【東大寺】二月堂「お水取り(修二会)」完全ガイド―日程・開催場所・儀式の流れなど【観光】

奈良に春の訪れを告げる東大寺の「お水取り」とは結局どんな行事なの?

数多くの世界遺産がある歴史ある奈良のまち。そこでは年間を通して様々な「年中行事」「儀式」が行われていますが、そんな中でもとりわけ有名な存在と言えば、2月下旬から3月中旬にかけて行われる「東大寺」の「お水取り」と呼ばれる行事があります。

この行事は、テレビなどでも頻繁に紹介されているように、儀式を行う「練行衆」を先導する役割を果たす「童子」が東大寺の「二月堂」と呼ばれるお堂の眺めの良い「舞台」の上で火のついた「おたいまつ(お松明)」を持って走り回る姿が大変有名な行事となっており、大勢の観光客が訪れることで知られています。

しかし、「お水取り」という行事がその火の粉が舞い上がる「クライマックス」以外にも様々な儀式を行っているなど、「奥が深い」行事であることは余り知られていません。また、行事の流れについても、その「クライマックス」を見にやってくる観光客の多さを把握せずに準備なしに奈良を訪れ、結局満足に見学できなかったというようなエピソードもあるなど、「お水取り」については見学の前にあらかじめ確認しておいた方がよい内容がたくさんあります。

この記事では、そんな「お水取り」と呼ばれる一大行事の内容、そして実際に見学(観光)に訪れる際の流れについて、なるべくくまなく丁寧にご紹介していきたいと思います。

「お水取り」の由来・儀式の内容

まずは、「お水取り」と呼ばれる行事がどのような由来、歴史を持っているのか。そしてそのような行事がどのような「儀式」で成り立っているのかを確認していきましょう。

お水取りは「修二会」というとっても長い行事

「お水取り」という行事は、本来は「修二会(しゅにえ)」と呼ばれます(更に正式な名称としては、「十一面悔過(じゅういちめんけか)」と呼ばれています)。

修二会が始まったのははるか昔の奈良時代にさかのぼる天平勝宝4年(752年)であり、2017年時点ではなんと累計「1266回」も実施されて来た歴史を持っています。

儀式の主な内容としては、一般の拝観者は一切見ることが出来ない完全秘仏である二月堂の本尊「十一面観音菩薩」に向かい、僧侶らが自らの振る舞いを懺悔し祈りをあげ、社会の平穏や五穀豊穣を祈願するという内容が主となっており、決して「お松明」がメインの行事とは言えません。

精鋭僧侶「練行衆」らが勤め上げるお水取り

修二会を勤め上げる僧侶らは「練行衆」と呼ばれ、11名の精鋭とも言えるお坊さんたちが選び抜かれ、彼らが2月下旬から3月中旬にかけて行う一連の行事全体を「修二会」と一般に呼んでいるのです。

さて、お松明が点火されるようになるのは3月に入ってからのことですが、その前から修二会は始まっています。「練行衆」は、2月20日頃から東大寺の「戒壇院」と呼ばれるお堂で身を清めるための合宿生活を行い、本行に備えるのです。

そして、3月1日になると二月堂に入り、毎日6回にも及ぶ「十一面悔過」を行い祈り続けることになるのです。そして、そのような厳しい法要、儀式のうちのごくわずかな時間に、「お松明」の火を焚き上げることになる訳です。

お松明は、元々は練行衆が歩く際の明かりとして用いられるに過ぎなかったのですが、江戸時代頃からはその役割を越えて巨大な火祭りとして演じられるようになり、現在に至っています。

本来の「お水取り」はごく一部の儀式

さて、これまで「お水取り」に代わり「修二会」という言葉ばかり使ってまいりましたが、実は、「お水取り」という儀式は確かに修二会の通称ではあるのですが、本来は修二会のうち3月12日に実施される一部の儀式のみの事を言い、更にそれは「お松明」の儀式とは違う行事のことを言うのです。

「お水取り」とは、その名の通り閼伽井屋(あかいや 別名・若狭井)と呼ばれる二月堂近くの井戸から「水」を汲み上げる儀式であり、その水は本尊にお供えする水として使われたりすることになっています。そして、この「お水取り」が行われる日に「お松明」のクライマックスとして巨大な松明への点火が行われることにもなっているのです。

なお、その後も本行は2日間続けられ、3月14日にようやく修二会は長い日程を終えることになります。

以上がおおまかな「修二会」の流れとなっています。

つまり、確かに「お松明」はダイナミックな「火祭り」なのですが、実際のお水取り(修二会)は決して華やかとは言えない練行衆たちのしっかりとした修行により成り立っている訳なのです。「お水取り」を見学する際は、そんな仏教行事としての性格を頭に入れて見学すれば、ダイナミックな火の粉の裏側で展開されている、一層厳粛な「本行」の雰囲気を感じられることでしょう。

東大寺「お水取り」の日程(実施期間)

さて、見学に訪れる際に気になるのは「お水取り」の日程、実施期間。

「お水取り」は先述したように、クライマックスだけでなく、実に1か月近くに渡って行われる行事ですが、「お松明」の火が飛び交う姿を見ることが出来る「本行」の期間は、

毎年3月1日から3月14日まで「2週間」となっています。

お松明の時間は、3月1日~11日・13日はいずれも19時頃から20分程度となっています。

そして、その本行の期間のうち「お水取り」当日である「3月12日」にとりわけ大きなお松明を見ることが出来ます。

この日はお松明の開始時刻が「19時半」と少し遅れて始まり、実施時間はそこから45分間と長い時間に渡りダイナミックなお松明を鑑賞して頂けます。

最終日の3月14日に関しては、逆に早い時間帯である18時30分から10分程度実施されます。

ここで気を付けておきたいことが、いくら「3月12日」がクライマックスであるとは言え、実際のところは、3月1日からの2週間に渡り、毎日のように壮大なお松明の姿を楽しんで頂けるということです。

後に混雑状況については別途解説していきますが、3月12日の「クライマックス」以外の「平日」などに見学頂ければ、3月12日よりも余程良いロケーションで見られるようなことも多々ある。ということは念頭に置いておいてよいことでしょう。

「お水取り」の見学方法と混雑状況

「お水取り」は混雑がすさまじい

さて、一連のお水取り(修二会)行事・儀式の実施場所は、これまでも述べてきているように、東大寺の「二月堂」となっています。

「二月堂」は、東大寺の境内でも特に奥のほう、山麓部にあり、大仏殿周辺から更に石畳の道を登って頂いた位置にあります。(「二月堂」そのものの基本情報は以下記事を参照)

【東大寺】「お水取り」で有名な「東大寺二月堂」の歴史・みどころ徹底ガイド【写真多数】

しかし、「お水取り」は「いつもの奈良観光」の気分で気楽に「二月堂」へアクセスして頂ければよい「行事」とは必ずしも言えません。

それはどういうことか。ひとえに「混雑」が凄まじいのです。

もちろん、お松明は計2週間も実施されていますので、「クライマックス」以外の平日は通勤ラッシュのようにはならないかもしれませんが、「クライマックス」である12日、そしてそれ以外の期間でも「土日」は二月堂周辺のキャパシティを大きく超えた観光客が雪崩のように押し寄せます。

そのため、東大寺では、とりわけ12日には見学にあたっての「順路(誘導路)」を設定し、混雑時には適宜警察官、機動隊による誘導も行いながら行事を行っているのです。

「お水取り」へのアクセスルート(誘導路)

お水取りの中でも、最も巨大なお松明がご覧いただける「3月12日」には、2000人ほどの収容力しかないような広場に向けて数万人の見学者が大挙して訪れます。

そこで東大寺は、混乱を避けるためにこの日だけ、東大寺「鐘楼(大鐘)」のある広場から二月堂まで「誘導路」を設置し、そのルートだけしか二月堂にアクセス出来ないように人の流れを制限しています。

当日は警察・機動隊も出動し、一度では数万人の観客をさばき切れないため、観客を移動させながら順次見学させるようになっているほか、それでも見学できそうにない人には、「第二拝観席」と呼ばれる二月堂から200メートルほど離れた、肉眼ではお松明が余り大きく見えない場所へ誘導することもあります。無論、余りに人が多すぎる場合は、何も見られず帰路に付くことになるケースもないとは言い切れません。

要するに、「誘導路」が設定される12日の見学は、大きなお松明が見られるとは言え、かえって二月堂から遠い場所で見ることになる可能性もあるということなのです。

また、当日は誘導路が設定されているため、東大寺境内周辺を自由に歩いて頂きにくくなっています。そのため期間中の12日以外の「平日」がむしろ「おすすめ」であるという声も多く聞かれるわけなのです。

「お水取り」の拝観席について

先ほど述べた「第二拝観席」は見学できそうにない場合の「最終手段」とも言える存在ですが、本来の見学場所は、二月堂の真下にある「良弁杉」周辺一帯(二月堂舞台下)となっています。

会期中の混雑する日程の際には、当然二月堂付近では人が収まりきらず、三月堂方面にも溢れかえることになりますが、「特等席」である良弁杉周辺を目指し、特に土日や12日は早い時間帯から人が集まります。

なお、余り知られていないことですが、二月堂の本体、「舞台」の上からお松明を振り上げる童子らを間近で見ることも可能となっています。しかし、その場合はお松明がはじまる2時間以上前といった早い時間帯から場所を確保しておく必要があるため、舞台の上から気軽に見学することは難しくなっています。

お水取りの時期はまだまだ「冬」の寒さが残る時期であり、場合によっては夕方には氷点下近くまで気温が下がることもしばしばです。場所取りを早い時間からしたり、慣れない人混みに長時間いたせいで風邪やインフルエンザに罹患したといったような話もしばしばありますので、健康管理には万全を期して「お水取り」の見学を行って頂ければと思います。

「お水取り」期間の交通アクセスについて

さて、最後にお水取り期間における「交通」アクセスについても確認しておきましょう。

お水取り期間において、大規模な「交通規制」が実施されるのはクライマックスの「3月12日」のみとなっています。

3月12日には、奈良公園内「県庁東交差点」から東大寺、春日大社・若草山方面、また飛火野周辺から「破石町」交差点付近までにかけての広い範囲が17時~21時にかけてマイカー通行禁止(バス・タクシー等専用)となり、路線バスに関しても、特に歩行者で混雑する20時から21時の時間帯のみは迂回ルートで運行されるなど、交通状況が大きく変化します。

一方で、逆に言えばそれ以外の期日は「交通規制」は行われていないことにもなり、それ以外の日程は特に土日は「マイカー」で近くの駐車場を探す車などでお水取りの時間帯周辺を中心に道路渋滞が発生する場合があります。

いずれにせよ、「二月堂」は近くに大規模な駐車場を有しているという訳ではありません。マイカーによるあくせすはそもそも不便な所ですので、基本的は「バス+徒歩」といったアクセス手段で訪問して頂くのが無難となっています。

まとめ

以上、長々と「お水取り」のイロハ、概要をまとめて参りました。

お水取りという「行事」は、東大寺の公式見解としてはあくまでも「イベント」と言えるようなものではなく、修二会という大きな行事のごく一部に過ぎないとされていますが、実際は「火祭り」的イベントとしてそのダイナミックな風景を味わいに来る観光客が大半と言える状況になっています。そのため結果として激しい混雑に見舞われてしまうわけですが、お水取りイコール「3月12日」というイメージが強すぎることもあり、2週間に渡りお松明が見られる行事であるという周知が進んでいないのが現状です。

確かに12日のお松明は巨大で、一層長い時間火の粉を撒き散らすという事実はある訳ですが、激しい混雑、警察官による誘導によって十分に見学できない可能性を考えれば、それ以外の平日に実施されるお松明にスケジュールを合わせていく。そのような混雑回避手段をとってみてもよいかもしれません。

目にすることが出来る風景は、実に圧巻であることには違いなく、見て損することがないことは断言できるからこそ、「混雑分散」のススメを指摘しておきたい。なかなか変化しない「お水取り」の混雑状況を見ている一市民としては、そう思う次第なのです。