若宮十五社めぐりとは?
神の宿る山である「御蓋山」の背後にある世界遺産「春日大社」。こちらは有名な「本殿」のあるエリアは常に大勢の観光客でにぎわいを見せていますが、春日大社の境内地は大変広くなっており、実は本殿のあるエリアの南側にも数多くの神社が建っています。
本殿の南側にある神社の代表的存在としては、「若宮神社」があり、「若宮神社」はその名の通り、奈良のまちで最も大きな「お祭り」である「春日若宮おん祭」を行う神社として知られています。また、若宮神社を拠点として、周辺にある15か所の神社及び遥拝所を巡ることは、「若宮十五社巡り」と言われ、実際に申し込みを行う事で玉串札を持って正式な参拝を行うことが出来るようになっています。
申込方法・費用について
「若宮十五社巡り」の申し込みは、お参りの際に最後の「第十五番札所」となっている「夫婦大國社」で行うことが出来ます。
夫婦大國社は、その名の通りご夫婦の大黒様をお祀りする珍しい神社となっており、「水占い」やハート形の絵馬などでも知られた存在になっていますが、ここで若宮十五社巡りや、十五社の一つである金龍神社の「お百度」など、様々な申し込みや縁起物の購入を行える拠点にもなっています。
若宮十五社巡りの受付時間は9時~15時の間となっており、費用は500円となっています。
ご利益について
さて、気になるのは「若宮十五社」を巡って神社を参拝することで頂くことができる「ご利益」。
「ご利益」については、簡単に言えば人生の様々な状況における困難などに対する「ご利益」を得ることができるとされています。十五社めぐるでめぐる各神社は、金運から健康長寿、学業、恋愛、衣食住に至るまで、それぞれの神社を合わせていくと人間が生きる上での様々な領域にまたがる「ご利益」で知られています。十五社巡りは、それ故大勢の参拝者が年間を通して訪れるようになっているのです。
各札所(神社)のご案内
第一番納札社 若宮神社
第一番納札社の「若宮神社(わかみやじんじゃ)」は、若宮十五社巡りを行う上で、その名前にもなっており、最も重要かつ見どころの多い存在となっている神社となっています。
重厚な拝殿・社殿・神楽殿は建築を見ているだけでも神聖な気分になれるほか、有名な「おん祭」に関連するものも含め、様々な儀式が実施される空間にもなっています。
また、周辺には若宮神社ゆかりの「藤」・「梅」・「椿」など自然の魅力も多く、神社本体に留まらない美しい風景を味わうことも可能となっています。
御祭神
天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)
ご利益
「正しい知恵をお授けくださる神様」として、生きていく上で必要な力を与えて下さるとされています。
第二番納札社 三輪神社
三輪神社(みわじんじゃ)は、若宮十五社めぐりの中では最も北側に位置する神社となっています。神社は気が付かずに素通りしてしまいそうな存在となっていますが、若宮神社の次にまずお参りしなくてはならない神社として「第二番納札社」に指定されています。なお、神社は「一童社」とも呼ばれています。
御祭神
少彦名命(すくなひこなのみこと)
ご利益
「子供の成長をお守りくださる神様」として、子どもたちを温かく見守ってくださる存在であるとされています。
第三番納札社 兵主神社
第三番納札社である兵主神社は、次の札所である南宮神社と隣り合わせに並んでおり、神社自体は若宮神社のすぐそばに位置しています。
御祭神
大巳貫命(おおなむちのみこと)
ご利益
「延命長寿をお守りくださる神様・勇気をお授けくださる神様」として、健康を保つ願いを叶えてくださるとされています。
第四番納札社 南宮神社
兵主神社の横にある南宮神社は、「第四番納札社」となっています。兵主神社との外観の差は特に見られないため、案内板などをしっかり確認しなければお参りする順番を間違えてしまいそうな存在にもなっています。
御祭神
金山彦神(かなやまひこのかみ)
ご利益
「財宝の神様・金運の神様」として、南側の「金龍神社」と同じくお金に関わるパワースポットとなっています。
第五番納札社 廣瀬神社
第五番納札社である「廣瀬神社」は、第六番札所である「葛城神社」とほぼ隣接する位置にある神社で、若宮神社・夫婦大國社にもすぐの場所に建っています。
御祭神
倉稲魂神(くらいなたまのかみ)
ご利益
いわゆる「お稲荷様」と同じ神様であり、「衣食住をご守護くださる神様」として、生活全般にご利益があるとされています。
第六番納札社 葛城神社
廣瀬神社の南側には、廣瀬神社と同じような小さな社殿を持つ第六番納札社、「葛城神社」もあります。
御祭神
一言主神(ひとことぬしのかみ)
ご利益
「心願成就の神様」として、一言だけ願いを込めてお祈り申し上げれば、その願いを叶えて下さる神様であるとされています。
第七番納札社 三十八所神社
廣瀬神社・葛城神社の南側には、それらと比べて比較的規模が大きな神社として第七番納札社、「三十八所神社」が建っています。神社は苔むした檜皮葺が良い雰囲気を漂わせる大きな社殿を持っており、3祭神をお祀りするにふさわしい風格を感じさせるものとなっています。
御祭神
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冊尊(いざなみのみこと)、神日本磐余彦命(かむやまといわれひこのみこと・神武天皇)
ご利益
「正しい勇気と力をお授けくださる神様」として、若宮神社などと同じく、人生を生き抜いていく上で不可欠な力を持たせてくださる神様であるとされています。
第八番納札社 佐良気神社
三十八所神社の南側すぐには、鳥居は目立つものの、社殿自体は比較的小さな第八番納札社、「佐良気神社」があります。こちらは小さな境内ながら、春日大社の「恵比須様」として十日えびすが開催されるなど、比較的良く知られた存在となっています。
御祭神
蛭子神(ひるこのかみ=えびす様)
ご利益
えびす様ということで、「商売繁盛、交渉成立をお守りくださる神様」として多くの人々の信仰を集めています。
第九番納札社 春日明神遥拝所
第九番納札社である「春日明神遥拝所」は、いわゆる神社ではなく、離れた神社などに向けて祈りを捧げる空間である「遥拝所」となっており、ここでは「春日大社本殿」に向けて祈りを捧げることができます。
なお、遥拝所は華厳宗中興の祖として知られる明恵上人が春日大社本殿を遥拝した場所であるとも言われており、神仏習合の伝統を感じさせるものとなっています。遥拝所は9つの磐座が並べられており、周辺の森の風景と合わせ、大変神秘的な雰囲気が広がっています。
御祭神(春日大社本殿)
春日皇大神(かすがすめおおかみ)
ご利益
十五社巡りにおいては、「ひらめきの神様」であるとされています。
第十番納札社 宗像神社
佐良気神社を過ぎると、一層深い森へと参道が伸びていくことになりますが、その途中にあるのが第十番納札社である「宗像神社」。神社はその他の末社などと似た雰囲気を漂わせるものですが、日中でも常に薄暗いため、神様の世界に近づいているような独特の雰囲気を感じることができます。
御祭神
市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
ご利益
市杵島姫命は神仏習合の流れの中で七福神における「弁天様(弁財天)」と同様の扱いを受ける歴史を辿った存在ですが、この神社もまた「市杵島姫命=天河弁財天様」をお祀りする神社としてとりわけ「学問・芸能」など諸芸の上達にご利益があるとされています。
第十一番納札社 紀伊神社
深い森の中の参道を進んでいった終着点、一般の観光客が立ち入れる「春日大社の最果て」のような場所にあるのは第十一番納札社である「紀伊神社」。その土地の雰囲気通り、昔から「奥の院」とも呼ばれてきた歴史を持つ紀伊神社は、その脇に「龍王珠石」と呼ばれる謎めいた石が積み上げられた場所もあり、一層ミステリアスな雰囲気漂う空間となっています。
御祭神
五十猛命(いたけるのみこと)・大屋津姫命(おおやつひめのみこと)・抓津姫命(つまつひめのみこと)
ご利益
「万物の生気、命の根源をお守りくださる神様」として、生命力を与えて下さる神様であるとされています。
第十二番納札社 伊勢神宮遥拝所
紀伊神社のそばには、第十二番納札社として「伊勢神宮遥拝所」が設けられています。その名の通りはるか東方の伊勢神宮に向けてお祈りを捧げる空間となっている遥拝所には、2つの磐座がお祀りされています。
御祭神(伊勢神宮)
内宮:天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおかみ)
外宮:豊受大御神(とようけのおおみかみ)
※この遥拝所は、ご利益を頂くのではなく、「天地の恵みに感謝するところ」であるとされています。
第十三番納札社 元春日・枚岡神社遥拝所
うっそうとした森から、金龍神社などが周りに建つ少しだけ明るい空間に戻ると、第十三番納札社である「元春日枚岡神社遥拝所」があります。「元春日」と呼ばれる枚岡神社からは、春日大社の御祭神として一部が移されてお祀りされることになったなど深い縁があり、この遥拝所はそんな枚岡神社へ祈りを捧げる貴重な場所となっています。
御祭神
天児屋根命(あめのこやねのみこと)・比売神(ひめがみ)
ご利益
「延命長寿」の神様として身体の健康をお守りしてくださるとされています。
第十四番納札社 金龍神社
「十五社」巡りの中で、最も「派手」な印象を感じさせる神社としては、第十四番納札社として「金龍神社」があります。金龍神社はその名の通り「金運」などをアップさせるパワースポットとして知られ、お金持ちになることを願う数多くの絵馬が奉納されています。なお、元々は後醍醐天皇ゆかりの地として威厳ある存在となっており、単なる「お金」にまつわる神社に留まらない深い歴史を有するという背景もあります。
御祭神
金龍大神(きんりゅうおおかみ)
ご利益
「開運財運をお守りくださる神様」として、幸福をもたらして下さるとされています。
第十五番納札社 夫婦大國社
若宮十五社巡りの最後にお参りする神社、「第十五番納札社」は、春日大社の中でも最も有名な場所の一つであり、十五社巡りの申し込みの際にも訪れることになる「夫婦大國社」。
こちらは「縁結び」・「恋愛成就」の神様として大変知名度の高い神社であり、大量の絵馬が奉納されているほか、「水占い」などを楽しんで頂くことも出来ます。
御祭神
大国主命(おおくにぬしのみこと)・須勢理姫命(すせりひめのみこと)
ご利益
「夫婦円満、良縁、福運守護の神様」として、大勢のカップルやご夫婦などが参拝する神社となっています。
番外:本宮神社遥拝所
本宮神社遥拝所は、春日山の神山であり、創建神話の始まった場所である御蓋山山頂(浮雲峰)にある本宮神社へ向けて祈りを捧げる空間となっています。
御祭神
武甕槌命(たけみかづちのみこと)・経津主命(ふつぬしのみこと)・天児屋根命(あめのこやねのみこと)
番外:赤乳白乳神社遥拝所
十五社巡りの一部には含まれていませんが、第五番・六番納札社である廣瀬神社と葛城神社の間には、赤乳白乳神社遥拝所と呼ばれる場所があり、更に南に離れた場所にある春日大社末社の「赤乳神社」・「白乳神社」に向けて祈りを捧げることができます。婦人病などから守ってくださる神様として有名な2つの神社のご利益にあやかろうと、遥拝所には「夫婦大國社」で販売されている手描絵馬が多数奉納されています。
御祭神
赤乳神社:稚日女尊(わかひるめのみこと)
白乳神社:志那斗弁神(しなとべのかみ)
ご利益
赤乳神社は女性の下半身、白乳神社は上半身の健康をお守り下さる神様であるとされています。
番外:護摩壇
こちらも十五社巡りの一部には含まれていませんが、宗像神社と紀伊神社の中間点には、弘法大師(空海上人)が護摩を焚いて祈祷をなさった場所と言われる「護摩壇」もあります。
番外:龍王珠石
春日大社の「奥の院」とも呼ばれる「紀伊神社」の真横には、雨ごいの竜王として知られる「善女竜王」が尾玉を納められたという伝説が残される神秘的な「龍王珠石」と呼ばれる石もあります。