【春日大社】原始林を含む広大な境内地を有する「世界遺産」は「藤原氏」ゆかりの神社

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春日大社とは?

春日大社(かすがたいしゃ)は奈良公園の東側一帯、「春日山(御蓋山)」の麓を中心としたエリアに広大な境内地、また本殿周辺に留まらない多数の摂末社(社殿)を有する奈良市・奈良県内では最大級の神社で、「古都奈良の世界遺産」の一部に含まれる存在となっています。

歴史は平城京以前の飛鳥時代には遡りませんが、平城京に遷都された奈良時代に鹿島神宮から神様をお迎えし成立し、その後は有名な貴族「藤原氏」の「氏神様」として発展していった歴史を持っており、奈良から都が移ったあとも「興福寺」などとのつながりを強化しながらその規模を維持発展させ、現在に至るまで「奈良を代表する神社」として名高い存在となっています。

現在では「パワースポット」として若い方も多数参拝するようになった神社は、「藤原氏」の氏神としてのトレードマークとも言える「藤」の美しさや原始林に囲まれた境内の風景など、「自然」の美しさでも日本有数の存在となっており、早朝などを除いては年間を通して常に多数の参拝者で本殿一帯が混雑するような状況となっています。

春日大社の歴史・特徴

「藤原氏」の氏神としての歴史を一貫して歩んだ神社

春日大社の成立は、奈良時代が始まった頃、春日大社本殿の裏山にあたる「御蓋山」鹿島神宮から「武甕槌命(タケミカヅチノミコト)」と呼ばれる神様をお迎えしたことにそのルーツを持つとされています。

またその後神護景雲2年(768年)11月9日には、当時の称徳天皇が出された勅命によって社殿が建立され、これが現在までの「春日大社」そのものの創建の由来とされています。この時ご祭神として「武甕槌命(タケミカヅチノミコト)」様のみならず、「香取神宮」からは「経津主命(フツヌシノミコト)」大阪の「枚岡神社」から「天児屋根命(アメノコヤネノミコト)」と「比売神(ヒメガミ)」と呼ばれる神様も合わせてお招きしてお祀りすることになり、現在でもこれらは「春日神」と呼ばれる存在となっています。

この創建にあたっては、奈良時代から強い権勢を誇った藤原氏が大きく関わっていたとされ、創建期から「藤原氏の氏神」としての歴史を歩み始めた春日大社は、藤原氏が一層絶大な権力を有するようになる平安時代になると、「奈良の都」がなくなったにも関わらずむしろ発展していくことになります。春日大社には藤原氏より様々な「お墨付き」が与えられ、寂れていく奈良においては例外的な存在としてその存在感を高めていくことになるのです。

「興福寺」との強い関係性

春日大社が発展した平安時代、その中期を過ぎるころからは、同じく「藤原氏」と深いつながりを持ち、「藤原氏の氏寺」と呼ばれる興福寺と春日大社とのつながりも深まっていく事になります。神様は仏さまが姿を変えたものであるという本地垂迹説・神仏習合の文化が浸透していく中では、春日大社の存在感は守られつつも、興福寺の守護神的な役割として春日大社が位置付けられることになり、こちらも例外的に平安遷都後も勢力を維持拡大し、奈良を事実上支配するまでになった「興福寺」との互恵的な関係がどんどん強まっていくことになりました。

いわゆる「おん祭」も平安末期から興福寺が主導する形で開始されることになり、現在の奈良にも面影を残す春日大社と興福寺の深いつながりは、この後廃仏毀釈・神仏分離の時代まで長らく続くことになったのです。

手つかずの「自然」に包まれる

春日大社は、その1300年ほどの長い歴史の中で、神社周辺、また東側に広がる広大な「春日山」の森において狩猟・採集・伐採を禁じてきました。そのため神社の東側一帯は「春日山原始林」と呼ばれ世界遺産にも登録されており、山域の大部分は立ち入り出来ないものの、神社周辺においても巨樹などがあちこちでご覧いただけるなど、見る者を圧倒するほどの「自然」に包まれています。また、「森の中」にある神社は、藤原氏の氏神様らしく「藤の花」が野生のものも含めてあちこちで咲き誇ることでも知られており、特に春のゴールデンウイーク頃には原始林の自然、新緑、藤の花を全て味わって頂けるという実に贅沢な体験もして頂けるようになっています。なお、手つかずの自然ということもあり、植林されることが多い「桜」については春日大社境内には見られません。

春日大社の「宝物」について

春日大社は、明治の神仏分離・廃仏毀釈の流れを経て以降は基本的に独立した存在となり現在に至っていますが、春日大社は興福寺などのように顕著な「天災」・「戦災」、また「荒廃」を経験することなく1300年の歴史を歩んできた大変奇跡的な歴史を有する神社でもあり、その長い歴史を物語るように奉納されたものを含め多数の宝物を所蔵していることでも知られています。

宝物は通常時は「宝物殿」において選りすぐりの宝物をご覧いただけるようになっているほか、例えば2018年には奈良国立博物館において特別展示として「春日大社のすべて」が開催されたように、宝物が神社の外で展示される場合もあります。

宝物には、「蒔絵箏」・「平胡籙」・「秋草蒔絵手箱」などといった貴族文化を感じる工芸品、また「金地螺鈿毛抜形太刀」・ 足利義満が奉納した「金装花押散兵庫鎖太刀」・源義経が奉納したと伝わる「赤糸威大鎧」 ・楠木正成が奉納したと伝わる「黒韋威矢筈札胴丸」といった武士ゆかりの重厚な武具・武器の数々があり、各時代の太刀などを美麗な状態で保存している神社は全国でも珍しい存在となっています。このほかには春日大社の境内の様子を描いた「春日曼荼羅」鹿をモチーフにしたユニークな「鹿曼荼羅」や絵巻物といった「春日美術」、そして奉納される芸能(舞楽など)で使用される面など祭礼と深いつながりを持つものも所蔵しており、全国屈指の「国宝」や「重要文化財」の宝庫となっています。

混雑を避けるには?

春日大社は、近年の訪日外国人観光客の増加もあり、「本殿・回廊」一帯は日中時間帯はほぼ通年に渡って一定の混雑がみられます。かなりの人混みは、「初詣期間」や「万燈籠」開催時のみなどに限られますが、すっきりとした空間でお参りなどがしたい場合、基本的に朝10時以前といった「早い」時間帯にお越しいただく必要があります。

また、本殿一帯以外では夫婦大國社・若宮神社周辺も人が多いことがありますが、問題になるほどの混雑は滅多に見られません。むしろ、周辺の「若宮十五社」エリアは比較的静かな環境でお参りできるようになっていますので、本殿周辺が混雑している際には、ぜひ南側の若宮十五社エリアにも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

本殿の拝観日程の確認は必須

混雑を回避したとしても、もう一つ留意しておかなくてはならないのが様々な「日程」。春日大社では年間を通して様々な行事(儀式)がとり行われているため、そもそも本殿一帯の特別参拝に参拝できない日程が多く設けられています。本殿(特別参拝)の拝観不可の日程は思いのほか多いですので、参拝を予定される場合には春日大社の公式的な情報であらかじめ確認しておくことをおすすめします。

境内のみどころ・風景

境内周辺地図

表参道周辺

春日大社の「表参道」は、奈良公園内、興福寺境内のそばにある「一の鳥居」から本殿一帯まで1キロ以上に渡り伸びています。途中沿道には「春日若宮おん祭」ゆかりのスポットをはじめ、奈良公園内の自然、また広大な芝生が広がる「飛火野」、奈良の鹿を保護する「鹿苑」春日大社萬葉植物園など多数のみどころがあり、参拝前後に立ち寄りやすくなっています。

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回廊・本殿周辺

春日大社本殿は、「回廊」と呼ばれる建物に囲まれた内部にあり、本殿一帯のみは特別参拝料金(500円)が必要となります。参拝料金が必要なエリアには、本殿の他にも多数の末社があるほか、春日大社の「神山」である御蓋山に祈りを捧げる空間も設けられているなど、春日大社の深い歴史を実感して頂ける空間となっています。なお、西側・南側の回廊沿いは料金不要となっており、回廊内も参拝所(幣殿・舞殿)前・「砂ずりの藤」までは自由にお入り頂けるようになっており、多数の観光客でにぎわいを見せています。

「若宮十五社」周辺

「若宮十五社」は、春日大社の境内南側にあり、春日大社本殿に次ぐ規模を持つ摂社「若宮神社」を中心に周辺に広がる計15か所の末社・遥拝所群であり、「若宮十五社巡り」として順にお参りすることで、多種多様な「ご利益」にあずかることが出来るとされています。

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その他摂社・末社

春日大社には、境内・境内外も含めて61もの関連する摂社・末社があります。このうち多くは境内の本殿一帯及び「若宮十五社」に含まれていますが、近鉄奈良駅周辺にも末社が複数あるほか、春日山原始林の内部にも摂末社が設けられており、立ち入りは原則不可となっているなど、様々な場所に様々な由緒を持つ神社が設けられています。

国宝殿

春日大社「国宝殿」は春日大社が所蔵する国宝・重要文化財などの貴重な「宝物」を収蔵、展示するスペースです。春日大社は奈良では珍しく平安時代に栄えた神社となっており、「平安の正倉院」と呼ばれるほどに当時の貴重な文化財が多数残されています。貴重な武具や王朝時代の美意識を感じさせる工芸品などを間近にご覧いただけますので、参拝時にはぜひ国宝殿にもお立ち寄りになることをおすすめします。

萬葉植物園

萬葉植物園(まんようしょくぶつえん)は、飛火野からも近い表参道の途中にある春日大社が運営する植物園です。この植物園では日本古来の植物を多数栽培しているほか、春日大社のトレードマークとも言える「藤」の花が多数咲き誇る空間としても知られており、大型連休頃の藤のシーズンになると、様々な種類の藤を一目見ようと大勢の観光客が訪れます。

境内の自然・「藤」

春日大社の境内地は、春日山原始林から続くうっそうとした森の中に広がっており、樹齢が1000年近い巨樹などもあるなど、手つかずの自然に包まれた風景が広がっています。また、春日大社の象徴とも言える「藤」の花は、萬葉植物園の藤のように丁寧に手入れされているもののほかにも、随所に「野生の藤」が生育しており、春の大型連休頃になると境内のあちこちで藤のある風景をご覧いただけるようになっています。

その他基本情報

御本殿参拝所の開門時間:夏期(3月~10月)6時30分~17時30分・冬期(11月~2月)7時~17時

本殿特別参拝の拝観時間:9時~16時

※本殿参拝については、儀式の実施に伴い参拝不可の日程が比較的多いため、公式的な情報によって事前にご確認下さい。

特別参拝の料金:初穂料500円

交通アクセス

バスによるアクセスが便利です

春日大社へのアクセスには、奈良交通の路線バスもしくは土日祝日を中心に運行される「ぐるっとバス」のご利用が便利です。

バスは奈良交通バスの「春日大社本殿」行きが最も早くアクセス可能ですが、本数の多い市内循環バスでも参道沿いにアクセスすることが可能となっています(奈良交通バスの運賃は220円・奈良交通の各種1日乗車券も使用可能)。またぐるっとバスはJR奈良駅からの便はありません(2023年現在)が、運賃100円とリーズナブルになっています。

近鉄・JR線各駅からのアクセス

・JR奈良駅(東口)2番バス乗り場・近鉄奈良駅1番バス乗り場から「春日大社本殿」行き乗車、終点「春日大社本殿」下車、本殿一帯は東にすぐ

・JR奈良駅(東口)1、2番バス乗り場・近鉄奈良駅1番バス乗り場から「市内循環外回り」・「高畑町」・「中循環外回り(近鉄奈良駅からのみ)」・「山村町」・「藤原台」・「鹿野園町」・「奈良佐保短期大学」行き乗車、「春日大社表参道」下車、本殿周辺まで東に徒歩約10分

・近鉄奈良駅ぐるっとバス専用バス乗り場から「ぐるっとバス大宮通りルート」乗車、「春日大社本殿」下車、本殿一帯は東にすぐ

春日大社の「バス乗り場」周辺地図

タクシーによるアクセス

春日大社は企業関係の方の参拝も多く、駅から「タクシー」を利用してアクセスし、参拝なさる方も多くなっています。

混雑状況や信号の待ち時間などにより差異がありますが、渋滞がない場合はJR奈良駅からタクシーを利用する場合、運賃は約1500円以内程度、近鉄奈良駅からタクシーを利用する場合運賃は約1000円前後と考えられます。

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徒歩によるアクセス

春日大社に徒歩でアクセスされる場合、JR奈良駅からの場合も、近鉄奈良駅からの場合も基本的には事実上の「参道」である「三条通り」をひたすら東に進んで頂くルートをとることをおすすめします。

JR奈良駅からの場合は一度も曲がったりすることなく、駅前から三条通りを東に進むと最終的に春日大社の回廊沿いに到着します。所要時間は約35~40分程度です。

近鉄奈良駅からの場合は「東向商店街」を南に進み、三条通りに出ればあとは同じように東にひたすら進むのみです。所要時間は約25~30分程度です。

なお道中は一部で上り坂もあり、距離も長いため、健脚の方以外はバスなどをご利用になることをおすすめします。

マイカーによるアクセス

春日大社には、マイカーでお越しの方向けの駐車場も設置されていますが、台数はそれほど多くなく「バス・乗用車合わせて100台駐車可能」となっているため観光シーズンなどには満車となる可能性も十分に考えられます。

利用時間

・3月~10月 7時30分~17時
・11月~2月 7時30分~16時

駐車料金

乗用車1000円・バイク300円(時間制の料金ではなく、1日の均一料金となっています。)

駐車場周辺地図