【喜光寺】行基菩薩ゆかりのお寺は美しい「蓮」でも有名

喜光寺の概要

喜光寺(きこうじ)は、奈良市内の「東大寺」「春日大社」といった有名観光スポットが集まる奈良公園界隈からはやや離れた近鉄「尼ヶ辻」駅近くに位置します。比較的近くにあるお寺としては、世界遺産「唐招提寺」「薬師寺」が挙げられ、北に15分も歩けば「西大寺」にもアクセス可能な場所となっています。

現在の喜光寺は、「薬師寺」の「別格本山」として宗派は法相宗(薬師寺・興福寺などの宗派)に属し、山号は「清涼山」とも呼ばれています。

歴史・由緒

喜光寺の歴史は、奈良時代の養老5年(721年)に後に大仏建造で大きな功績を挙げた「行基」菩薩というお坊さんにより創建された「菅原寺」と呼ばれるお寺に遡ります。元々この土地を所有していた人から土地を譲り受け、当時としては平城京エリアでは唯一とも言える「行基」菩薩の活動の場として、当初の菅原寺は仏教伝道やインフラ建設・弱者救済といった社会事業の拠点として活用されました。

ちなみに、現在の「喜光寺」という名を名乗るようになったのは、その後「菅原寺」を訪問された大仏建立の当事者である「聖武天皇」がこのお寺の本尊から「光」が放たれるのを見て、「歓喜の光」であるとして「喜光」という名前をお与えになったことに由来するという伝承が残されています。

その後の喜光寺は、衰退・荒廃と復興を繰り返す歴史を歩みます。鎌倉時代には、西大寺中興の祖としても知られる叡尊上人と呼ばれる「福祉」に熱心なお坊さんによりこの喜光寺も復興されますが、その後戦火などにより再び荒廃し、江戸時代には更に再び復興が図られるなど、荒廃の度に放置されることなくしぶとく復興されるお寺として明治維新を迎えることになります。

しかし、明治維新後の廃仏毀釈では壊滅的ダメージを受け、お坊さんは皆「神職」へ強制的に転職させられる中で、喜光寺の境内、建物も荒れ果てるがままに放置されることになりました。この時期に薬師寺の末寺となった喜光寺ですが、本格的な復興は薬師寺の再建も本格的に軌道に乗る平成に入ってからであり、南大門や行基堂などはつい近年復興された建築となっています。

仏像

本尊阿弥陀如来坐像・脇侍

本堂に安置されている阿弥陀如来坐像は平安時代の造立で高さは2.3メートルほどの比較的大きな仏さまとなっており、南北朝時代に造立された脇侍の勢至菩薩坐像・観世音菩薩坐像とともに大変穏やかで優しげな表情を浮かべておられることが特徴となっています。

弁天堂御神影「宇賀神像」

本堂の裏手にある弁天堂には、初詣期間・蓮の見頃のみ特別公開され、霊験あらたかな存在として篤い信仰を集める「宇賀神像」と呼ばれる独特の石像が安置されています。この像はお爺さんのような人物の「頭」ととぐろを巻く蛇の「身体」を持つというかなり奇妙な姿を持っており、叡尊上人が弁天堂を創建する際に興福寺から宇賀神をお譲り頂いてお祀りしたという歴史が伝わっています。

その他の仏さま

上記でご紹介した仏さま以外にも、弁天堂には通年ご覧いただける弁財天像・十六童子像が安置されているほか、行基堂には経年劣化の風合いも含めて再現された平成11年(1999年)に造立の行基菩薩坐像が安置されており、像の周りを千躰地蔵が取り囲むような風景もみどころとなっています。

また「蓮」の名所となっている本堂の西側一帯には多数の「石仏」たちがあり、文殊菩薩・地蔵菩薩・不動明王など室町期から江戸時代にかけて造られたバラエティ豊かな石仏たちと「蓮」を合わせて写真におさめるようなことも可能となっています。

「蓮」で大変有名なお寺です

建築・仏像の美しさも際立つ喜光寺ですが、このお寺は夏になると境内に「蓮(ハス)」の花が美しく咲き誇ることでもよく知られた存在であり、奈良を代表する「花の寺」の一つともなっています。

蓮は80種・250鉢が本堂南西側で育てられており、見頃は毎年6月下旬~8月上旬頃となっています。なお、蓮はその性質上午前中に花が咲く傾向があり、なるべく朝早い時間帯に訪れて頂くことがおすすめとなっています。蓮の花は午後になると花びらが閉じてしまっているケースがほとんどであり、その他の参拝者の数なども考慮すると、写真撮影などを行う場合はお寺が開門される時間に合わせて訪れるのが無難となっています(蓮の見頃、7月の土日祝日の場合通常午前9時のところ午前7時に開門が早められます)。

なお、「蓮」に関しては、近隣の「蓮」が美しいお寺(喜光寺・唐招提寺・薬師寺・西大寺)で「ロータスロード」として共通拝観券(3600円)などを発行していますので、リーズナブルに「蓮めぐり」を行って頂くことも出来るようになっています。

喜光寺境内のみどころ・風景

南大門(山門)

奈良交通バス「阪奈菅原」バス停の近く、巨大な高架道路の前にそれ以上の存在感を持ってそびえ立つ「南大門」。2010年に再建されたその姿はまだ真新しさを感じさせるものとなっています。門には仁王像も安置されており、参拝者を堂々たる風格でお迎えして下さいます。

【喜光寺南大門】本堂とのコントラストが実に美しい真新しい楼門

本堂

南大門の脇にある受付で拝観料を払い、境内に入るとすぐに表れる本堂。この本堂は室町時代の天文13年(1544年)に再建されたもの(2代目)が現在も残されていますが、独特の庇(ひさし)などは、創建当時の本殿、奈良時代の雰囲気もよく反映した独特の建築となっています。行基菩薩は大仏殿建設よりも先にこの本堂を建設しているため、この本堂は「試みの大仏殿」という別名でも呼ばれていたりします。

【喜光寺本堂】本尊阿弥陀如来坐像をお祀りする空間は「試みの大仏殿」の別名を持つ

「蓮」の花

優雅に咲き誇る「蓮の花」。蓮は午後になると花を閉じてしまうという特徴があり、美しい花を見たい場合は午前のうちでもとりわけ「早朝」時間帯に花を見に行く必要があります。喜光寺でも、午前10時を過ぎるころには既に閉じた花が多くなっている場合もありますので、蓮のシーズンのみは土日祝日に早朝から拝観可能になっているわけなのです。

喜光寺における蓮の栽培約20年前から開始されたものであり、歴史的に「蓮」の名所として知られてきた訳ではありませんが、現在ではすっかり「奈良」の「蓮」と言えば「喜光寺」というほどに認知されるようになりました。

蓮の植えられた鉢のそばには小さな石仏が所狭しと並べられたエリアもあり、蓮が見られないような時期でも飽きることのない風景が広がっています。

弁天堂・弁天池

本堂の真後ろ(北側)には、「弁天池」という水辺に浮かび、江戸時代に造られた弁財天と十六童子がお祀りされている「弁天堂」という少し変わった建物が建っています。この建物は鎌倉時代に喜光寺の復興にも尽力した叡尊上人と呼ばれるお坊さんが、幕府のおひざ元である「江ノ島弁財天」から勧請してきたものであると言われています。また秘仏で人頭蛇身の「宇賀神像」もこのお堂に安置されていますが、こちらについては厨子が開扉されているのは初詣や蓮のシーズンのみとなっており、通常時はご覧いただくことは出来ません。

弁天堂の周りを取り囲む弁天池には、「蓮」の咲く季節を彩る「仲間」とも言える「睡蓮(スイレン)」が咲いており、境内の隠れたみどころとなっています。

【喜光寺弁天堂】池に浮かぶ小さなお堂にはユニークな秘仏「宇賀神像」が安置される

行基堂

喜光寺の本堂北側にある「行基堂」

弁天堂の西隣と言ってもよい位置に鮮やかな朱色の柱で彩られている建築は「行基堂」。2014年(平成26年)に建設された境内地で最も新しい建物として知られる行基堂は、お寺を開いた行基菩薩をお祀りしており、堂内には行基菩薩坐像が安置されています。

その他のみどころ・施設

石仏群

蓮の鉢が置かれている周辺を中心に、境内には室町時代後期から江戸時代末までに造られた多数の石仏があることでも知られます。

みどころとしては、経よみの文殊と呼ばれる「文殊菩薩騎獅像」はその麗しい姿が魅力の存在であり、春日大社の天児屋根命(あめのこやねのみこと)が本地仏のお姿となった「春日地蔵」は法相宗のお寺として春日大社との関係性の深さを感じさせるものとなっているほか、怒りの表情を浮かべる不動明王(喜光寺不動)はその正面で「護摩法要」が行われることでも知られています。また素朴な阿弥陀如来や近年造られた仏足石・初転法輪像なども印象的な存在となっています。

會津八一歌碑

境内には有名な歌人である會津八一の歌碑もあります。大正時代にこの喜光寺を訪れた會津八一はその伽藍の荒廃を悲しんだとされ、歌碑にはその思いが滲み出た「ひとりきてかなしむてらのしろかべに 汽車のひびきのゆきかへりつつ」との短歌が記されています。

万葉歌碑

万葉歌碑には、『万葉集』に残されている「石川郎女」がこのお寺のある「菅原」の地を詠んだ歌「大き海の水底深く思ひつつ 裳引き平らしし菅原の里」が記されています。

お写経道場

お写経道場は、参拝者の方が気軽に写経体験をして頂けるように設けられたスペースであり、拝観料込みで2000円で「いろは写経」を体験して頂けるようになっています。道場には本尊として釈迦如来が祀られているほか、その周囲には三重県夏見廃寺から出土した「磚仏」をモチーフとした「千佛」も祀られており、金色の輝きに包まれる空間となっています。

外観・周辺風景

南大門と本堂を望む風景は、境内から少し離れた場所からのほうが美しくご覧いただけるようになっています。

近隣にある歩道橋の上からは境内の様子を一望して頂けるようにもなっています。

喜光寺の「行事」

毎月2日「喜光寺縁日」

喜光寺で行われる行事・儀式の中で最も頻繁に開催されているものは「喜光寺縁日」。こちらは行基菩薩の月命日にあたる毎月2日に、一般向けの「写経」や「法話」、また行基菩薩を偲ぶ法要を行うもので、お写経は有料(「いろは写経」2000円)ですが、参加すると昼食のふるまいも受けられるというユニークな行事となっています。

3月2日「行基會大祭」

行基菩薩の命日である旧暦2月2日にちなんで、現在では3月2日に行われる「行基會大祭」。通常の「縁日」よりも盛大に行基菩薩を偲ぶ法要が行われる他、当日は「おぜんざい」が一般拝観者にも振る舞われ、午後からは「柴燈大護摩供養・火生三昧」として薬師寺から派遣された僧侶らにより修験者らが行うような「火渡り」が行われ、一般拝観者の方も焼けた地面の上を歩いて頂けるようにもなっています。

6月中旬~8月中旬「奈良・西ノ京 ロータスロード」

「蓮」のお寺としての喜光寺に留まらず、現在では近隣の世界遺産「唐招提寺」「薬師寺」と共同で行っているイベントとしては、6月から8月にかけて実施される「奈良・西ノ京ロータスロード」と呼ばれるものがあります。期間中は3つのお寺を割安な価格で巡ることが出来る御朱印授与料込みの「共通拝観券」が発売されるほか、この時期にしか授与されない特別な「御朱印」を頂くことも出来るようになっています。

6月10日~8月16日・1月1日~15日「弁天堂御神影 宇賀神像 特別開扉」

喜光寺本堂の裏手にある「弁天堂」には、「宇賀神像」という人頭蛇身のユニークな石像が設置されていますが、こちらは通常時は開扉されていません。しかし蓮のシーズンである6月から8月の期間、また1月の初詣シーズンには特別に公開され、弁天堂を取り巻く「弁天池」の風情を合わせて独特の佇まいをお楽しみ頂けます。

7月 15日・16日「盂蘭盆法話」

8月のお盆の1か月前の「盂蘭盆」に行われる「盂蘭盆法話」では、先祖供養のための法要を行った後、毎年様々な講師の方をお招きして法話が行われています。蓮の咲き誇る早朝のすがすがしい雰囲気に包まれながら法要などを終えると、最後には茶粥が振る舞われることにもなっています。

拝観情報

拝観時間

9時~16時
蓮の開花時期(7月中)の土日祝日に限り開門を大幅に早め、拝観時間が7時~16時半になります。

拝観料

<一般>
大人500円・子供300円(小・中学生)

<団体(30名以上)>
大人450円・子供270円(小・中学生)

※未就学児は無料となっています。また奈良市老春手帳(ななまるカード)をお持ちの場合、蓮の期間(ロータスロード)開催中を除いてはななまるカードを受付で呈示すると拝観無料となります。

※御朱印は本堂で頂けるようになっています。

喜光寺へのアクセス

喜光寺へのアクセスルートは、

近鉄奈良駅・JR奈良駅・学園前駅からバスを利用するルート近鉄「尼ヶ辻」駅からの徒歩ルートの2種類があります。

近鉄奈良駅・JR奈良駅・近鉄学園前駅からバスを利用

近鉄奈良駅11番バス乗り場JR奈良駅西口13番バス乗り場から「学園前駅(南)※奈良市庁前経由」行きに乗車、「阪奈菅原」下車、北に徒歩2分

近鉄学園前駅南口1番バス乗り場から「高畑町」行き乗車、または2番バス乗り場から「学園前あやめ池循環」乗車、「阪奈菅原」下車、北にすぐ

※学園前駅からのバス利用の場合、バス停を降りると隣が喜光寺となっています。奈良駅方面からのバスの場合、バス停を下車し、東側すぐの位置にある横断歩道を渡り、高架道路の下をくぐるとすぐに巨大な南大門が見えてきます。

近鉄電車を利用

※近鉄奈良駅からの場合、「大和西大寺駅」で「橿原線」の「普通」に乗り換え

近鉄電車「尼ヶ辻駅」下車、北西に徒歩10分

※駅から喜光寺へのルートは特に案内表示などが充実している訳ではありません。尼ヶ辻駅から交通量の多い細い道をしばらく西に進み、途中1つ目の信号機のある交差点からは北向きに進む道を道なりに進み、高架道路に面する横断歩道が見えてきたらその横断歩道を渡って頂くとお寺が見えて参ります。

喜光寺周辺地図