂の周囲には美しい花しょうぶが咲き誇る

慈光殿

慈光殿は、法華寺の所有する一部の文化財の「収蔵庫」として用いられている建物であり、国宝絹本著色阿弥陀三尊及び童子像や複数の仏像、また復元された五重小塔、古瓦や土器なども展示する空間となっています。なお、公開は正倉院展の期間に準ずる時期のみとなっています。

【法華寺慈光殿】国宝「絹本着色阿弥陀三尊および童子像」などがご覧頂ける収蔵庫

薬師堂

法華寺「薬師堂」

薬師堂は、境内東側にひっそりと佇むごく小さなお堂であり、本尊は薬師如来となっています。

稲荷神社

法華寺「稲荷神社」

薬師堂のすぐそばには、「稲荷神社」と呼ばれる小さな神社もあります。この周辺は、参拝者の数も少なく日中でも薄暗いため実に静かな雰囲気が漂っています。

南大門

南大門は、江戸時代に入る直前の時期に本堂や鐘楼堂と合わせる形で建立されたものと考えられる重厚な四脚門であり、境内外の道路沿いから南大門越しに本堂の美しい風景を望んで頂けるようになっています。

【法華寺南大門】本堂を真正面に望む位置に建つ重厚な四脚門

赤門

法華寺「赤門」

赤門は、法華寺の現在の入り口として使用されている門であり、門を入ってすぐの位置には拝観受付が設けられています。

阿弥陀浄土院跡

法華寺旧境内「阿弥陀浄土院」跡は、法華寺の現在の境内地からは南に少し離れた場所にある遺跡であり、現在は石碑と案内板以外目立った痕跡はありませんが、かつて光明皇后が亡くなられた際にその追悼を行うために建立された子院であると考えられています。

【法華寺旧境内阿弥陀浄土院跡】―光明皇后を偲ぶ空間として創建された子院

歌碑・句碑

法華寺境内には合わせて3つの歌碑・句碑が設置されています。

一つは有名な歌人會津八一氏による歌碑であり、「藤原の大き后をうつしみに あひみるごとくあかきくちびる」の歌が記されています。

また万葉歌人の山部赤人による和歌「いにしえの古き堤は年深み 池の渚に水草生ひにけり」が記された歌碑も設置されています。

句碑としては昭和に活躍した俳人橋本多佳子氏のものが設置されており、「古雛 をみなの道ぞ いつくしき」の俳句が記されています。

年中行事

3月上旬~中旬頃(年によって展示期間は異なります):古代ひな人形展

・京都の御所人形や歴代法華寺門主が大切にされてきた人形などが展示される行事となっています。

3月20日~4月7日:春季「国宝十一面観音菩薩立像」

4月1日~7日:ひな会式

・期間中は特別公開中の本尊十一面観音の前に50体を越える「善財童子像」が祀られます。

4月1日~6月10日:国史跡「名勝庭園」特別公開

7月17日:蓮華会式

・本堂前に設けられた「茅の輪」をくぐって夏に流行する病気にかからないように祈願できるほか、茅葺き屋根の「光月亭」においては境内で収穫した梅干を使用した「茅の輪がゆ」の振る舞いも行われます。また夜間には燈籠の光が本堂一帯を美しく包み込む風景もご覧いただけるようになっています。

毎年「正倉院展」の期間:秋季「国宝十一面観音菩薩立像」・「国宝阿弥陀三尊及び童子像」特別開扉

拝観情報

拝観時間

9時~17時(16時30分までに受付をお済ませください)

拝観料

◇本堂通常期

大人(高校生以上)500円・中学生300円・小学生200円・身障者250円

◇本尊公開時の本堂

大人(高校生以上)700円・中学生500円・小学生300円・身障者350円

※本尊公開期間 3月20日~4月7日・6月5日~10日・毎年正倉院展の期間

◇華楽園

大人(高校生以上)300円・中学生200円・小学生100円・身障者150円

※御朱印の授与は本堂で行われています。

※境内の写真撮影は、個人が観光目的で撮影する場合は許諾なく可能ですが、メディアに掲載するような場合は事前の許可が必要です。

アクセス

各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR奈良駅(西口)15番バス乗り場、近鉄奈良駅13番バス乗り場から「大和西大寺駅」行き乗車、「法華寺」下車、西に徒歩4分

ぐるっとバス(土日祝日・観光シーズンのみ運行)

・近鉄奈良駅8番バス乗り場、JR奈良駅(西口)16番バス乗り場から「ぐるっとバス平城宮跡ルート」乗車、「法華寺・海龍王寺」下車、西に徒歩4分

近鉄新大宮駅から北西に徒歩16分

※拝観受付の南東側に駐車場有り(普通車約50台・拝観者は無料)

近隣スポット

春日社から南西に徒歩3分・海龍王寺から南西に徒歩5分・宇奈多理坐高御魂神社から北東に徒歩6分・東院庭園から北東に徒歩7分・平城宮跡遺構展示館から南東に徒歩9分・造酒司井戸から南西に徒歩9分・コナベ古墳から南に徒歩10分

法華寺周辺地図