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【興福寺】朱色が美しい八角円堂「南円堂」の歴史・みどころ・行事などを徹底解説!【特別公開】

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興福寺南円堂

南円堂ってどんなところ?

位置・基本情報

南円堂(なんえんどう)は、世界遺産「興福寺」の境内地の西側に位置する比較的大きなお堂です。興福寺の中では中金堂(平成30年再建)・五重塔・東金堂に次ぐ規模を持っており、朱色が目立ち、八角形の大変美しい姿は非常によく目立つ存在となっています。

霊場としては「西国三十三か所」の第九番札所となっており、興福寺の中でも最も大勢の観光客が訪れるスポットのひとつとなっています。

歴史・由緒

奈良時代ではなく、平安時代初期に建立

南円堂の創建は、興福寺が藤原氏の「氏寺」として発展し、五重塔、中金堂などの主要なお堂、建築が整備されることになった奈良時代に建立されたものではありません。南円堂は平安京への遷都後、藤原氏の勢力が一層強まっていく平安時代初期の弘仁4年(813年)に藤原一族の「藤原冬嗣」が父親を弔うために建立したお堂となっています。

実は「空海」ゆかりのお堂

建造にあたってのエピソードとしては、地神を鎮めるために、南円堂の石造りの「基壇」を建設する際に、「和同開珎」・「隆平永宝」といったお金を地面に撒きながら建設を進めたということが発掘調査の結果明らかになっています。

また、硬貨を撒くというこの独特の儀式には真言宗の開祖である「空海(弘法大師)」が深く関わっており、空海はこのほかにも南円堂の設計そのものにも関わっていたとも言われ、南円堂は興福寺の中でも「密教」との関わりのある特殊な系譜に位置づけられる存在にもなっています。

現在の建物は江戸時代に再建

現在建っている南円堂は、江戸時代中期の寛政元年(1789年)頃に再建されたもので、「4代目」にあたる建築となっており、平安初期の建立当初の材料などが残っている訳ではありませんが、江戸時代に再建された建築とは言え、その雰囲気は「近世建築」と言うよりは、かなり古めかしい様式となっており、その姿は北側にある「北円堂」と似たような雰囲気となっているほか、当初の南円堂の面影を残しているとも考えられます。なお、南円堂は平重衡の「南都焼討」などで壊滅的な被害を受けており、かつては現在よりも多数あったとされる仏像がその際に数多く失われたとも言われています。

仏像(文化財)

不空羂索観音菩薩坐像(国宝)

猿沢池から南円堂に向かって上る石段の脇にもその名前が記された「幟」があちこちに設置されているように、「南円堂」の本尊像として圧倒的な存在感と知名度を誇る木造の「不空羂索観音菩薩坐像(ふくうけんさくかんのんぼさつぞう)」

この仏さまは、高さは3メートルに及び、たいへん「ふくよか」な姿が印象的な像となっており、手に持つ網である「羂索(けんさく)」は、人々の願い、祈願を空しくしないように誓願を有する形となっています。また、像全体は様々な「苦難の歴史」を経ているはずであるにも関わらず、かなりの部分で金色が保たれており、大変美しい仏さまとなっています。

制作時期は鎌倉時代で、作者は「康慶(こうけい)」と呼ばれる興福寺を中心に様々な仏像を生み出した仏師とその弟子たちとなっています。なお、康慶自身は、現在も大変有名な東大寺南大門の「金剛力士像」を制作した「運慶」の父親であるほか、同じく金剛力士像の作者として知られる「快慶」らは康慶の弟子として知られるなど、鎌倉時代に活躍した「慶派」の仏師の創始者とも言える存在となっています。

四天王像(国宝)

本尊である「不空羂索観音菩薩坐像」を安置する「須弥壇」の四方には、いずれも豪快な雰囲気が特徴的な「四天王像」もお祀りされています。

剣を下に向ける姿が特徴的な「持国天立像」、威嚇するような厳めしい表情の「増長天立像」、閉口しつつ遠くを見つめる「広目天立像」、宝塔を高く掲げる「多聞天立像」はいずれも鎌倉時代らしい力強さを感じさせるもので、東大寺戒壇堂の「四天王像」のような「静かな怒り」を表現しているかのような仏像とは全く異なるタイプのものとなっていますが、華やかな南円堂らしい仏像となっています。

作者については、本尊と同様康慶に関係するものと考えられてきたようですが、近年ではこの四天王像は当初より南円堂にあったものではなく、別の場所から後に持ち込まれたものであると考えられており、作者は不詳となっています。

※この他には、かつては木造の「法相六祖坐像(国宝)」が6躯安置されていましたが、現在は「国宝館」の収蔵品となっています。

南円堂のみどころ・風景

猿沢池のほとりにある「南円堂」を示す石碑

猿沢池のほとりにある南円堂を示す石標。この真横には石段があり、石段をのぼるとすぐに南円堂前の広場に到着します。

南円堂へと上る石段は「不空羂索観音菩薩」ののぼりが目立つ

南円堂へと登る石段。廃仏毀釈の流れで荒廃した後「奈良公園」の一部となり、「お寺」の境界や輪郭がはっきりとしなくなっている興福寺の境内地ですが、この石段だけは「お寺への入り口」らしい風情を漂わせる空間となっています。

南円堂へと上る石段沿いの幟

石段のそばには、本尊である「不空羂索観音菩薩坐像(ふくうけんさくかんのんぼさつぞう)」の名が記された「幟(のぼり)」があちこちに掲げられています。

興福寺南円堂を正面から望む

石段を登りきると、すぐ目の前に南円堂の建物が現れます。江戸時代に再建された美しい八角形の建築となっている南円堂は、奈良市内の仏堂ではかなり異色の存在となっており、その色合いも含め遠くからでも大変よく「目立つ」存在となっています。

南円堂前の燈籠

南円堂の正面にある燈籠は、平成になり新調されたものとなっています。かつては東大寺大仏殿前の燈籠に次ぐ古さを持つ平安初期の創建当初から唯一現存する貴重な文化財である「金銅燈籠」が南円堂正面に設置されていましたが、現在は「国宝館」のほうに収蔵されています。

南円堂を真下から望む

南円堂建物を真下から眺めると、華やかな色彩が一層際立った印象を感じさせ、東大寺・興福寺というよりはむしろ「薬師寺」のきらびやかな伽藍をイメージしたくなるような風景が広がっています。

南円堂の扁額

南円堂は、「西国三十三か所」の第九番札所であるということで、掲げられている「扁額」にはそれにちなんだ「春の日は 南円堂に かがやきて 三笠の山に 晴るるうす雲」という詠歌が記されています。

南円堂脇にある鐘楼

南円堂の南側には、東大寺ほどの規模ではないものの、立派な「鐘楼」が設けられています。この鐘は正午と午後6時などに鳴らされるようになっており、1キロ近く離れたならまちエリアの町並みでも、風情ある鐘の音が毎日のように聞こえるようになっています。

南円堂の八角形の屋根と宝珠飾り

均整の取れた「八角形の屋根」の中央部を見ると、金属製の大変立派な宝珠飾りが設けられています。屋根などの見た目は北にほぼ隣接する位置にある「北円堂」とそっくりとも言えますが、スケールとしては北円堂よりも大きくなっており、屋根もやや縦長になっているなど、こちらのほうがより豪快な印象を感じさせる建築となっています。

夕方の南円堂

夕日に照らされた南円堂。南円堂は、正面からのみならず、南円堂に登る石段の途中から「三重塔」方面へと進む道沿いからも眺めることが可能であり、夕方にはこのように「紅色」に美しく輝く風景を味わって頂けるようになっています。

特別公開(拝観案内)・行事

南円堂の堂内は、実は基本的に拝観して頂くことはできません。唯一ご覧いただけるのが「特別開扉」の機会のみとなっており、特別開扉

毎年「10月17日」9時~17時

※入場は16時45分まで、午後1時頃から法要実施のため1時間ほど入場規制

となっています。この日以外に堂内を拝観することは一切出来ません。なお、お堂の前で参拝して頂くことはいつでも可能となっています。

当日の拝観料

大人300円・中高生200円・小学生100円

となっており、かなりリーズナブルな料金設定となっています。

ちなみに、10月17日は「大般若経転読会」と呼ばれる行事が行われる日でもあり、昭和48年に復興された行事では、僧侶たちが経典を空中で次々と広げながら一心不乱にお経を読み上げるユニークかつダイナミックな行事となっており、特別開扉のみならずこの儀式も大きなみどころとなっています。

なお、その他の行事としては、毎年4月8日に行われる「仏生会(花まつり・灌仏会)」についても、南円堂の前にある広場で行われています。

南円堂周辺のみどころ

南円堂のある広場の周りには、

ほぼお堂の正面にほぼ隣接する位置には「一言観音」が、また東側に向かい合う形で「不動堂」が設けられています。

「一言観音」は、その名の通り、一言だけ願いを言うとその願いだけを叶えてくれるという仏さまであり、春に行われる「放生会」で行われる供養の舞台にもなっています。

「不動堂」は、不動明王の仏像を安置した小さなお堂となっており、こちらは火を焚いて行われる「護摩祈祷」の舞台となっているため、仏像はススで真っ黒になっているという独特の風景を生み出しています。

南円堂へのアクセス

南円堂には、「近鉄奈良駅」から徒歩でのアクセスが便利です。

近鉄奈良駅からは、南東方向に、東向商店街内の途中から東に伸びる坂道を登り興福寺境内に入るルートを利用することで、徒歩6分程度でアクセスして頂けます。

またJR奈良駅からは東に徒歩15分程度、奈良有数の「憩いの場」である「猿沢池」からは池のほとりにある石段を登って頂くだけで、北に徒歩2分程度でアクセスして頂けます。(JR奈良駅から近鉄奈良駅・県庁前バス停までバスでアクセスして頂き、その後興福寺境内へと移動するルートもごさいます。)

南円堂周辺地図

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