春日大社「一の鳥居」

【奈良】「春日若宮おん祭」の概要と儀式の流れ・日程まとめ

「奈良最大のお祭り」は日本国内でも貴重な「伝統芸能の宝庫」

この記事では、毎年12月に行われる「春日若宮おん祭」について、その祭りの概要と多数の伝統芸能を含む「儀式」の日程、開催の流れについて時系列で解説していきます。当日の「アクセス情報」や「観覧席」などについては別の記事において解説をしています。

おん祭とは何なのか?

何のためのお祭りなの?

「春日若宮おん祭」は、簡単に言えば、奈良のまち、大和国(奈良県エリア)の平安を祈るお祭りです。「五穀豊穣・万民安楽」をお祈りするお祭りという目的は、全国各地で行われている様々なお祭りと似た内容となっていますが、その規模が「奈良エリア全体」をあげてのものになっているため、大変スケールの大きなお祭りとして知られるようになっているわけなのです。

なぜ始まったの?歴史は?

おん祭は、平安時代の1135年(保延2年)に当時の関白である藤原忠道により開始されたお祭りです。当時の奈良は不作や飢饉、疫病など社会が混乱していたとされ、そのような困難から抜け出すためにその前年に創建された「若宮神社」で祭礼を行ったことが「おん祭り」の由来とされています。

なお、この祭りは現在も一部で名残が見られるように、明治時代に入るまでは「興福寺」と「春日大社」が共同で行うお祭りとして実施されてきた歴史を持っています。春日大社と興福寺は、明治維新後の神仏分離が行われるまでは「一体的な存在」として、僧侶が春日大社でお経を読むなど強い関係を持っていた歴史があり、「おん祭」はとりわけ鎌倉時代などには、一大勢力として奈良を支配した「興福寺」の権威を示すような「象徴的なお祭り」として実施されてきたとも言える歴史を持っているのです。すなわち、その発祥の由来にも藤原忠道という創始者以外に「興福寺」の影響力という存在も無視できない訳なのです。

主催者は?

さて、「興福寺」と「春日大社」の共同作業として行われてきた歴史を持つおん祭ですが、現在は興福寺が直接的に関わる部分は一部のみとなり、概ね「春日大社」の境内にある「摂社」である「若宮神社」のお祭りとして行われている形となっています。また、「おん祭保存会」という団体が儀式の実施や調度品などの管理を行うなど先頭に立つ形で実施されています。

どんな儀式・祭事をするの?

「春日若宮おん祭」は、奈良のまち全体の平和を盛大に祈るというまるで「県民大会」・「市民大会」のようなお祭りとなっています。その中では祈祷から踊りの奉納、行列に至るまで様々な儀式が行われますが、最大の特徴としては多数の「伝統芸能」が披露されるという点があり、一般的なお祭りと比べ、「神楽・舞楽・田楽・猿楽」など伝統芸能のオールスターズのようにあちこちで様々な芸能がとりおこなわれることが特徴になっています。

詳細は後ほども説明しますが、一般の観光客に人気の儀式は「お渡り式」という「行列」が練り歩く儀式であり、神職から巫女さん、稚児たちから馬に乗った騎士、挙句の果てには江戸時代の「大名行列」まで、なんともバラエティ豊かな行列を楽しんで頂けるようになっています。

儀式の流れと日程

さて、おん祭の概要について紹介して参りましたが、ここからは具体的な各儀式・行事の日程を時系列でみていきましょう。

おん祭は、基本的に12月15日~17日の中心的な神事のことを呼ぶ名称となっており、その中でもとりわけ17日のクライマックスには観光客も大勢訪れる「お渡り式」などの主要儀式・行事が行われます。また、中心的な神事が行われる前にもかなり早い時期から「おん祭り」の準備は行われ始めます。

中心神事開始前の儀式

「おん祭」はほとんどの儀式が12月15日以降に行われますが、最も早い儀式としては「7月1日」流鏑馬定(やぶさめさだめ)と呼ばれるその年の「おん祭り」における「流鏑馬」を決める儀式が行われるほか、10月1日にはおん祭の舞台である「お旅所」の起工式として「縄棟祭」が行われます。また12月上旬には「馬長児僧位僧官授与式(ばちょうのちごのおくらいうけ)」と呼ばれる儀式が行われ、稚児におん祭における重要な役割が与えられるほか、「装束賜りと精進入り」として当日着用する衣装を着てお祓いを受ける儀式も行われます。

12月15日「大宿所祭」など

13時~ 大宿所詣

・おん祭の儀式を行う際に重要な役割を果たす「大和士(やまとざむらい)」がお祭りの儀式を行う際にに当たって身を清める空間であり、餅飯殿商店街の近くにある「春日大社大宿所」に向けて大和士や巫女たちが行列を行います。行列の規模は「お渡り式」ほどではありませんが、お渡り式ほどの混雑なく行列を見学できますので観覧するにはおすすめの「儀式」となっています。

17時~ 大宿所祭

おん祭を無事に行うことを祈願する儀式であり、神楽の奉納などが行われます。なお、当日は大宿所において「大宿所詣」などの実施にも合わせて郷土料理である「のっぺ汁」が振る舞われます。

18時~ 御湯立

・大きな釜で沸かしたお湯にコメや酒を注ぎ、そのお湯にひたした笹を振りかざし「清めの湯」をまくという儀式。当日は3回開催されますが、一般の方は18時からの部に参加することになります。

12月16日「宵宮祭」など

14時頃~  大和士宵宮詣

・春日大社の若宮神社において、大和士と流鏑馬児(やぶさめのちご)が神事を行う上での無事平穏を若宮神社にお祈りするという儀式です。

15時~ 田楽座宵宮詣

・春日大社本社及び若宮神社で、おん祭に参加する中で最も華やかに活躍する芸能集団「田楽座」が田楽を奉納する「芸能」の儀式となっています。

16時~ 宵宮祭

・若宮神社において神事の本格化を告げる「遷幸の儀」が17日午前0時から行われるのにに先立って、若宮神社の御祭神に「御戸開(みとびらき)の神饌」と呼ばれる神様の食べ物を奉納して、祭事を平穏に執り行うことをお祈りする行事となっています。この神饌を奉納したあとは、若宮神社の本殿が白の「御幌(とばり)」に覆われる形になります。

12月17日「お渡り式」など

0時~ 遷幸の儀

若宮神社の神様をお祀りされている本殿から「お旅所」と呼ばれる「行宮」に遷幸(移動)させるという重要な行事です。写真撮影等は一切禁じられるなど厳粛かつ神聖な雰囲気のもと、お松明の火のみが若宮神社からお旅所までの道を示すことになり、その火をたよりに真っ暗な空間を榊の枝によって厳重に囲まれ守られた若宮神社の神様が遷幸します。写真はおろか、懐中電灯など小さな光を発することも許されない空間には、暗黒のほかは、神職らが歩きながら「オー」と声をあげる音以外は一切聞こえない神秘的な雰囲気に包まれます。

1時~ 暁祭

・お旅所への遷幸を終えた若宮神社の神様に対し、様々な素材を用いた御饌(食事)をお供えした上で、神楽の奉納を行います。

9時~ 本殿祭・留守事

・神様は「お旅所」におられる中で、本来鎮座する場所である若宮神社において祭事執行の無事をお祈りします。

12時~ お渡り式

お旅所(行宮)にいらっしゃる若宮の神様のもとへ、祭礼関係者や様々な芸能集団などが長い行列を成してお参りするおん祭最大のみどころといってよい行事となっています。

・行列の並びは、第一番「日使」・ 第二番「神子」・ 第三番「細男・相撲」・第四番「猿楽」・ 第五番「田楽」・ 第六番「馬長児」・ 第七番「競馬」・第八番「流鏑馬」・ 第九番「将馬」・第十番「野太刀」他・第十一番「大和士」・第十二番 「大名行列」となっており、祭りが創始された時代の様式を守りながらも、「大名行列」などはそれ以降の「江戸時代」にかけての歴史も反映した大変バラエティ豊かな行列となっています。

・行列は奈良公園の「登大路園地」から交通規制がかけられた登大路・大宮通り沿いを近鉄奈良駅前を通過し油阪の交差点まで西に下り、その後南に進みJR奈良駅前に達したあと、三条通りに曲がり、猿沢池の真横などを通り抜けて春日大社の「一の鳥居」を抜けるルートを辿っていきます。

12時50分頃~ 南大門交名の儀

・かつてはおん祭りの実施主体といっても過言ではなかった「興福寺」と「おん祭り(春日大社)」の深いつながりを現在も感じさせる儀式である「南大門交名の儀」。この儀式では行列の中の一部が興福寺の「衆徒」に対して自らの「名乗り」を行うという儀式となっています。

13時~ 松の下式

・「一の鳥居」を抜けた行列は、鳥居のすぐそばにある「影向の松」の前で一旦止まり、そこで「松の下式」と呼ばれる田楽・猿楽座による芸能の披露、奉納が行われます。この儀式を経てようやく行列の目的地である「お旅所」へ入ることが許されることになります。

13時~ 競馬

・一の鳥居付近にある「馬出橋」から出発し、お旅所前にある「勝敗榊」までの区間を騎者に操られた2頭の馬が勢いよく走り、その速さを競うという儀式が行われます。これもダイナミックな光景を見せる「みどころ」の一つとなっています。

14時30分~夜間まで お旅所祭

・行列がお旅所に到着すると、神饌が捧げられ、その後宮司が御幣を捧げたり、祝詞の奏上などが行われます。また日使の奉幣・祝詞や、行列に参加した集団の代表、稚児や願主投、大和士等が神様への拝礼を行います。

・更にその後は「伝統芸能」の総集編とも言えるほどに、神楽の奉納にはじまり、東遊・田楽・細男・猿楽・舞楽・和舞といった多種多様な芸能が、日没後日付が変わる直前までひたすら奉納されるという圧巻の儀式が繰り広げられ続けます。

14時30分~ 稚児流鏑馬

・お旅所祭が開始された時間帯には、参道を進みながら稚児たちが流鏑馬(やぶさめ)を行う儀式も行われます。

23時~ 還幸の儀

お旅所におられる若宮の神様を再び本来鎮座される若宮神社にお還しする儀式となっています。参道は「行き」の遷幸の儀と同じく「帰り」も大きな松明の光に照らされます。若宮神社では「神人」らが神様をお待ちする中「待太鼓」を鳴り響かせます。神様にお戻り頂いた後は、神楽殿で神楽が奉納されることになっています。

12月18日 奉納相撲など

13時~ 奉納相撲

・多くの儀式、祭事はほぼ終了した12月18日には、最後の儀式の一つとして「奉納相撲」が行われます。現在では奈良県内の中学から大学、また一般から参加した選手たちにより取組が行われます。

14時~ 後宴能

・おん祭の締めくくりとして金春流の能、大蔵流の狂言による「後宴能」がお旅所の前で披露されます。この儀式をもっておん祭の一連の儀式行事、伝統芸能は終わることになります。