奈良で最も有名なお寺と言っても過言ではない「東大寺」。
東大寺は、これまた非常に有名な「奈良の大仏様」がそのシンボル的存在となっていることで知られていますが、「大仏様」は大勢の観光客から直に見ることが出来る場所にあり、外の空気とも触れやすくなっているため、多少なりとも「ほこり」がたまりやすくなっています。
そこで、その積もった「ほこり」を取り除くため行われるのが「お身ぬぐい」。
大勢の僧侶らが大仏様の上にのぼり、「拭き掃除」を行うユニークな行事は、ニュースでも時折取り上げられる程ですが、ここではそんな「お見拭い」について、その内容の詳細や見学方法などについてわかりやすく解説したいと思います。
「お身拭い」の日程
まず、把握しておきたいのはその日程。お身拭いは、平日、土日の区別一切なく、
・毎年8月7日
・午前7時~9時(拝観可能な時間は7時30分以降)
に実施されています。基本的に例外はなく、天候や観光客の動向を問わずこの日程で実施されます。
奈良の観光というものは、基本的に午前10時以降に混雑し始めることは多いですので、この時間帯は人はそれほど多くありません。
お身拭いの行事をご覧になりたい方は、朝早く大仏殿に行く必要がある訳ですので、京都や大阪から見学に訪れる場合、奈良に前日から泊まっていなければ早い時間帯の電車を使う必要があります。早起き必須の行事、それがお身拭いなのです。
「お身拭い」の行事内容
さて、東大寺の大仏様の「お身拭い」は、上述しているように、「大仏様」を拭き(掃き)掃除する行事です。
行事全体を見ると、拭き掃除を行う前には「大仏様の魂を抜く」ための「撥遣」とよばれる儀式や読経が行われるものの、お寺でよく行われる法要や祭事とは異なり、あくまでも大仏様に積もった1年分のほこりをしっかりと取り除くという内容が主となっています。すなわち参拝者を常に美しい姿でお迎えするため、そして大仏様を後世に保存してくためにに行われる非常に「実務的」な珍しい行事なのです。
ただし、その内容は、一般的なお寺の「本尊」を拭き清めるものとはスケールが全く違います。
その他のお寺の本尊の多くは、高くて人の身長の2倍程度である場合が多く、脚立を立てたり、もしくは長いほうきなどを使用すればほこりを取ることが出来る場合がほとんどです。
しかしながら、東大寺の大仏様に関していえば、それでは話になりません。
大仏様の高さは15メートルほどに及ぶ上、垂直に立つ大仏様にそのままよじ登るようなことは不可能となっています。
そこで、僧侶やお身拭いに参加する奉仕者の方は、特に大仏様のお顔などの高い場所を掃除するために、ロープを編んで作られた特製の「箱」に乗って大仏様に近づき、ほこりを落とすことになるのです。
この作業風景は、なかなかユニークなものとなっており、なんだか近代以前の建築作業を見ているかのような気分にさせてくれます。
なお、かつての「お身拭い」は、東大寺の住職さんの任期中に1度だけ行われる程度だったそうですが、現在は毎年1回必ず開催されるようになっています。ちなみに、毎年行われるようになったのは汚れやすくなったからではなく、砂ぼこりや土ぼこりが舞いやすかった大仏殿前の参道はむしろ整備され舗装道となったりしたため、ほこりの量はむしろ昔よりかなり減ったとも言われています。つまり、現在は大仏様はかなり美しい状態を常に保っておられることになるのです。
お身拭いの見学方法
さて、「お身拭い」の見学方法ですが、これはいたって簡単です。
なぜなら、先述した拝観時間、実施時間に合わせ、大仏殿に通常通り入場して頂くだけでよいのです。
大仏殿の拝観料金は一般(大人)の場合は600円となっています。
大仏殿の拝観は、午前7時30分から可能です。
この行事は、この拝観料のほかは特に「事前申し込み」や「見学料金」を取られるようなことはありません。また、人でごった返し、「整理券」が配布されたといったような話も聞いたことがありません。
もちろん、多くの写真愛好家の方や見学者の方で賑わうのは確かなのですが、観光客がほとんどいない朝早い時間帯であることや、あくまでも「お掃除」であることなどもあり、その知名度ほどの見学者、拝観者の数ではないというのが実際の状況と言えるのです。
東大寺の行事と言えば、かなりの混雑が見られることで有名ですが、こちらのお身拭いは比較的見学しやすい環境と言えるでしょう。
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東大寺大仏殿へのアクセス
お身拭いが行われる東大寺大仏殿への交通アクセスも確認しておきましょう。
東大寺大仏殿へは奈良交通バスの「市内循環外回り」もしくは「中循環外回り(近鉄奈良駅からのみ)」にJR奈良駅、近鉄奈良駅からご乗車頂き、5~10分程度で到着する「東大寺大仏殿・春日大社前」バス停で下車して頂くのが便利です。
東大寺へのアクセス情報は、以下の記事でも詳しく解説しています。
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バス停からは北に徒歩8分程度。バス停近くの交差点から伸びる参道は、昼間は年間を通して観光客で埋め尽くされていますが、お身拭いが行われる朝早い時間帯は人は少なめで、すがすがしい空気の中「南大門」を越え、大仏様のおられる「大仏殿」までアクセスして頂けます。
まとめ
奈良・東大寺大仏殿の「お身拭い」は、毎年8月7日・午前7~9時(一般拝観可能な時間は7時半以降)に実施されています。
行事内容は、基本的には祭事というよりは「お掃除」であり、僧侶の方々がロープを編んで作られた特製の「箱」に乗って大仏様に近づき、ほこりを落とす作業などが行われます。
拝観については、通常の拝観時間・通常の拝観料金と同様の取り扱いですので、「お身拭い」があるから何か特別な対応や準備が必要な訳ではありません。また、例年混雑もそれほど見られません。
巨大な大仏様が掃除される様子もさることながら、僧侶の方たちが必死にほこりを落とすために作業される姿を見学することは、通常時とは異なる「東大寺」の雰囲気を感じて頂くにはよい機会と言えるでしょう。いつもとは違う大仏殿の雰囲気を味わうために、ぜひ見学に行ってみてはいかがでしょうか。