【十輪院本堂】軒の低さが印象的な住居建築風のお堂では「石仏龕」をお祀りする

ごあんない

「お堂」としては珍しい佇まいの建築です

十輪院「本堂」は、ならまちエリアでは元興寺などに次ぐ規模を持つお寺「十輪院」最大の仏堂建築(国宝)であり、十輪院のご本尊である地蔵菩薩立像及びご本尊を含めて多数の仏さまなどが彫られた巨石である「石仏龕」がお祀りされる空間となっています、

本堂の建物は、その「石仏龕」を見るための「礼堂」として鎌倉時代前期に建立されたものと言われており、江戸時代などには「灌頂堂」とも呼ばれていたとされています。建築自体は、広々とした間口、また軒の高さや床面の高さがいずれの仏堂としてはかなり低い位置になっているという特徴的なお堂となっており、パタパタと上に跳ね上げる形の「蔀戸」と呼ばれる戸を正面に備えていたり、軒裏には「垂木」と呼ばれる木材ではなく、板張りとなっているなどすっきりとした印象を感じさせる一方、「蟇股」の装飾は優美な印象も感じさせるものとなっています。全体としては中世の立派な「住居建築」に近い印象のお堂となっており、奈良市内のお寺の本堂としてはかなり珍しい佇まいの建築と言える存在になっています。また、お堂は奥に続くような形状となっており、正面から見ると正方形に見えますが、奥行きを感じることができる建物ともなっています。

石仏龕・本尊地蔵菩薩立像について

本堂内部には、平安~鎌倉期に造立されたと考えられているご本尊である地蔵菩薩立像と「石仏龕(せきぶつがん・重要文化財)」がお祀りされていますが、この「石仏龕」と地蔵菩薩は別箇のものではなく、「石仏龕」と呼ばれる3メートル近い規模を持つ巨大な石材(花崗岩)にご本尊の地蔵菩薩立像をはじめ多数の仏さまなどが彫られたものとなっています。すなわち、地蔵菩薩立像は単独で立っていらっしゃるのではなく、石に彫られた像の一部ということになります。なお、「龕」という読みにくく聞きなれない語は、いわゆる仏さまを収納する「厨子」と同じような意味を表しており、巨大な石を厨子に見立ててそのように表現されているものとなっています。

石仏龕は、「厨子」のようにくぼんだ中央部に本尊の「地蔵菩薩立像」があり、左右にも比較的大きな「釈迦如来」と「弥勒菩薩」が彫られています。また地蔵菩薩の周辺及び石仏龕の裏側に至るまでの広い範囲には仁王・聖観音・不動明王・十王・四天王・観音及び勢至菩薩を表す種子(文字)・星座の刻印・五輪塔・種々の梵字など多種多様な図柄が綿密に刻まれており、石仏龕全体を神聖な雰囲気で覆い尽くしています。その風情は、日本の仏さまというよりは、南アジア・東南アジアの仏教遺跡のそれを見ているような不思議な気分になるほどであり、奈良の寺院・仏さまに関わる「みどころ」としてはかなり異色の存在と言ってもよい存在となっています。なお、当初は「彩色」も施されていたとも言われますが、雨ざらしであった時期もあったため、現在は彩色をしっかりと確認することはできません。

ちなみに、石仏龕の正面手前には、「金光明最勝王経」・「妙法連華経」といった陀羅尼(呪文)が記述された「引導石」と呼ばれる大きな平たい石が設置されており、こちらはお寺で死者を弔う際に、死者を入れた「棺」を実際に置いて祈りを捧げていたと考えられています。

十輪院「本堂」の風景

十輪院(奈良市)の本堂

十輪院の山門からすぐ正面に見渡すことができる「本堂」の建築。住居建築のようなシンプルな佇まいを見ると、奈良時代の仏堂建築が織りなす「奈良らしさ」を感じるというよりは、どこか京都の小寺を見ているかのような気分にもさせてくれます。

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アクセス

御霊神社から東に徒歩3分・今西家書院から南西に徒歩4分・元興寺(極楽坊)から南東に徒歩4分

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「天理駅」・「下山」・「窪之庄」行き乗車、「福智院町」バス停下車、南西に徒歩3分

近鉄奈良駅から南東に徒歩18分

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