【白毫寺】五色椿や萩が有名な「花の寺」では「えんま様」がお迎えする

ごあんない

高円山麓にある小さなお寺

高円山「白毫寺」(こうえんざんびゃくごうじ)は、奈良市街地の東端とも言える「高円山」の麓、新薬師寺などのある「高畑」界隈から南東に少し離れた位置にある真言律宗のお寺です。

お寺は関西花の寺第十八番札所に指定されているなど、一般的には「萩」や「五色椿」の美しさで有名な「花の寺」として知られており、交通アクセスはやや不便な位置ながら花の見頃を中心に大勢の拝観者が訪れるお寺になっています。

歴史-創建の由来は諸説あります

白毫寺の創建の由来については、奈良時代にこの高円の地に「天智天皇」の皇子でありながら文化人として皇位に就くことなく生涯を送った「志貴皇子」の離宮が設置されており、その山荘がお寺になったという伝承がありますが、天智天皇の発願により創建されたという説や、更に山深い位置にかつて存在した「勤操」ゆかりの巨大寺院「岩淵寺」に関係するお寺であるという説もあるなど、そのルーツは謎が多い存在となっています。

なお、鎌倉時代には、西大寺を拠点に多数の寺院の復興に関わった興正菩薩叡尊上人により中興が図られることになり、叡尊の弟子道照が「大宋一切経」を中国から日本に持ち帰り、このお寺で転読を行ったことから「一切経寺」とも呼ばれるようになったとされています。その後は室町時代の戦乱により焼失するなど苦難の時期もあったものの、江戸時代には興福寺の空慶上人により再興が図られ、一定の禄高を保障されたことから繁栄することになり、明治期以降の衰退を挟みつつ現在は再び観光寺院として整備が図られています。

なお、かつて明治期までは美しい「多宝塔」が境内にあり、その後現在の兵庫県宝塚市内にある大阪の財閥総帥藤田伝三郎の三男が建てた「宝塚山荘(現在は井植山荘)」に移築されましたが、2002年になり山火事で焼失しています。

文化財-見る者を圧倒する「閻魔さま」など多数所蔵

白毫寺には国宝こそないものの、多数の重要文化財の仏像が安置されています。重文指定が行われているものは、本尊阿弥陀如来と脇侍の勢至菩薩・観音菩薩を除き基本的に本堂ではなく「宝蔵」のほうに安置されており、そのお姿をご覧になって頂けるようになっています。

阿弥陀如来坐像(重文)

平安時代~鎌倉時代頃に造立されたとされる白毫寺の本尊であり、伏し目がちの静かな雰囲気の表情や全体から感じられる穏やかな佇まいは「閻魔さま」の厳かさとは対極とも言える存在になっています。

地蔵菩薩立像(重文)

鎌倉時代に造立された地蔵菩薩立像は、当初からの光背・台座が完全に残され、彩色も含めて保存状態がよい仏像となっており、お地蔵さまらしい慈悲が満ち満ちた上品な佇まいとなっています。

伝・文殊菩薩坐像(重文)

かつて存在した「多宝塔」の本尊であり、本尊阿弥陀如来よりも古い平安時代初期造立の白毫寺最古の仏像である伝・文殊菩薩坐像は厚みのある雰囲気、重厚な佇まいが特徴の仏さまとなっており、1本の桧を使用して造られたものとなっています。なお、手先の部分が後ほど補われており、当初の印相(仏さまごとの目印・悟りの内容)が不明のため、「文殊菩薩」であるかどうかは正確には明らかになっていません。

閻魔王坐像(重文)

「えんまもうで」などの存在もあり、白毫寺で最も有名な文化財の一つとも言える「閻魔王坐像」は、鎌倉時代に造立されたもので、かつて存在した「閻魔堂」の旧本尊となっています。巨大な冠を被り、怒りに満ちた鋭い表情に、肩肘を張って身構える姿は見る者を圧倒する「凄み」を感じさせるものとなっています。

太山王坐像(重文)

閻魔王坐像と一対になるように造立された閻魔さまの侍従である「太山王」坐像は、運慶の孫である康円により正元元年(1259年)に造られたものであり、閻魔さまほどではありませんが、怒りの表情を込めたお姿が印象的な像となっています。なお、像は室町時代の兵火で一度焼損しており、現在のものは当初のものを最大限利用しつつ、その後に修理されたものとなっています。

興正菩薩叡尊坐像(重文)

白毫寺中興に大きな役割を果たした興正菩薩叡尊の坐像は、鎌倉時代に造立されたもので、眉の太い老齢の叡尊上人の雰囲気をよくとらえた像となっています。

司命・司録像(重文)

太山王坐像のみならず、閻魔さまに従う存在としては「司命・司録像」も安置されています。こちらは虎の皮を敷いた椅子に腰かけたお姿となっており、鎌倉時代に太山王坐像を造り上げた康円の一門により造られた像となっています。

その他文化財

重要文化財に指定がなされている上記の仏像の他には、本尊阿弥陀如来の脇侍として江戸時代に造立された勢至菩薩・観音菩薩蔵、また御影堂には江戸時代の復興に尽力した空慶上人の坐像、その他境内には右手で印を結ぶ「矢田型」の石仏である室町時代の十王地蔵石仏、また風化した姿がむしろ趣を感じさせる不動明王石仏など多数の石仏も見られます。

「萩」や「桔梗」の美しい「花の寺」です

上記のように、数多くの文化財を有する白毫寺ですが、境内南側にある「五色椿」、そして参道周辺に咲き誇る「萩」の花をはじめ季節ごとの美しい風景も魅力となっており、奈良では「般若寺」などと同様に「花の寺」としてよく知られた存在になっています。また、白毫寺は奈良市街地周辺にある寺院としては最も標高が高いお寺の一つとなっており、参道や境内北西側の展望スペースなどからは奈良市街地(東大寺・興福寺)・生駒山方面への180度の美しいパノラマが広がります。

白毫寺のみどころ・風景

参道・山門周辺

「山の辺の道」の起点部にも近い白毫寺は、奈良市街地からは少し離れた古い農家建築が多いことで知られる「白毫寺町」集落の東端部から参道が伸びる形となっています。なお、石段の入り口には山門はなく、少し登って行った先に立派な参道と小さな山門があります。

石段を少し登ると、参道山門が現れます。山門は簡素なものですが、長い石段を有する参道は奈良市内では珍しい存在となっています。

白毫寺参道からの眺め

山門を抜けた先にも石段は続き、この周辺からは奈良市街地方面を見渡す素晴らしい眺めを味わうことも可能になっています。また一帯は秋になると「萩の花」に埋め尽くされる空間にもなります。

本堂

白毫寺本堂

拝観受付のすぐそばにある本堂には、本尊阿弥陀如来坐像と脇侍の勢至菩薩・観音菩薩が安置されています。建物は江戸時代の建築ですが、「三面四間」と呼ばれる奈良時代からの様式に忠実な復古的な建築となっています。

【白毫寺本堂】「閻魔さま」とは対極の穏やかな佇まいを見せる「阿弥陀如来坐像」が安置される空間

本堂の正面左側には紅色の椿の木もあり、五色椿よりは早い時期に美しいお花を咲かせています。

五色椿周辺

白毫寺の五色椿(散り椿)と石仏

「花の寺」白毫寺の名物とも言える「五色椿」。樹齢400年とも言われる椿の木には紅色や桃色・白色など色とりどりの椿が咲き誇り、とりわけ「散り椿」として木の下の石仏周辺に舞い落ちた姿が実に美しい風景を生み出しています。

【白毫寺五色椿】美しい「散り椿」を味わえる「奈良三名椿」の一つ

五色椿の近くにはハクモクレン(白木蓮)も美しい花を咲かせます。

御影堂

白毫寺御影堂

本堂の北東側にある御影堂は、小さなお堂ですが江戸時代の復興に尽力した空慶上人の坐像を格子越しに見て頂けるようになっています。

【白毫寺御影堂】江戸時代の白毫寺復興に尽力した「空慶上人」の坐像をお祀りする

宝蔵

本堂・御影堂の北側にある巨大な「宝蔵」は、建物自体は新しいもので、白毫寺の所蔵する文化財(仏像)を安置する空間となっています。設置されている仏像は白毫寺所蔵のうち本尊阿弥陀如来坐像などを除く大半のものとなっています。仏像の詳細はこちらをご覧ください。

石仏の道周辺

本堂の東側には、「石仏の道」と呼ばれる多数の石仏が並べられた小路が伸びています。なお、石仏の道の入り口付近にはかつて明治時代まで存在した「多宝塔」の跡もあります。

白毫寺不動明王石仏

多宝塔跡から少し進んだ位置には風化が著しい不動明王石仏がいらっしゃいます。足元には薄肉彫りの跡が残されていますが、上部は表情も含めて判別しづらい状況となっており、今後の状態がやや心配になるほどですが、このようなお姿も時間の流れを感じさせる趣のあるものとなっています。

十王地蔵石仏

白毫寺十王地蔵石仏

石仏の道を抜け、宝蔵の近くまでやってくると、室町時代の作であり右手で印を結ばれたお姿が特徴の「矢田型」の石仏である「十王地蔵石仏」があります。境内の文化財の中で有名な存在とは言えませんが、午後のやわらなか日差しに石仏が照らされると穏やかな表情が一層引き立って見え、心が洗われるような気持ちにさせてくれる存在となっています。

【白毫寺地蔵十王石仏】実に穏やかな表情のお地蔵さまは光背に地獄の「十王」が描かれる

展望スペース

境内の北西側には東大寺・興福寺・奈良市街地・生駒山方面などを一望できるすがすがしい展望スペースが設けられており、一息つきながら奈良の眺めをじっくりとご覧になって頂けるようになっています。

その他風景(万葉歌碑など)

境内の南東端には奈良時代の歌人笠金村が「志貴皇子」の死に際して詠んだ和歌「高円(たかまど)の野辺の秋萩いたずらに 咲きか散るらむ見る人無しに」が記された歌碑が設置されています。

年中行事・儀式

1月16日:えんまもうで

・閻魔大王様の縁日にちなんで実施される「えんまもうで」では無病息災を祈る御祈祷が行われ、参拝者には甘酒も振る舞われます。

2月節分の日 星供加持祈祷

4月8日 一切経法要・花まつり

敬老の日 志貴親王御忌(献花式)

花の見頃

椿:3月中旬~4月上旬頃まで

白木蓮:3月下旬~4月上旬頃まで

五色椿:4月上旬~中旬頃まで

萩:9月中旬~下旬頃まで(お彼岸の時期)

寒桜(子福桜):10月下旬~12月始め頃まで・3月中旬~下旬頃

紅葉:11月下旬~12月始め頃まで

拝観情報

拝観料

一般:大人(大学生以上)500円・中高生300円・小学生200円

団体(30名以上):大人(大学生以上)450円・中高生250円・小学生150円

障害者割引:半額となります。

高齢者割引:奈良市老春手帳(ななまるカード)持参で半額となります。

拝観時間

午前9時~午後5時

アクセス

各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR奈良駅、近鉄奈良駅から「山村町」・「藤原台」・「鹿野園町」・「奈良佐保短期大学」行き乗車、「高畑住宅」下車、東に徒歩12分

・JR奈良駅、近鉄奈良駅から「下水間」・「北野」・「奈良春日病院」行き乗車、「白毫寺」下車、北東に徒歩5分(本数少)

※駐車場が参道入り口近くに有り(有料)

近隣スポット

白毫寺は「山の辺の道(北コース)沿いにあります

宅春日神社から南東に徒歩5分、赤乳神社から南に徒歩6分、新薬師寺・不空院・南都鏡神社・比賣神社から南東に徒歩12分

白毫寺周辺地図