【名勝旧大乗院庭園・文化館】水辺の風景が美しい「善阿弥」ゆかりの美しい庭園

名勝旧大乗院庭園 観光スポット・みどころ

当ページの内容を含め、奈良の観光スポットに関する内容は原則としてコロナ禍前を中心とした状況に基づく「アーカイブ」的内容となっており、その後状況が変化している場合があります。
最新の状況については、各スポットに関する公式サイト、または観光協会などの情報発信などを別途ご確認下さい。

観光のご案内

かつての興福寺門跡「大乗院」の唯一の面影

名勝旧大乗院庭園(だいじょういんていえん)は、「ならまち」の町並みに囲まれた奈良ホテルの南側一帯に広がる巨大な日本庭園です。

この庭園は、その名の通りかつて摂関家出身者が代々の門主として就任する興福寺の門跡寺院として存在していた「大乗院」に付属する庭園として、京都の寺院や御所の作庭も行った有名な庭師である「善阿弥」が15世紀の半ばに造り上げた浄土式の庭園となっています。

大乗院自体は、平安時代の寛治元年(1087年)に創建され、当初は現在の奈良県庁や裁判所等がある周辺に立地していましたが、治承4年(1180年)の南都焼き討ちの後に現在の位置に移転され、その後の徳政一揆等で寺院が荒廃した際の復興の一環として庭園が設置されたと言われています。(なお、この地はそれ以前は広大な境内を有していた「元興寺」の「禅定院」と呼ばれる門跡寺院があったようです。)

なお、またの名を「飛鳥御殿」とも言う大乗院は中世には寺内に留まらず多くの寺領を持つお寺として一時は現在も有名な「長谷寺」を末寺として傘下に収めるなど権勢をふるい、その後その影響力は低下していくものの、創建後長らく江戸時代にかけて機能し続け、庭園は奈良随一の存在として大いにもてはやされることになりました。

しかしながら明治維新・廃仏毀釈の頃になると荒廃著しく、最終的には第60代「尚嘉」門主が還俗して華族に列せられる形で廃寺となり、現在は「お寺」そのものについてはその痕跡すらほとんど残されていない状況となっています。

その後庭園はどうにか生きながらえ、個人宅の敷地などを経て、その後は飛鳥小学校の敷地を経て奈良ホテルを運営する関西鉄道・鉄道院・国鉄と所有者が移り変わっていった歴史を持っています。

奈良ホテルと同じ所有者になって以降、特に戦後になると一部で整備が進められ、昭和の中頃には名勝に指定されるなど「庭園」としての保全が図られるようになり、大規模な発掘調査なども経て近年になりようやく一般公開されることになりました。

「奈良公園」とはまた違う整った美しさを味わう

庭園は比較的広々とした空間となっており、大きく分けると東西の2つの池「西小池」・「東大池」中心的存在として配置されています。

2つの池のうち、特に西小池に関しては複雑に入り組んだ繊細な表情を見せるものであり、東大池に架かる鮮やかな朱色の反り橋もあいまって、いつまでも水辺に佇んでいたいと思わせるような美しい景観が広がっています。

また、平成29年7月からは従来西側一帯しか散策できなかった庭園を、1周することが出来る遊歩道も設置され、東側の高台から庭園全体を望んで頂けるようになりました。

風景自体は大変整った美しさを感じさせるものであり、整備されつつも自然の成り行きに任せた美しさが魅力の「奈良公園」一帯とはまた違った美しさを感じさせる貴重な空間となっています。

知名度は比較的低いので、「独り占め」できる場合も多いです!

旧大乗院庭園は以上のように大変立派な存在となっていますが、その知名度は未だ必ずしも高いとは言えず、特に夏や冬などの時期は閑散とした印象を受けることも多くなっています。

しかしながら観光客が少ないということは、かえって「庭園」を独り占めできる機会が多いということにもなり、東大寺や奈良公園界隈のにぎわいや喧騒に少し疲れたような時に立ち寄ると、生き返るような気持ちにさせてくれる、そんな静寂広がる庭園となっています。

なお、庭園の入り口には大乗院の模型や資料などが展示されている「名勝大乗院庭園文化館」の建物が設けられており、そこで大人200円の入園料を払って入園することになっています。

次項では、施設情報をご案内致します。

施設情報

開園時間

9時~17時

休園日

月曜日(祝日の場合は翌日)・祝日の翌日(土・日曜日除く)・12月26日から1月5日までの年末年始期間(一部開館の場合あり)

入園料

大人200円・小中学生100円

※入り口は「文化館」の建物の中にあり、文化館のロビーで入園料を支払い、パンフレットを頂いて入園することになります。

名勝旧大乗院庭園のみどころ

文化館・周辺の風景

名勝大乗院庭園文化館

大乗院庭園への入り口部分は、「名勝大乗院庭園文化館」という施設となっており、かつての大乗院を再現した模型や関連資料などが展示されており、休憩スペースとしてもご利用頂けるようになっています。

庭園の周囲の道路沿いには、大乗院跡を示す石碑や石塔などが残されています。

庭園内部

旧大乗院庭園入り口付近から全体を一望する

入り口「旧大乗院庭園文化館」という建物になっており、そこで入園料を払い、その建物を抜けると、巨大な「東大池」が広がります。背景には奈良ホテルの歴史ある建物も垣間見え、実にすがすがしい風景が広がっています。

西小池(旧大乗院庭園)

庭園の西側を進んでいくと、西小池の入り組んだ姿が見えてきます。池には「あぜ道」沿いのごとくアメンボをはじめとする小さな生き物たちも数多く生息しており、整然とした庭園の中とは言え、のどかな風情が広がっています。

旧大乗院庭園に架かる美しい朱色の橋

東大池の北側には朱色の美しい橋も架けられており、庭園のどこから眺めてもひときわ目立つ存在となっています。

西小池・東小池全体を望む(旧大乗院庭園)

庭園の西端部からは、西小池、東大池全体を望むことが可能となっており、垣間見える「高円山」の風情も合わせ、かつて中世の人々が愛した風景に近い趣を味わうことが可能です。

次項では、交通アクセスについてご案内致します。

アクセス(電車・バス)

近鉄・JR線各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「天理駅」・「下山」行き乗車、「奈良ホテル」下車、南西に徒歩2分

近鉄奈良駅から南東に徒歩17分

JR奈良駅から東に徒歩23分

周辺のみどころ・観光スポット

福智院から北西に徒歩2分・瑜伽神社から南西に徒歩2分・今西家書院から北東に徒歩2分・奈良ホテルから南に徒歩3分・奈良町天神社から西に徒歩4分

名勝旧大乗院庭園周辺地図