【奈良の冬の風物詩】若草山の山焼きを知る【日程・内容・歴史など】

奈良の1月を彩る代表的な行事として挙げられる「若草山山焼き」。

都市部の真横にある山の全体が火に包まれる姿は全国的にも大変珍しく、その姿は全国ニュースなどでも放映されるなど、奈良の年中行事の中で最も有名な行事の一つとなっています。

ここでは、山焼きの概要について、一通り全て理解して頂けるようにまとめてみました。どうぞご参考にしてください。

若草山山焼きの歴史・由来

まずは、イベント情報の前に、山焼きという行事そのものの歴史・由来について確認しておきましょう。

山焼きという行事は、大変古い時代から行われていました。

江戸時代初期には既に「若草山」という名前が登場していたこともあり、その時期には既に山焼き(野焼き)が広く実施されていたとも言われていますが、現在の若草山の位置に火を放つということは、「東大寺」と「興福寺」の勢力争いの一環として、既に鎌倉時代の歴史書などにも記述があるとされています。

若草山がはげ山になった原因、また山焼きの起源については確かな記録はありませんが、お寺同士の権力争いなど何らかの原因で「若草山」がはげ山となり、その後は環境を維持するために野焼きが頻繁になされるようになり、次第に「山焼き」という公的な行事へと変化していったものと思われます。

現在のように「観光行事」として位置付けられ始めたのは、1世紀以上前の1900年(明治33年)。この年から日中ではなく、夜間に「山焼き」を実施するようになり、単なる環境保全ではなく、「鑑賞」の対象として観光行事化されることになりました。

なお、実施する日程は長らく紀元節(2月11日・建国記念日)でしたが、戦後は成人の日に変更され、その後近年になると1月の第四土曜日に変更されるなど、必ずしも歴史的に同じ日程が受け継がれてきた訳ではありません。

山焼きのみならず、通常時も含めた若草山に関する情報は、上記の記事でもご案内しています。

日程・内容

毎年1月の第4土曜固定

さて、次に「山焼き」行事の日程や当日の流れ、内容について簡単にご紹介して参ります。

まず、実施日程ですが、先述したように、

現在は、1月の第4土曜日が実施日となっています。

2024年(令和6年)は1月27日(土)に実施予定です。

長らく成人の日の実施でしたが、センター試験のリスニングと山焼き前の「花火」が重複することに苦情があったためか、近年になって日程は月末に変更されることになりました。

なお、当日が雨天・積雪など気象条件が悪い場合は実施されません。この場合、実施自体が中止となる場合があります。

例年は当日の昼から夕刻にかけて、春日大社の「大とんど」も実施されており、こちらで燃え盛る「火」を採火し、山焼きの火として利用しています。

実施時間と実施の流れ

山焼きの実施時間とその流れは、昼頃からの各種儀式等を経て、例年は18時15分からの花火と18時30分からの山焼き本体という流れとなっています。

2024年のスケジュールは、花火が18時15分~、山焼きの点火が18時30分~と通常通りの実施形態となります。

当日の観覧は自由です。2022年までのような事前申し込み制度などはありません。

2024年の基本事項

2024年の山焼きは、「コロナ前」と大きく変わらない形態で実施されます。

山麓では鹿せんべい飛ばし大会・奉納演奏などのイベントが実施されます。また、ホットドリンクなどが提供されるブースも設けられます。

飛火野で実施の「大とんど」から採火して行う「聖火行列」は17時5分ごろからの予定です。

交通規制については、通常通りの15時頃より実施され、若草山一帯へのマイカー乗り入れが不可となります。

山焼きの「燃え方」・「撮影」について

山焼きについては、その美しい風景をメディアを通して見たりして、実際に写真に撮ってみたいという方も大勢いらっしゃいます。

しかしながら、山焼きについては、その年の天候、風の強さ、乾燥具合などにより、燃え広がり方は全く異なりますので、撮影等の難易度はやや高めです。

湿り気が多い場合はほとんど燃えないこともあれば、乾燥が進み風がそれなりに吹いているような「条件の良すぎる年」の場合、少し危険なくらい急速に山肌に火が広がります。

また、新聞やテレビで見るような「山肌」の一面が火で覆われるような風景は、肉眼で見ることができません。

あのような構図は、写真撮影の技法の一種でシャッターを数十分間押しっぱなしにすることで生み出される特殊な画像であり、実際には、山をじわじわと「火のライン・塊」が動いていくような臨場感のある形で、「山焼き」は見えることになります。

メディアの画像では、花火と山焼きが一緒に写ったものも散見されますが、あれも同じ要領で、実際には同時に見られるものではありません。

なお、その年の燃え具合にも左右されますが、火が燃えさかる風景自体は、比較的離れた場所からでも肉眼でご覧頂けます。

山焼きの実施にあたっては、特によく燃える時間・点火を行う一般的な時間は、開始後30分程度までで、その後は少しづつ小ぶりな火となり、1時間ほど経過する頃になると、最終的にはほとんど火の姿は見えなくなります。

山焼き鑑賞スポットは?

主要な「若草山が見える場所」(通常時の情報)

山焼きが見えやすいスポットについては、極めて広大な「平城宮跡」を除いては人が密集する可能性もあり、基本的に「風景を独り占め」出来るような場所はないと言えます。

◇平城宮跡
平城宮跡は、奈良の主要観光地の一つであり、宮跡エリアの随所から若草山が見えるようになっています。極めて広いため、市内の「若草山が見える場所」の中では混雑しにくい場所と言えるでしょう。

◇大池
大池は、奈良市の西ノ京地区にある比較的大きな池で、池の東側からは薬師寺の背後に若草山が見える美しい風景がご覧頂けます。こちらは「撮影スポット」としては最も人気がある場所の一つであり、例年一定数の撮影者が見られるため、落ち着いた環境とは言えないかもしれません。

◇奈良公園内「浮雲園地」
奈良公園内の浮雲園地は、若草山麓から少し離れた場所にある広場です。若草山は正面に比較的大きく見えますが、一部視界が悪い場所もあります。また、例年一定の人出が見られます。

◇奈良公園内「春日野園地」
奈良公園内の春日野園地は、「浮雲園地」の北隣にある比較的広い芝生広場です。こちらも園地の一部からは若草山を見渡しやすい環境ですが、例年一定の人出が見られます。

◇西安の森
奈良の鴻ノ池運動公園近くにある「西安の森」付近からは、比較的近くに若草山がご覧頂けます。但し、若草山が見える区域がかなり狭く、場合によっては混雑する可能性も否定出来ないため、必ずしもおすすめは出来ません。

特等席「奈良県庁屋上」は「抽選」限定

若草山山焼きの「観賞スポット」の中でも「特等席」としては、若草山一帯を一望できる「奈良県庁屋上広場」があります。こちらについては「往復はがき」で抽選の上2021年の場合「75組」限定で入場が認められます。

申し込みや開放時間等の詳細については、 奈良県庁管財課 のページをご確認下さい。なお、こちらは大変人気のスポットとなっているため、申し込んだ場合でも当選には至らない可能性がありますのでご留意下さい。

宿泊施設の利用も

観賞スポットとしては、上記のような「無料」スポットに留まらず、じっくりと落ち着いて眺めたい方は、例年予約が難しく・料金も割高にはなりますが、若草山が見える部屋を持つホテルに宿泊することが一番ベターです。

部屋の位置等の詳細については、各ホテルごとに異なります。また宿泊施設によっては特別なプランが設定されている場合もあるため、そちらをご利用頂くのもおすすめです。

山焼きトリビア「降灰が起こる?」

さて、若草山の山焼きをめぐっては、滅多に起こることではありませんが、ユニークな事件が起こり得ることもあります。

それは「降灰」です。2017年実施の山焼きでは、当日の風向きが市街地方面(北東)方向であったため、山焼きで舞い上げられた芝生の「灰」が、大量に奈良のまちに降り注ぎました。

灰は3~4km離れた場所でもしっかり目に見えるほど降り注ぎ、しばらくの間はちょっとした「話題」となりました。なお、北東の風が吹く頻度が特段多い訳ではないため、毎年のように灰が降る訳ではありません。

まとめ

若草山の「山焼き」は、毎年1月の第4土曜日に実施される「奈良の冬の風物詩」です。

その名の通り「若草山」に火を放ち枯草等を焼き払う行事は、古くは中世・江戸時代頃からその存在があったとされ、20世紀以降は現在のような観光行事として次第に定着していきました。

スケジュールとしては、例年は各種儀式等を経てまずは花火が打ち上げられ、その後山に点火されます。2024年は通常通りの形式で実施される予定です。

また、観賞可能なスポットについても、穴場的な場所も含めむしろ混雑する可能性も否定できませんので、「どこで見るのがおすすめ」と断言する事は出来ません。なお、平城宮跡は広大な敷地のため、混雑は概ね回避する事が可能でしょう。