【先払い?】奈良交通バスのちょっとややこしい「乗り方」まとめ【後払い?】

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比較的コンパクトなまちであるとは言え、観光スポットに駅から全て歩いていけるわけではない奈良のまち。そんな奈良の観光には「路線バス」が不可欠な存在となっています。

京都などでは、市バスに京阪バス、京都バスなどと色々なバスが走っておりややこしいですが、奈良を走る路線バスは、基本的に「奈良交通」バス一社のみが運行(この他奈良交通が委託を受けた「ぐるっとバス」も運行)しているため、フリー乗車券などの利用をする場合にはあまり迷うことはありません。

しかし、奈良交通バスに乗る場合、少しややこしいのはその「乗り方」。

同じバス停を発車するバスでも、先払いをするバスもあれば、後払いのバスもあり、観光客の人々にとってはどちらから乗ればよいのかわからない場合も多いです。

実際に「東大寺大仏殿」のバス停では、先払いのバスに限って運賃箱のない「後ろ」から乗ろうとする方や、それを見た人が次にやってきた後払いのバスに運賃箱のある「前」から乗ろうとするようなちぐはぐする姿をしばしば見かけます。そして、その影響でバスが少し遅れてしまうこともないとは言えません。

今回は、そんなちょっとややこしい奈良交通バスの乗り方、降り方について、奈良市内の路線を対象にその状況をまとめてみました。

バスを利用する際の共通事項

さて、乗り方をご紹介する前に、基本的にどのような「奈良交通の路線バス」を使う場合でも同じである内容について述べておきます。

ICカード、使えます

まず、ICOCA、Pitapa、Suica、PASMOといった全国共通の交通系ICカード乗車券は、運賃に相当する額がチャージされている限り(ピタパなどの「ポストペイ」の場合チャージはいりません。)は、どのような路線でも利用して頂けます。

奈良市内の「循環バス」であっても、郊外の住宅地へ行く路線であっても、どんな山奥の路線でも、「大和八木」から「新宮」まで行く全国最長の路線バスを使う場合でも、ICカードはご利用いただけます。

フリー乗車券は見せるだけ

また、奈良交通バスは様々な種類のフリー乗車券を発売しています。

それぞれのフリー乗車券は、奈良市内主要エリアを基本的な乗り放題区間としつつ、チケットの種類に応じてその他様々な利用可能エリア(法隆寺・飛鳥など)を持っていますが、基本的にフリー乗車券を利用する場合、運賃を払う代わりに運転士さんにフリー乗車券の日付が書かれた面を「すっ」と見せる形となっています。

これは電車・バスが共通で利用できる「奈良・斑鳩1dayチケット」などでも同様で、何か機械に券を通したりする必要は一切ありません。

なお、整理券のあるバスについては、厳密にはそちらをお取り頂き、降車時は運賃箱に整理券を入れた上でフリー乗車券を見せる形式となっていますが、必ずしもフリー乗車券の券面などで大きく指示されている内容ではなく、実際に整理券を入れたうえできっぷを見せる人が多い状況とは言えません。

なお、乗る扉・降りる扉は、以下ご紹介する「乗り方」に準ずるものですので、そのように乗り降りしてください。

お釣りは出ません。両替は1000円まで

なお、気を付けて頂きたい点としては、運賃を払う際に一部他都市のバスのように、1000円を差し込むと自動でお釣りが返ってくるような仕組みではないことが挙げられます。

すなわち、1000円を両替機で両替して、そこから運賃を再度払って頂くという仕組みになっているのです。

時折運賃箱に「おつり」が出ると勘違いし、そのまま1000円を投げ込む人がおられますが、あれをやってしまうとその後お釣りを返すための手続きがやっかいになってしまい、バスの遅れが発生しますので、くれぐれもお気を付けください。

また、両替は1000円・500円などのみであり、5000円や10000円には対応していません。

時折高額紙幣しかお持ちでない方が運賃を払えなくなり、案内所で払うための手続きについて運転手さんから説明を受けるような光景も目にしますが、その手続きは面倒なものですから、くれぐれも1000円札や小銭をお持ちの上でご乗車になるようにしてください。

わかりやすい「先払い」方式

ここからは、複数の「乗り方」についてご紹介していきます。

まずご紹介する「乗り方」は、奈良交通のバスでは一番わかりやすい「先払い」方式です。

これはとても簡単。

前の扉から乗って、まず最初にICカードをタッチするか、運賃を現金で払うか、フリー乗車券を見せるだけなのです。整理券を取ったりする必要は一切ありません。

この乗り方は、始発から終点まで運賃が変わらない「均一制」運賃(220円・2024年冬以降250円に値上げ予定)となっている一部の路線のみに適用されるものです。

◇奈良市内の先払い路線(近鉄・JR奈良駅・高の原駅発着)

・奈良で一番利用者の多いバス「市内循環(1・2系統)」、また「中循環(6系統)」バス
・東大寺の北側、「きたまち」へのアクセスに便利な「青山住宅(118系統・27系統・81系統)」行き
・市役所方面へ向かう「恋の窪町(28系統)」・「二条大路南一丁目(27系統)」行き、JR奈良駅西口を経由する「大安寺(81系統)」行き
・佐保川沿いへ行く「県立図書情報館(22系統)」・「済生会奈良病院(23系統)」行き
・土日祝日・観光シーズンを中心に運行される「ぐるっとバス」の全ての路線
・「高の原駅」発着の「兜台五丁目(21系統)」・「左京循環(16・17系統)」・「神功四丁目(1・7系統)」行き

以上の路線が、先払い運賃(220円・2024年冬以降250円に値上げ予定)となっています(ぐるっとバスのみ均一100円)。

なお、観光客の増加により、JR奈良駅から臨時で「市内循環」バスに加えて運転されている臨時「高畑町」行きや、「春日大社表参道」・「東大寺大仏殿・国立博物館」バス停から運行される臨時の「JR奈良駅」行きは、ほとんどの場合これも「先払い」となっています。

基本的に臨時便には「系統番号」が付いておらず、行き先だけが「高畑町」・「JR奈良駅」などと書かれています。

先払い方式は循環バスを含みますので、観光客の方は最も頻繁に利用する乗車方式と言えるでしょう。

一般的な「後払い」方式

これまでは、シンプルで便利な「先払い」方式をご紹介してきましたが、「ごく普通」のバスの乗り方として、奈良に留まらず日本全国で一般的な存在としては「後払い」方式があります。

これは、基本的に始発から終点にかけて、運賃が段々と上がっていくような比較的長い距離を走る路線が当てはまり、奈良交通バスの多くの路線が「後払い」方式となっています。

乗り方は、後ろの扉から乗って、前の扉から降りるというものです。
ICカード乗車券の場合、後ろの扉のICカードリーダーにきちんとタッチして、降りる時にも前の運賃箱にあるICカードリーダーにきちんとタッチする必要があります。

計2回タッチしなければ、降りる時に「ご乗車になった停留所をお知らせください」という警告音が鳴ってしまいますので、きちんと乗り降りする際に両方でタッチしてください。

また、現金で乗車される場合、後ろの扉から乗る時に整理券をきちんと取って、その番号に書かれた運賃を運賃表で確認した上で、その運賃を降りる際、運転席の横にある運賃箱に、「整理券と一緒」にお支払いください。

なお、整理券を丸めたり、小銭を包んだりすると運賃箱が故障する可能性があるのでおやめください。

奈良交通バスの「後払い」は、京都や大阪の「均一運賃」の後払いとは違い、後ろ扉から乗るときにも、前扉から降りるときにも「やること」がある点にご注意ください。

◇後払いの路線は

・先に示した「先払い」の路線以外のすべての「近鉄・JR奈良駅」を発着する路線
・「高の原駅」発着のうち、「先払い」の路線及び「学園前駅(11系統)」を除くすべての路線
・「学園前駅」南口発着の路線のうち、「あやめ池循環(36系統)」・「高畑町(160系統)」・「近鉄奈良駅(48・161系統)」・「尼ヶ辻駅(41系統)」行き
・奈良市、生駒市より南側の奈良交通バスの全路線
・京都府内の奈良交通バスの全路線
・新大宮駅~四条大路南町の路線は「均一後払い」という例外的形式

となっています。要するに、路線ベースでは奈良県内を走るかなりの路線が「後払い」方式という訳です。

なお、わかりにくいかもしれませんが、バスの電光掲示を見ることでも判断可能です。

一部臨時バスなどを除き、電光掲示の系統番号が黒文字の反転表示であれば先払いの系統、オレンジ色の文字で四角の囲い表示であれば後払いの系統となっています。

地元民向けの「運賃申告方式」(学園前など)

さて、基本的には観光客が利用する主なバス路線は、「先払い」か「後払い」の2択で終わるのですが、奈良市内は大阪のベッドタウンとして発展しているため、郊外の住宅地エリアにも多くのバスが走っています。

そのようなエリア(学園前・富雄・生駒方面)では、住宅地と駅を結ぶというニーズがほとんどであり、一部を除き地元住民が主な利用客であるということもあり、「運賃申告方式」という、非常に合理的である一方、はじめて乗る人にはわけのわからない「乗り方」が存在します。

簡単に言うと、運賃申告方式とは、何も言わなければ、「駅から乗った・駅で降りる」ものとみなして運賃を受け取るシステムです。
また、駅での乗り降りをスムーズにするため、駅から乗る時は「後払い」、駅に向かうときは「先払い」と言う形で同じ路線でも乗り降りの方法が全く異なるというものです。

つまり、駅から乗る時は、なにもせず後ろ扉から乗り(整理券も取らず・ICカードもタッチせず)、降りる停留所で前の運賃箱に支払う(そこではじめてICカードをタッチするか、現金で駅からの運賃分を支払う)。

そして、駅に向かうときは、前扉から乗車しその場で支払う(その時に運賃箱にICカードにタッチすると、駅までの運賃が差し引かれるようになっているほか、現金の場合その時に駅までの運賃を支払ってしまう)。

そのような仕組みとなっているのです。

ちなみに、「駅からのバス」に駅ではない途中バス停から乗ったり、「駅行き」のバスで、途中の駅ではないところで降りるようなとき(例:登美ヶ丘一丁目~東登美ヶ丘一丁目)は、ややこしくやっています。

例えば、「駅からのバス」に途中のバス停から乗るときは、ICカードの場合、「前扉」から乗ってICカードを「乗る時」にも運賃箱とは異なる「乗車用読取機」にタッチする必要があり、その上で降りる時にも「運賃箱のICカードリーダー」にタッチする必要があります。

現金の場合は、途中バス停からの運賃を払うことを運転手さんに伝えた上で、降りる時にその分の運賃を支払う仕組みになっています。

また「駅行き」のバスの場合、前扉から乗る時に、「駅ではない」バス停で降りることをあらかじめ運転手さんに伝え、その分の現金の運賃を最初に支払うか、ICカードの場合運転手さんがその運賃分を差し引くように操作してからタッチして支払うことになります。

このように説明していくと、「運賃申告方式」は、おそらく駅との行き来で使うだけの「住民」にとっては日本一使いやすいシステムである一方、はじめて乗る人にとっては日本一難しいバスの乗り方であるように思われてなりません。

もっとも、奈良観光でも「霊山寺」や「富雄丸山古墳」・「王龍禅寺」に行く場合など以外はこのようなバスには乗りませんし、観光客が「駅」を乗り降りの拠点にしない場合は100%ないと思われますので、そこまでの心配はいりません。

「運賃申告方式」は、

・「学園前駅」を発着する路線のうち先に「後払い」で示した路線(「あやめ池循環(36系統)」・「高畑町(160系統)」・「近鉄奈良駅(48・161系統)」・「尼ヶ辻駅(41系統)」行き)以外の全ての路線
・「富雄駅」・「東生駒駅」・「生駒駅」を発着する全ての路線
・「高の原駅」からの「学園前駅(11系統)」行き

が対象となっています。

まとめ

奈良交通バスは、全国共通の交通系ICカード乗車券がご利用頂けます。また、フリー乗車券は基本的に見せるだけで利用可能です。両替については1000円札のみ対応で、お札を入れるだけでお釣りが返ってくるわけではありません。

乗り方としては「先払い」・「後払い」・「運賃申告方式」の3種類があります

先払いは「市内循環線」や「ぐるっとバス」など奈良駅周辺などの一部路線に適用で、前扉から乗車して、先に運賃を支払う方式です。ICカード乗車券も乗るときに1度タッチすると支払いが完了します。

後払いは、奈良県内の大半の路線の乗車方式で、一般的な全国のバスと同様、後ろ扉から乗車します。現金で乗る場合は整理券を取って降りるときに運賃を払いICカードの場合は乗る時・降りる時の2回タッチをします。

運賃申告方式は、学園前・富雄・生駒方面等郊外住宅地エリアの乗車方式で、スムーズな乗り降りをするために「駅から・駅への運賃」を払う前提となっている、初めての利用者にはわかりにくい乗車方法です。

観光客の方は、「先払い」を利用する頻度が一番多く、唐招提寺・薬師寺へのアクセスなど各観光スポットへは「後払い」の路線も多くなっています。運賃申告方式は、霊山寺方面など一部を除き利用することはありません。

バスという乗り物は、乗ってみれば便利なことも多いですが、乗り方がよくわからない。とか行き先がよくわからない。とか運賃がよくわからない。とかいった理由で乗ることを断念する人も大勢いらっしゃいます。

しかし、少しだけ乗り方を理解すれば、特に「奈良のまち」はバスで便利に巡ることが出来る地域となっていますので、もし乗り方に不安があるならば、この記事をぜひ参考にして、その不安を払しょくしてください。

なるべく大勢の方がバスをスムーズに利用して、奈良観光を楽しんで頂ければと思います。