唐招提寺とは?
概要
唐招提寺(とうしょうだいじ)は、奈良公園・東大寺などのある奈良駅周辺エリアからは少し離れた「西の京」エリア、「薬師寺」とも比較的近い位置にある奈良有数の規模を誇るお寺です。
唐招提寺は奈良時代に中国(唐)から渡来して日本に仏教文化を本格的に普及させることに尽力した「鑑真和上(がんじん)」が創建したお寺として知られており、大変有名な僧侶とは言え「個人のお寺」であったため「南都七大寺」には含まれていませんが、仏教の戒律研究の拠点として大いに栄えた歴史を持っています。また、戦火を比較的免れてきたために、「金堂」・「講堂」・「宝蔵・経蔵」などは奈良時代から残されてきた建築物となっており、その華美な印象を感じさせない静かな雰囲気の伽藍(境内)と合わせ、日本有数の美しい寺院としても知られています。
歴史
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唐招提寺は、日本に正確な仏教の戒律を伝授する手法を持ち込んだ人物として知られ、幾度となく渡航に失敗しつつ、最後は失明した後にようやく日本へと渡ることに成功した中国(唐)の僧侶である「鑑真和上」個人が創建したお寺となっています。
鑑真和上は、天平勝宝5年(754年)に来日に成功し、日本の仏教に正確な戒律伝授のシステムを整えることに尽力しますが、天平宝字3年(759年)にこの地を朝廷から与えられ、お寺を創建することになります。鑑真和上は4年後には亡くなったため伽藍(境内地)の整備の多くは死後となっていますが、弟子たちがその遺志を継いで金堂をはじめとする境内の建築物を整備していき、奈良時代の終わりごろから平安時代の初めごろにかけて順次整備が進められ、僧侶らが「律宗」の仏教戒律研究を行う拠点として機能することになりました。
その後の唐招提寺は、平安末期には荒廃状態となり興福寺の末寺となったとも言われていますが、鎌倉時代には中興を成し遂げ「覚盛上人」と呼ばれる僧侶が戒律の復興と境内の建築物の復興に尽力し、「鑑真の再来」とも言われるほどの繁栄をみせたとも言われています。
唐招提寺はその後も往時の勢いこそ失われても、戦国時代の大きな戦火も免れ、江戸時代にも一定の規模を守り、廃仏毀釈の時代もどうにかくぐり抜けるなど、奈良のその他のお寺と比べると創建当初の面影を強く残したまま歴史を積み重ね、現在は奈良を代表する観光地の一つとして大いににぎわいを見せる空間となっています。
主要な文化財(仏像)
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唐招提寺は奈良でも屈指の「国宝」の宝庫として知られており、近隣の薬師寺と比較しても国宝級の文化財が充実した空間となっています。国宝の多くは「金堂・新宝蔵」に集められる形となっており、拝観もして頂きやすい環境となっています。
金堂の本尊「廬舎那仏坐像」・「薬師如来立像」・「千手観音立像」は奈良時代末~平安時代初頭に造立された重厚感ある仏教美術となっている一方、新宝蔵には「旧講堂木彫群」と呼ばれる唐風の一風変わった素朴な仏像が収蔵されており、様々な仏像の雰囲気を味わって頂けます。
境内・みどころのご案内
唐招提寺は、奈良時代からの伽藍が比較的良く残されており、奈良市内の寺院の中でもとりわけ落ち着いた風情・歴史ある風情が広がっています。
境内では本尊を安置する「金堂」・平城京ゆかりの建築である「講堂」・唐風の仏像を安置する「新宝蔵」は通年拝観可能である他、その他に特別公開時のみ拝観可能な場所もあります。
なお、境内は広く散策可能であり、美しい自然・季節折々の花なども魅力の一つです。
金堂 | 奈良時代にさかのぼる唯一の「金堂建築」・圧巻の本尊(三尊)を祀る |
講堂 | 平城京にルーツを有する建築物として唯一残される・弥勒如来像等を祀る |
鼓楼 | 鎌倉期に建立された仏舎利を奉安する小さな建物・「うちわまき」の会場となる |
礼堂 | 鎌倉期に建立された大変細長い建物・「釈迦念仏会」に合わせて特別公開 |
宝蔵・経蔵 | 奈良時代から残される「校倉造」の貴重な建築 |
新宝蔵 | 唐風の「旧講堂木彫群」を中心に貴重な文化財を所蔵・別途拝観料要 |
開山堂 | 国宝の鑑真和上坐像の精巧なレプリカを通年公開 |
御影堂 | 興福寺一乗院由来の建築を移築・国宝の鑑真和上坐像を安置する空間 |
鑑真和上御廟 | 唐招提寺を創建した鑑真和上の墓所・古墳のような独特の空間 |
戒壇 | 旧戒壇堂の跡地・日本国内とは思えない独特の風景が広がる |
中興堂 | 中興の祖「覚盛上人坐像」を祀る空間・うちわまき当日のみ拝観可能 |
地蔵堂 | 地蔵菩薩坐像を祀る空間・8月の地蔵盆期間のみ拝観可能 |
醍醐井戸 | 鑑真和上自ら掘り当てたとも言われる古井戸 |
御影堂供華園 | 鑑真和上の故郷から送られた「瓊花(けいか)」が咲き誇る空間 |
本坊 | 蓮の名所として知られる |
南大門 | 拝観受付のある唐招提寺の入口・昭和期の再建 |
西方院 | 境内から西に離れた場所にある塔頭寺院・快慶作の阿弥陀如来像を祀る |
主な年中行事・特別公開
唐招提寺では、年間を通して数多くの行事が行われます。最も知名度が高いのは5月の「うちわまき」であり、整理券配布なども行われます。
特別公開については、行事に合わせて公開される(中興堂・礼堂・地蔵堂・鑑真和上坐像)形となっており、一部で拝観料が必要となります。
日時 | 行事 | 場所・会場 |
4月中旬~5月中旬 | 「御影堂供華園」の特別開園期間 | 御影堂供華園 |
5月19日 | 中興忌梵網会 | 講堂・講堂前舞台 |
5月19日 | うちわまき | 鼓楼前特設会場 |
5月19日 | 「中興忌梵網会」に伴う中興堂特別公開 | 中興堂 |
6月5日~6日 | 開山忌舎利会 | 講堂・礼堂東室(御影堂) |
6月5日~7日 | 「開山忌」に伴う鑑真和上坐像の特別公開 | 新宝蔵(御影堂) |
8月23日~24日 | 「地蔵盆」に伴う地蔵菩薩立像の特別公開 | 地蔵堂 |
毎年中秋名月の日 | 観月讃仏会 | 金堂(御影堂前庭) |
10月21日~23日 | 釈迦念仏会 | 礼堂 |
10月21日~23日 | 「釈迦念仏会」に伴う礼堂特別公開 | 礼堂 |
12月15日 | お身拭い | 金堂 |
12月31日 | 除夜の鐘 | 鐘楼 |
1月1日 ・3日 | 修正会・餅談義 | 礼堂 |
1月15日 | 大般若転読法要 | 礼堂 |
2月15日 | 涅槃会 | 礼堂 |
拝観情報
拝観時間:8時30分~17時(最終受付は16時30分)
※境内拝観も含め拝観料が必要なため、境内の散策も拝観時間内のみ可能です。
※正月・観月会の際には無料拝観時間の設定が別途あり
唐招提寺(境内・金堂・講堂など)の通常拝観料、新宝蔵・各特別公開の拝観料は以下の通りとなっています。唐招提寺は東大寺や興福寺とは違い「境内散策」についても拝観料が必要です。
拝観料 | |
境内・金堂・講堂など | 1000円(2019年度中は600円) |
新宝蔵 | 200円 |
鑑真和上坐像特別公開 | 500円 |
礼堂特別公開 | 200円 |
なお、拝観料についてはこのほか学生料金、団体割引・身障者割引の適用などもありますので、詳細は上記関連記事をご覧ください。
唐招提寺の御朱印の授与、また縁起物の販売などについては金堂から東に少しだけ離れた位置にある御朱印授与所(売店の脇)で行われています。売店では専用の御朱印帳のほか、「うちわまき」で撒かれるものと同じ形のうちわも販売されています。
なお、拝観にあたっては御朱印帳を先に授与所に預けた上で、拝観後に受け取る形が基本ですので、拝観の受付を済ませて境内に入ったら、まず授与所へ行くようにして下さい。
アクセス(電車・バス)
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近鉄西ノ京駅から北に徒歩約8分
近鉄奈良駅(8番バスのりば)・JR奈良駅(東口6番バスのりば)から奈良交通バス「奈良県総合医療センター」行き乗車、「唐招提寺」バス停下車すぐ
※春日大社本殿バス停、東大寺大仏殿・国立博物館バス停、県庁前バス停なども利用可能
唐招提寺については、各地から直接アクセスされる場合は、近鉄電車(橿原線)の「西ノ京駅」下車が便利です。
西ノ京駅は京都方面からの場合直通で行ける場合もあるほか、大阪難波・神戸三宮方面からの場合は大和西大寺駅で乗り換えることでスムーズにアクセス出来ます。
近鉄奈良駅・JR奈良駅・東大寺・奈良公園方面からの場合は「奈良県総合医療センター」行きのバスをご利用いただくことで、乗り換えなしでアクセス可能です。
なお、車でアクセスする場合については、唐招提寺が運営する「有料駐車場」が利用可能です。駐車場は拝観受付の東側すぐの場所にあり、乗用車の場合1回500円でご利用いただけます。
車でのアクセスについては、観光シーズンや土日祝日には渋滞が発生する可能性がある他、「うちわまき」行事当日は駐車場が混雑する場合があります。
周辺のみどころ・観光スポット・周辺地図
薬師寺(玄奘三蔵院伽藍)へは南に徒歩9分ほどです。唐招提寺の拝観受付の右側から南に進む道がありますので、そちらを進んでいきます。
薬師寺(白鳳伽藍)へは北に徒歩9分ほどです。南に進む道の突き当りに門がありますので、そちらから白鳳伽藍へと進むことが可能です。
垂仁天皇陵へは北西に徒歩9分ほどです。拝観受付前の道を右に進み、踏切を渡ってすぐをさらに右手に進んでいくとアクセス可能です。
薬師寺休ヶ岡八幡宮へは南に徒歩14分ほどです。薬師寺方面・南に進む道を進み、突き当りを右折して道なりに進んでいくと、神社の鳥居が見えてまいります。
大池へは南西に徒歩20分ほどです。ルートはややわかりにくく、西ノ京駅を越えてしばらく進んだ先の信号を右折してアクセスします。案内表示などは特にありませんので地図をご参照ください。
喜光寺へは北西に徒歩20分ほどです。垂仁天皇陵方面へのルートを更に北に進んでいく形となりますが、ルートはわかりにくく案内表示などはありませんので、地図をご参照ください。