円照寺の山門

【円照寺(山村御殿)】内部は非公開の「日本を代表する門跡寺院」の一つ

ごあんない

江戸時代の創建ながら2度の移転を経た歴史を持ちます

円照寺(圓照寺・えんしょうじ)は、奈良市街地から南東に3キロほど離れた「山辺の道」沿いの山麓部に広大な境内地を有する臨済宗妙心寺派に所属する尼寺(門跡寺院)です。

奈良では光明皇后ゆかりの法華寺、また聖徳太子ゆかりの中宮寺とともに「大和三大門跡」として知られる円照寺は、その創建自体は比較的遅く、江戸時代前期の寛永17年(1640年)「後水尾天皇」の第一皇女である「文智女王」が天皇にお仕えする「一糸文守(仏頂国師)」と呼ばれる僧侶を師とする形で出家し、大通文智尼と名乗ったことにその由緒を持っています。出家した大通文智尼は、まもなく寛永18年(1641年)には京都の修学院の地に草庵を建て、これが円照寺の元となったとされています。その後父親である後水尾上皇が現在でも有名な「修学院離宮」を建立することになり、現地にあった小さなお寺は移転を図ることになり、明暦2年(1656年)には継母中宮東福門院(徳川秀忠の娘)の援助もあって現在の奈良市八島町(崇道天皇陵周辺)へ移転八嶋御所と呼ばれるようになり、更に寛文9年(1669年)には同じく東福門院の助力により幕府からの財政的援助を得て少し南側の現在地に移転し、現在の円照寺(山村御殿・山村御所)が成立することになります。その後は門跡寺院として、皇女や貴族の子女が門跡を務めるようになり、現在に至るまで広々とした境内を守り続けています。

内部の拝観は基本的に一切できません

円照寺は、奈良市内では「興福院」などと同様、一般拝観が一切行われない、非公開のお寺となっており、2010年に平城遷都1300年祭などで一部特別公開されたり、奈良交通バスの特別なバスツアーで拝観・見学できる他は内部に入る術は一切ありません。

通常時に立ち入る(通過する)ことが可能なエリアは、かなり長い「参道」の部分、そして南側にある「大師堂」のある空間のみとなっており、参道の終点部分からはわずかに立派な山門とその内側の様子を森の中から垣間見る形となっています。

立ち入ることは出来ませんが、美しい玉砂利が敷かれた境内には円通殿と呼ばれる本堂があり、内陣にはご本尊である美しさの中に慈愛にあふれた佇まいの木造「如意輪観音立像」、脇侍として「地蔵菩薩立像」及び「不動明王立像」が祀られた空間があり、円通殿は「茅葺き」となっているためとりわけ人目を引く存在となっています。この本殿は修学院から現在の円照寺からわずかに北の八島町の地にまず移転してきた際に建立された本殿であり、この地に再度移転した際にも引き継がれたものとなっています。なお、円通殿の扁額には円照寺第六世門主である「伏見宮文秀女王」によって記された「みほとけの深き誓いの池水に心の月の影ぞ浮かべる」の和歌が記されています。

また境内には本堂の他にも江戸末期の嘉永2年(1849年)の建立で唐破風の玄関を有する寝殿造りの書院(奥御殿)、京都御所「紫宸殿」に用いられた古材を利用して建立されたといわれる「宸殿」、如意輪観音菩薩坐像をお祀りする「葉帰庵」、三社神社と呼ばれる鎮守神のお社、延享3年(1746年)に円照寺開基の文智女王の50回忌に合わせて建立された阿弥陀堂など複数の建物があります。なお、庭園としては本堂の周辺に広がる「本堂庭園」と「奥御殿」の目の前にある庭園がありますが、奥御殿側の庭園は奈良では少し珍しい枯山水の庭園となっており、観光客が見る機会はほとんどありませんが、椿・桜・つつじ・百日紅・紅葉など季節ごとの洗練された美しさを感じられるようになっています。

円照寺を巡っては、三島由紀夫の自決直前の作品として知られる『豊饒の海』において数多登場する舞台『月修寺』のモデルとされているというエピソードもあり、文学を愛する人にもよく知られたお寺となっています。このほか、ご住職が代々いけばなの「山村御流」の家元を務められることもよく知られた存在となっています。

円照寺周辺の風景

奈良交通バス「円照寺」バス停前には円照寺へと長く伸びる参道の入り口があります。参道は車が通行できるほどの広さがあり、500メートルほどの長さに渡り続くという奈良市内では唯一の立派な参道となっています。

参道の途中には2つの万葉歌碑があります。こちらの歌碑には「あしひきの山行きしかば山人の 我れに得しめし山づとぞこれ」の歌が記されています。

2つ目の万葉歌碑には「あしひきの山に行きけむ山人の 心も知らず山人や誰れ」の歌が記されています。

立ち入ることができる限界ラインである参道の東端部からは、わずかに円照寺本体の山門や内部の様子が垣間見えるようになっています。

参道の終点付近からは「大師堂」方面へ向けて伸びる石段があります。

「大師堂」の存在は「山辺の道」沿いであるにも関わらずほとんど誰にも知られていないような状況となっています。

大師堂の周辺には静けさの中に多数の観音石仏が並んでおり、「ディープな奈良」をじっくりと味わえる空間にもなっています。

アクセス

各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「山村町」行き乗車、「円照寺」バス停下車、東にすぐ

JR帯解駅から東に徒歩20分

※参道入口まで、内部の拝観は基本的に不可能となっています。

近隣スポット

崇道天皇陵から南に徒歩6分・八つ石から南に徒歩6分・嶋田神社から南西に徒歩10分(※参道入口まで)

五つ塚古墳から西に徒歩6分・霊元天皇皇女墓から西に徒歩7分・後水尾天皇皇女墓から西に徒歩7分(※大師堂周辺まで)

周辺地図