【霊山寺本堂】鎌倉時代の重厚な「国宝建築」には多数の仏さまをお祀りする

ごあんない

霊山寺「本堂」は、富雄川沿いの山林に境内を広げる「霊山寺」境内で最大規模の建築であり、本尊薬師如来、また脇侍の日光・月光菩薩をはじめとする多数の仏像を安置する空間となっているお堂です。

鎌倉時代の弘安6年(1283年)に建立された本堂は建築そのものが「国宝」に指定される大変貴重な存在であり、規模としては桁行五間・梁間六間のスケール、また建築様式としては大仏様と呼ばれる中国由来の建築技法ではなく、「和様」と呼ばれる日本古来の手法に比較的忠実なものとなっており、本瓦葺・入母屋造の重厚な建築となっています。また、細部の様式としては正面には突き出した屋根の部分である「向拝」が設けられているほか、「組物」と呼ばれる屋根(軒)を支える部分については「尾垂木」と呼ばれる長く突き出し下を向いた部材がアクセントとなっており、「蟇股」と呼ばれる装飾性の強い部分には「薬壺」の意匠が刻まれている特徴を持っています。この他には「木鼻」と呼ばれる柱の上部を貫く部分の両端には動物のような意匠が取り入れられて、この部分は「大仏様」の様式に沿ったものとなっています。

堂内の仏像について

本尊薬師如来坐像(重要文化財)

治暦2年(1066年)に造立された平安時代の仏像である本尊薬師如来坐像は、厨子(こちらも重要文化財)に納められた秘仏として滅多に公開されることがなかったこともあり、1000年前のものとは思えないほどに美しい状態を保つ仏さまとなっており、大きな光背を持つ一方、太めの佇まい・引き締まった表情という特徴を持ち、古式に則った造形美を感じさせる存在となっています。

なお、ご本尊は現在は秘仏ではないものの、公開されている時期はお正月の3が日や秋の特別公開期間のみとなっていますのでご注意ください。

日光・月光菩薩立像(重要文化財)

本尊薬師如来坐像の脇侍である日光・月光菩薩立像は、こちらも古風な佇まいを見せる像高90センチほどの仏様であり、本尊と同様に大きな光背を有する姿が印象的な像となっています。両脇侍には、それぞれの左右の下端部に十二神将像が3体づつ描かれており、こちらも大変貴重な作例にもなっています。なお、公開時期は本尊と同じとなっています。

十二神将立像(重要文化財)

薬師三尊のそばに本尊を守護する形で設けられている十二神将立像は鎌倉時代に造立された仏像となっており、12体がまるで何かのフィギュアであるかのように高さの異なる台座に重なり合うように並べられており、激しい怒りを見せるその表情などはどこかコミカルな雰囲気を感じさせる存在となっています。

十一面観音立像(重要文化財)

平安時代初頭、9世紀頃に造立されたと考えられる十一面観音立像は、「檀像」と呼ばれる彩色を基本的に行わない形式の像となっており、頭部が著しく大きく、その他が小さく見えるという独特の姿も含め、神秘的な雰囲気を強く感じさせる霊山寺を代表する仏像の一つとなっています。なお、十一面観音は秋季の特別公開時のみご覧いただけるようになっています。

地蔵菩薩立像(重要文化財)

鎌倉時代の康元元年(1256年)に造立された地蔵菩薩立像は、光背・台座・錫杖なども含めて造立当初から変わらない佇まいとなっている美しい地蔵菩薩さまであり、袈裟については、条の部分は截金による卍字つなぎ文様となっており、袈裟裏の見える部分については、緑青地に截金の笹蔓文様となっています。端正かつ繊細な佇まいが際立つ奈良を代表する地蔵菩薩の一つとして、霊山寺拝観時にはぜひ見ておきたい存在となっています。

持国天・多聞天立像(重要文化財)

十二神将像と同じく本尊を守護する形で設けられている持国天・多聞天立像は、鎌倉時代後期の弘安年間に造立された仏像であり、像高120センチほどの仏さまは十二神将像と同様生き生きとした雰囲気を感じさせる存在となっています。

阿弥陀如来坐像(重要文化財)

平安時代後期に造立された阿弥陀如来坐像は、かつては「阿弥陀堂」のご本尊であったものであり、像高80センチほどの小ぶりなお姿は穏やかでやさしげな印象を感じさせるものとなっています。

大日如来坐像(重要文化財)

阿弥陀如来と同じく平安後期の造立と考えられる大日如来坐像は、こちらもかつての「大日堂」のご本尊であったものとなっています。像には唐草文をモチーフにした胸飾りも付けられており、飾りに据え付けられたガラス玉などは少し珍しい存在となっています。

毘沙門天立像(重要文化財)

12世紀頃の造立と考えられる像高70センチほどの小さな毘沙門天像は、右手に戟(ほこ)を持つ威厳ある佇まいの一方で、少しだけ腰をひねった姿などからはスマートな印象も感じられる存在となっています。なお、拝観は特別公開時のみ可能となっています。

薬師三尊懸仏(重要文化財)

かつては秘仏であったご本尊の代わりに厨子の前で参拝することができる「前立仏」として設けられた薬師三尊懸仏は、南北朝時代の貞冶5年(1366年)の造立となっており、重要文化財にも指定される日本における懸仏の代表的な存在の一つとなっています。

霊山寺本堂の風景

霊山寺本堂へとのぼる石段

本堂へは、霊山寺の納経所・寺務所周辺からアクセスすることも出来ますが、入り口の鳥居から続く参道沿いに設けられた石段を上って参拝するのがおすすめとなっています。苔むした地面と木々に覆われた空間に伸びる石段と重厚な本堂の織りなす風景は、どこか矢田寺にも似たような雰囲気を感じさせるものであり、奈良市内のお寺としては比較的珍しい風景となっています。

霊山寺「本堂」の風景

鎌倉時代の密教寺院における建築の典型例を示すとも言える霊山寺の本堂は、建築様式は異なりますが、市内では円成寺や西大寺の本堂と似たような規模のお堂となっており、どの角度から見ても重厚感を感じることが出来る中世建築となっています。

拝観情報(境内共通)

◇拝観時間

境内・バラ園8時~17時・本堂10時~16時

◇拝観料(通常期)

大人(高校生以上)500円・小中学生250円

※団体(50名以上)の場合は大人400円・小中学生200円

◇拝観料(バラ見頃の5月・6月・10月・11月)

大人(高校生以上)600円・小中学生300円

※団体(50名以上)の場合は大人500円・小中学生250円

※いずれの期間も、障害者は手帳呈示により本人様のみ無料

アクセス

本堂は霊山寺の拝観受付から南西に徒歩3分ほど離れた高台に位置しており、参道沿いからは石段などで上って頂く必要があります。

※霊山寺拝観受付までのアクセス

奈良交通バス

近鉄富雄駅から「若草台」行き乗車、「霊山寺」下車、南に徒歩2分

近鉄学園前駅から「西千代ケ丘二丁目」行き乗車、終点「西千代ケ丘二丁目」下車、南に徒歩15分

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